負動産時代の相続設計―所有から整理へという転換点

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国が「負動産」の随意契約による処分を可能にする方針を示しました。
相続土地国庫帰属制度の開始、空き家特例との整理、そして人口減少社会の進行。

これらは個別政策の話ではありません。
土地所有の前提そのものが転換点にあることを示しています。

本シリーズでは、

  1. 国の負動産処分促進の意味
  2. 相続税評価とのギャップ
  3. 空き家特例との制度交錯
  4. 所有制度の再設計

を整理してきました。本稿では、それらを統合的に読み解きます。


土地は常に資産だったのか

戦後日本では、土地は「持てば価値が上がる資産」でした。
相続は資産承継であり、土地は家の象徴でもありました。

しかし現在は、

  • 地方人口の減少
  • 都市への一極集中
  • 不動産市場の二極化
  • 高齢化による管理困難

が進んでいます。

土地はすべてが資産ではなくなりました。


制度は“選別”を始めている

空き家特例は、市場に戻せる不動産を再流通させる制度です。
国庫帰属制度は、市場で流通しない土地を整理する制度です。

この併存は、明確なメッセージを含んでいます。

すべてを維持するのではなく、
活かせるものと整理すべきものを分ける。

制度は「選別」の段階に入っています。


税務評価とのギャップ

相続税評価は形式的に価値を認定します。
しかし市場では売れない。

このギャップが、納税者の違和感を生みます。

制度上は整合していますが、
経済実態との乖離は拡大しています。

今後、評価制度の在り方そのものが議論対象になる可能性もあります。


相続設計は“出口”から考える

従来の相続設計は、

  • 節税
  • 評価減
  • 納税資金対策

が中心でした。

しかし負動産時代の設計は異なります。

重要なのは、

  • 将来売却できるか
  • 管理できるか
  • 共有化しないか
  • 最終的に整理可能か

という「出口設計」です。


国家財政との接続

国が負動産を抱え続けることはできません。
行政コストには限界があります。

将来的には、

  • 帰属制度の厳格化
  • 負担金の見直し
  • 管理義務の強化

が進む可能性があります。

制度は人口構造と財政構造に従います。


土地は“永続資産”ではない

人口減少社会では、

  • 土地=価値
  • 所有=安定

という図式は成立しません。

土地は、

  • 利用できれば資産
  • 利用できなければ負担

という二極構造になります。

この認識転換が最も重要です。


結論

負動産問題は、制度の細部の話ではありません。

それは、

所有の意味が変わる時代に入った
というサインです。

相続設計は、

「何を守るか」ではなく、
「何を整理するか」を軸に再構築する必要があります。

人口減少社会における不動産は、
資産管理の問題であると同時に、社会設計の問題でもあります。

制度は動き始めました。
実務もまた、設計思想を転換する時期に来ています。


参考

・日本経済新聞「国の『負動産』処分を促進」2026年2月28日朝刊
・法務省 相続土地国庫帰属制度資料
・国税庁 財産評価基本通達
・国税庁 空き家に係る譲渡所得の特例資料

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