高額療養費制度はどう変わるのか 年収200万円未満への配慮と「応能負担」への一歩

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医療費の自己負担が一定額を超えた場合に、家計への影響を抑える仕組みとして高額療養費制度があります。
この制度について、厚生労働省は2025年12月、低所得層への配慮を強める一方で、月ごとの負担水準を見直す方向性を示しました。

今回の見直しは、制度全体を「応能負担」に近づけるものとされていますが、患者負担のあり方はより複雑になります。どのような点が変わり、何が課題として残るのかを整理します。

高額療養費制度と「多数回該当」

高額療養費制度では、所得区分に応じて1か月あたりの自己負担額の上限が設定されています。
さらに、同じ人が年に3回、月の上限額に達した場合、4回目以降は限度額が引き下げられます。これが「多数回該当」と呼ばれる仕組みです。

がんや難病などで長期治療が必要な人にとって、この多数回該当は負担軽減の重要な役割を果たしてきました。


年収200万円未満は4回目以降の負担を軽減

今回の見直しで注目されるのは、住民税が課税される人のうち、年収200万円未満の層です。
この層については、多数回該当(年4回目以降)の月額上限を引き下げる方針が示されました。

他の所得層の多数回該当の上限は原則として据え置かれ、低所得層への重点的な配慮が明確になっています。患者団体などが求めてきた「長期療養者への負担抑制」を一定程度反映した形といえます。


月額上限は段階的に引き上げへ

一方で、1〜3か月目の月額上限については、引き上げが検討されています。

現行では主に5つの所得区分で限度額が設定されていますが、

  • まず医療費の伸びなどを踏まえて一律に引き上げ
  • その後、住民税非課税世帯を除き細分化
    という2段階での見直しが予定されています。

将来的には所得区分は13段階まで細かくなる見通しで、より所得に応じた負担を求める制度設計が進められます。


「年間上限」の新設という安全弁

月額上限が引き上げられると、上限に達する回数が減り、多数回該当から外れる人が増える可能性があります。
この急激な負担増を抑えるため、新たに「年間上限」が導入される方針です。

ただし、この年間上限は自動適用ではなく、患者本人の申し出を前提とした運用とされました。当初案にあった「年1回以上上限に該当した人」という要件も削除されており、制度の実効性は運用次第となります。


高齢者の外来特例は据え置き

70歳以上の一部を対象とする外来特例については、住民税非課税で年収がおよそ80万円未満の人は、現行の月8000円の上限が維持されます。
高齢・低所得層への配慮を優先する姿勢が確認できます。


結論

今回の高額療養費制度の見直しは、低所得層、とりわけ年収200万円未満の人に対しては負担軽減を図る一方、全体としては月額上限の引き上げと所得区分の細分化を進める内容です。

石破前政権が示した改革案からは後退した面もありますが、「支払い能力に応じた負担」という方向性は維持されています。
今後は、年間上限の実効性や、制度がどこまで長期療養者の生活を支えられるのかが問われることになります。

制度の細かな変更点だけでなく、その背景にある財政制約と社会的な合意形成のあり方にも注目していく必要がありそうです。


参考

・日本経済新聞「高額療養費、年収200万円未満の負担軽く 年4回目以降」2025年12月16日 朝刊

という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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