消費税改正を読み解く(2026–2027)第6回 非課税・免税の再設計:制度のゆがみをどう解消するか

税理士
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消費税には「非課税」「免税」という二つの領域が存在します。医療や住宅賃貸など社会的配慮によって非課税とされる取引、売上1,000万円以下の事業者に適用される免税制度など、政策的・実務的な理由に基づく仕組みが複雑に組み込まれています。

しかし、非課税・免税の範囲の広さは、
・税の公平性
・税収基盤の弱さ
・制度複雑化
・インボイス制度との齟齬
などの問題を引き起こしており、2026〜27年度の税制改正では、これらの領域が再評価される可能性が高まっています。

本稿では、非課税・免税がなぜ問題とされているのか、どのような見直し論点があるのか、そして制度再設計の方向性について解説します。

1 非課税取引とは何か:制度の目的と現状

消費税法では、一定の社会的配慮を理由に非課税取引が定められています。

(1)主な非課税取引

・医療(保険診療)
・介護サービス
・住宅の家賃
・学校教育
・預金利子・保険外交
など、生活維持に不可欠なものが多く、税負担を抑える目的があります。

(2)非課税のメリット

・消費者の生活負担を抑制
・社会政策上の配慮が可能

(3)非課税の構造的な問題

しかし、非課税は次の課題を抱えています。

① 仕入税額控除ができず、事業者が負担

非課税事業者はインボイスを発行できないため、仕入税額控除もできず、実質的に“消費税を負担する側”になります。

② 経済的ゆがみの発生

例えば、医療は非課税ですが美容医療は課税。
住宅賃貸は非課税ですが、事業用貸付は課税。
こうした線引きにより経済活動にゆがみが生じます。

③ 制度の複雑化

インボイス制度との関係も複雑で、実務負担が増えています。

非課税取引は社会政策上必要なものですが、制度改善の余地が大きい領域です。


2 免税制度とは何か:小規模事業者への配慮と負担軽減

売上高1,000万円以下の事業者は、消費税の納税義務が免除されます。

(1)免税制度の目的

・小規模事業者の事務負担軽減
・経営体力の弱い層への配慮
という側面が大きく、日本の産業構造に合わせた制度です。

(2)免税制度のメリット

・記帳・申告負担が小さい
・経済活動の参入障壁を下げる
特に個人事業主にとって重要な仕組みです。

(3)免税制度の課題

しかし、免税制度は消費税の「益税」の温床となります。

① 価格に消費税相当額を含めつつ納税しない構造

事業者が税を国に納めない一方、取引価格には消費税が転嫁されるため、利益として残ります。

② インボイス制度との齟齬

免税事業者はインボイスを発行できず、取引先に不利を与える結果となりました。

③ 経済の二重構造を助長

課税事業者と免税事業者の間でコスト構造の違いが生じ、公平性に影響します。

免税制度は一定の合理性があるものの、適用範囲の見直しが議論される可能性があります。


3 非課税・免税が引き起こす制度的ゆがみ

非課税と免税は税制上の合理性を持つ一方で、次の問題が大きくなっています。

(1)仕入税額控除が働かない領域の増加

非課税・免税は仕入税額控除が適用されないため、多段階の取引における納税構造が歪み、制度の透明性を下げます。

(2)事業者負担の増大

非課税事業者は消費税を最終負担者として背負うケースがあり、価格設定が難しくなります。

(3)インボイス制度との整合性が低い

インボイス制度が導入された今、非課税・免税の範囲と仕入税額控除のルールに矛盾が生じています。

(4)税収基盤の弱体化

非課税・免税の範囲が広いほど、消費税の税収基盤は弱くなります。

制度の持続可能性を考えるうえで避けられないテーマです。


4 2026〜27年度で議論される可能性のある改革案

次の四つの論点が、今後の消費税改革で中心になると考えられます。

(1)非課税範囲の縮小

医療や教育など、社会的配慮が必要な領域を維持しつつも、非課税範囲を整理する方向が議論される可能性があります。
例:
・金融サービスの課税化
・高額医療領域の部分課税
などが検討対象となり得ます。

(2)免税制度の段階的見直し

売上要件を引き下げる、業種別の特例導入など、段階的縮小が検討される可能性があります。
欧州では、小規模事業者制度自体を柔軟化させる国もあり、日本でも参考にされる可能性があります。

(3)簡易課税制度の再評価

免税制度縮小と連動し、簡易課税制度の適用範囲や計算方法を見直す議論が想定されます。

(4)インボイス制度との統合的再設計

AI・電子インボイスを前提とした制度整備に向け、非課税・免税との整合性を高める必要があります。


5 制度の再設計に必要な三つの視点

非課税・免税の見直しは複雑であるため、次の視点が欠かせません。

(1)公平性の確保

・事業者間
・消費者間
の負担が過度に偏らないよう調整が必要です。

(2)簡素性

制度が複雑になるほど実務負担が増えるため、非課税・免税の整理は制度全体をシンプルにする方向が望ましいと言えます。

(3)持続可能性

社会保障費の増加に対応するため、消費税の税収基盤を強化する視点が不可欠です。


結論

非課税・免税制度は、生活や経済への配慮として機能する一方、税収基盤の弱体化や制度の複雑化という問題も抱えています。インボイス制度との整合性を高め、公平性・簡素性・持続可能性を考慮した再設計が求められています。

2026〜27年度の税制改正では、消費税の構造的課題を解決するため、この領域の議論が本格化する可能性があります。

次回(第7回)は、「軽減税率の廃止論とその代替案:税制の簡素化に向けて」を取り上げます。


参考

日本経済新聞など関連資料をもとに再構成。


という事で、今回は以上とさせていただきます。

次回以降も、よろしくお願いします。

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