海外通販の1万円以下の商品にも消費税がかかるのはなぜか 少額輸入貨物の新ルール編

税理士
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海外の通販サイトから低価格の商品を購入することが当たり前になりました。

現在の消費税制度では、海外から日本へ輸入される少額の貨物について、一定の場合には輸入時の消費税が免除されます。

しかし、この仕組みが国内事業者との競争条件の違いにつながっているとの問題があります。

そこで令和8年度税制改正では、海外から日本の消費者へ直接販売される1万円以下の商品について、新しい消費税の仕組みが導入されることになりました。

大きなポイントは、輸入時だけを見るのではなく、海外事業者による日本国内への販売そのものを消費税の課税対象として捉えることです。

現在は少額輸入貨物に免税制度がある

海外から商品を輸入すると、原則として輸入時に消費税が課税されます。

国内で商品を購入すれば消費税を負担するのと同じように、海外から輸入する商品についても消費税を負担することが基本です。

ただし、少額の輸入貨物については免税制度があります。

一般に課税価格が1万円以下の貨物については、一定の場合を除いて関税や輸入消費税が免除されます。

少額の商品まで税関で細かく課税すると、徴税や通関にかかる事務コストが大きくなることなどが背景にあります。

海外通販の拡大で状況が変わった

少額輸入貨物の免税制度が設けられた時代と比べ、現在は越境ECが急速に拡大しています。

スマートフォンから海外の通販サイトへアクセスし、低価格の商品を日本へ直接送ってもらうことも簡単になりました。

1件ごとの商品価格は小さくても、大量の少額貨物が日本へ入ってくれば市場全体では大きな金額になります。

国内事業者が販売する商品には消費税が課税される一方、海外から直接送られる少額商品では輸入消費税が免除されるケースがあります。

この競争条件の違いが、新制度を考える重要な背景となっています。

1万円以下の商品販売を国内取引として扱う

令和8年度税制改正では、国外から日本国内へ発送される一定の低価格商品について、新たな課税制度が設けられます。

対象となるのは、国外から国内へ発送される資産の通信販売のうち、1つの商品について税抜きの対価が1万円以下となる一定の取引です。

このような取引は特定少額資産の譲渡として扱われます。

重要なのは、海外事業者が国外から商品を発送していても、その販売自体を国内における課税資産の譲渡として消費税の対象にする点です。

従来のように輸入時だけで消費税を考える仕組みから、販売段階でも課税する仕組みへ変わります。

海外事業者にも納税義務が生じる可能性がある

新制度の対象となる特定少額資産の譲渡を行った場合、販売した事業者が国内事業者か国外事業者かにかかわらず、国内の課税取引として取り扱われます。

したがって、一定の場合には海外の販売事業者自身が日本の消費税を申告し、納付することになります。

これまで海外事業者から直接商品を購入する場面では、消費者が輸入者となり、税関で輸入消費税が課税されるかどうかが大きなポイントでした。

新制度では、海外事業者による販売という段階にも日本の消費税制度が関わってきます。

輸入時の免税制度が完全になくなるわけではない

ここで注意したいのは、新制度が始まるからといって、少額輸入貨物の輸入時の免税制度そのものが一律になくなるわけではないことです。

輸入時には、課税価格が1万円以下であるなど一定の要件を満たせば、引き続き輸入消費税が免除される場合があります。

一方、販売段階では特定少額資産の譲渡として消費税の課税対象になる可能性があります。

つまり、販売時の消費税と輸入時の消費税を分けて考える必要があります。

二重に消費税がかかる仕組みではない

販売段階を課税対象にすると、販売時と輸入時の両方で消費税がかかるのではないかという疑問も生じます。

新制度では、一定の登録制度を設けることで、この問題に対応します。

特定少額資産販売事業者として登録された事業者が一定の要件を満たして販売する商品については、輸入時の消費税を免除する仕組みが設けられます。

販売段階で消費税を課税しながら、一定の場合には輸入段階を免税とすることで課税関係を整理するわけです。

そのため、販売時と輸入時を別々に理解することが重要になります。

プラットフォームが納税する場合もある

海外通販では、海外の販売者と日本の消費者が直接取引するとは限りません。

オンラインモールなどのデジタルプラットフォームを通じて商品を購入するケースも多くあります。

新制度では、一定の要件を満たす第2種プラットフォーム事業者を介して商品が販売され、そのプラットフォームを通じて代金が受領される場合には、プラットフォーム事業者が商品を販売したものとみなす仕組みも導入されます。

この場合、実際の海外販売者ではなく、プラットフォーム事業者が消費税を申告して納付することになります。

越境ECの消費税を確実に徴収するための重要な仕組みです。

新制度は令和10年4月1日から始まる

特定少額資産の譲渡に関する新しい課税制度は、令和10年4月1日以後に行われる一定の取引から適用されます。

したがって、海外通販を行う事業者やプラットフォーム事業者には、制度開始までに準備する期間があります。

販売システムで商品価格をどのように判定するのか、日本向け販売をどのように管理するのか、消費税をどのように徴収して申告するのかなど、多くの実務対応が必要になります。

海外通販を利用する消費者にとっても、価格表示や決済時の税負担などに影響が表れる可能性があります。

国内事業者との競争条件を近づける

今回の改正を理解するうえで重要なのは、単なる増税として見るのではなく、国内販売と海外通販の課税条件を近づける制度変更として捉えることです。

国内事業者が日本で商品を販売すれば、原則として消費税の課税対象になります。

一方、海外から発送される低価格商品について輸入時の免税が広く利用されれば、税負担の違いが価格競争にも影響します。

越境ECの市場が大きくなったことで、少額輸入貨物について従来と同じ仕組みを維持することが難しくなってきたわけです。

結論

令和8年度税制改正では、海外から日本へ直接発送される一定の低価格商品について、消費税の新しい課税制度が導入されます。

対象となるのは、国外から国内へ発送される通信販売のうち、1つの商品について税抜きの対価が1万円以下となる特定少額資産の譲渡です。

新制度では、海外から発送される商品であっても、その販売自体を国内の課税取引として扱います。

一方、一定の要件を満たす場合には輸入時の消費税を免除する仕組みも設けられます。

さらに、一定のオンラインモールを利用した取引では、プラットフォーム事業者が販売者とみなされ、消費税を申告して納付する仕組みも導入されます。

新制度は令和10年4月1日から始まります。

海外通販の消費税は、輸入時に税金がかかるかどうかだけを見る時代から、誰が販売し、誰が代金を受け取り、誰が消費税を納めるのかまで確認する制度へ大きく変わっていきます。

参考

税のしるべ 2026年9月7日 令和8年・役に立つ消費税実務問答集

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