国の予算を見ると、
一般会計の歳出はいくらか
新規国債をいくら発行するのか
という数字が出てきます。
しかし、歳出規模そのものが変われば、国債発行額だけを比較しても財政がどの程度借金に依存しているのか分かりにくい場合があります。
そこで使われるのが国債依存度です。
国債依存度を見ると、国の一般会計歳出のうち、どの程度を新たな国債発行によって賄っているのかを割合で確認できます。
例えば同じ40兆円の新規国債を発行していても、歳出が100兆円なら国債依存度は40パーセントです。
歳出が160兆円なら25パーセントです。
同じ40兆円でも意味が違います。
2027年度予算では、概算要求が143兆円前後に膨らむ一方、政府は新規国債発行額を40兆円程度に抑える方針を示しています。
今回は国債依存度とは何なのか、財政の健全性を見るうえでどのように使えばよいのかを整理します。
国債依存度とは何か
国債依存度とは、一般会計の歳出のうち、どの程度を新規国債発行による収入で賄っているのかを示す割合です。
基本的には、
新規国債発行額を一般会計歳出で割る
ことで考えることができます。
例えば一般会計歳出が100兆円、新規国債発行額が30兆円だったとします。
この場合、
30兆円を100兆円で割る
ので、国債依存度は30パーセントです。
つまり国の支出100円のうち、およそ30円を新たな借金で賄っているというイメージです。
国債依存度が高いほど、その年度の財政運営が新しい借金に大きく依存していることになります。
税収だけで歳出を賄えるとは限らない
国の一般会計には、さまざまな歳出があります。
社会保障があります。
防衛があります。
教育があります。
公共事業があります。
地方自治体への財政移転があります。
国債費もあります。
こうした歳出の財源となるのが税収などです。
代表的な税収には、
所得税
法人税
消費税
があります。
しかし税収や税外収入などを合わせても歳出に足りない場合があります。
その不足分を新規国債発行によって補います。
つまり国債依存度は、
税収などで賄えなかった部分がどの程度あるのか
を見る指標でもあります。
国債依存度は家計の借金割合に少し似ている
単純化した例で考えてみます。
ある家計が年間500万円使うとします。
給料などの収入が450万円あり、不足する50万円を借金したとします。
年間支出500万円のうち50万円を借金で賄っているため、割合は10パーセントです。
別の家計も年間500万円使いますが、収入が300万円しかなく、200万円を借金したとします。
割合は40パーセントです。
同じ500万円の支出でも、後者の方が借金への依存が大きいことが分かります。
国の財政は家計とは異なるため、そのまま同じように考えることはできません。
しかし、
年間の支出のうち何割を新しい借金に頼っているのか
という国債依存度の感覚を理解するには分かりやすい例です。
国債発行額だけでは分からない理由
例えばA年度の新規国債発行額が30兆円だったとします。
B年度は40兆円だったとします。
数字だけを見れば、
国債発行が10兆円増えたので財政が大幅に悪化した
と考えるかもしれません。
しかし歳出規模も確認する必要があります。
A年度が、
歳出100兆円
新規国債30兆円
なら国債依存度は30パーセントです。
B年度が、
歳出160兆円
新規国債40兆円
なら25パーセントです。
新規国債発行額は増えていますが、歳出に占める割合は下がっています。
反対に新規国債発行額が減っていても、歳出がそれ以上に減れば国債依存度が上がる場合があります。
金額と割合の両方を見る必要があるのです。
税収が増えると国債依存度は下がりやすい
国債依存度を下げる重要な方法の一つが税収を増やすことです。
例えば歳出が120兆円だったとします。
税収などが80兆円で、残り40兆円を新規国債で賄えば、単純化した国債依存度は約33パーセントです。
翌年度も歳出が120兆円だったとします。
しかし税収などが90兆円に増え、新規国債が30兆円になれば、国債依存度は25パーセントになります。
歳出を削減しなくても、税収が増えれば借金への依存を下げることができます。
そのため経済成長による税収増は、財政健全化にとって重要です。
経済成長が重要になる理由
政府が成長投資を重視する理由の一つもここにあります。
例えばAIや半導体などへの投資によって企業活動が活発になったとします。
企業利益が増えれば法人税収が増える可能性があります。
雇用や賃金が増えれば所得税収も増える可能性があります。
消費が拡大すれば消費税収などにも影響します。
その結果、歳出が一定でも税収が増えれば、新規国債発行を減らす余地が生まれます。
つまり、
成長投資
経済成長
税収増
国債発行の抑制
国債依存度の低下
という流れをつくれる可能性があります。
積極財政で重要なのは、支出を増やすこと自体ではなく、この循環を実際につくれるかどうかです。
成長しなければ逆の結果になる可能性もある
一方、成長投資という名前で支出を増やしても、十分な経済効果が生まれなければどうなるでしょうか。
歳出だけが増えます。
税収は期待したほど増えません。
不足する財源を国債で補えば、新規国債発行額が増えます。
すると国債依存度が高まる可能性があります。
さらに国債残高が増え、金利も上昇すれば、将来の利払い費も増えます。
つまり積極財政が財政を改善するか悪化させるかは、
どれだけお金を使ったか
ではなく、
その支出によってどれだけ経済力と税収を増やせたか
に大きく左右されます。
2027年度の40兆円程度という目安
政府は2027年度予算について、新規国債発行額を40兆円程度に抑える方針を示しています。
比較対象となる2025年度補正予算と2026年度当初予算を合わせた新規国債発行額は41.3兆円でした。
つまり成長投資などを進めながらも、新規国債発行を大きく増やさない考え方です。
ただし2027年度概算要求143兆円前後をそのまま分母として、現時点で国債依存度を確定することはできません。
143兆円はあくまで概算要求だからです。
財務省査定によって歳出要求は変わります。
事項要求の金額も今後決まります。
税収見通しも精査されます。
最終的な政府予算案が固まって初めて、実際の予算に即した国債依存度を見られるようになります。
国債依存度が高いと何が問題なのか
国債依存度が高いということは、その年度の行政サービスや政策を現在の税収などだけでは十分に賄えず、新しい借金への依存が大きいということです。
国債は発行したら終わりではありません。
利子を支払います。
満期が来れば償還します。
必要に応じて借り換えます。
つまり現在の歳出の一部を国債で賄うことは、将来の財政にも影響します。
特に金利が上昇すれば、国債残高が大きいほど将来の利払い負担が増えやすくなります。
国債依存度が高い状態が長期間続くことには注意が必要です。
国債依存度がゼロなら必ずよいわけではない
一方、国債依存度は低ければ低いほど、どんな状況でもよいという単純な指標ではありません。
例えば大規模災害が発生したとします。
被災者支援やインフラ復旧に巨額のお金が必要になります。
そのとき、
国債依存度を上げたくないので復旧支援をしない
という判断が適切とは限りません。
深刻な景気後退でも同じです。
一時的に国債を発行して景気を支えた方が、長期的には経済や税収を守れる場合があります。
また将来世代も利用する社会資本への投資について、国債によって世代間で費用を分担する考え方もあります。
したがって国債依存度は、数字だけで善悪を判断するものではありません。
なぜ国債を発行しているのかを見る必要があります。
一時的に高い場合と恒常的に高い場合は違う
特に重要なのは、国債依存度が高い理由です。
大規模災害や経済危機のため一時的に上昇したのであれば、危機が終わった後に低下させることができます。
一方、通常の行政サービスを毎年国債で賄わなければならない状態が続けば、構造的な財政赤字という問題になります。
つまり、
非常時に一時的に借金する
ことと、
平常時でも毎年大きな借金をしなければ予算を組めない
ことは意味が違います。
国債依存度を見るときには、単年度の数字だけでなく長期的な推移を見ることが重要です。
国債依存度だけでは財政健全性は判断できない
国債依存度は便利な指標ですが、これだけで財政が安全かどうかを判断することはできません。
例えば確認したい数字には、
政府債務残高
国内総生産
税収
基礎的財政収支
国債費
利払い費
金利
経済成長率
などがあります。
政府債務が増えていても、それ以上のペースで経済規模や税収が拡大していれば、債務負担の見え方は変わります。
反対に国債依存度が一時的に低くても、巨額の政府債務を抱え、金利上昇によって利払い費が急増していれば注意が必要です。
複数の数字を組み合わせて見ることが大切です。
借換債は国債依存度の新規国債とは別に考える
国債依存度を理解するときに、もう一つ注意したいのが借換債です。
政府は過去に発行した国債が満期を迎えると、新しい国債を発行して借り換えることがあります。
借換債の発行額は巨額になることがあります。
しかし国債依存度で通常問題にする新規国債とは意味が違います。
新規国債は、その年度の新しい財源不足を賄います。
借換債は、過去の債務を新しい債務へ置き換えます。
そのため、
国債の年間発行総額を一般会計歳出で割れば国債依存度になる
というわけではありません。
新規国債発行額を見ることが重要です。
金利のある世界では国債依存度の意味が重くなる
日本では長期間にわたって超低金利が続きました。
そのため国債残高が増えても、利払い費の増加を比較的抑えることができました。
しかし金利が上昇すると状況が変わります。
新規国債を高い金利で発行する。
低金利の既発国債が満期を迎える。
高い金利の国債へ借り換える。
こうした動きが続けば、政府の利払い費が徐々に増えていきます。
つまり新しい借金への依存が高いほど、金利上昇の影響を将来へ積み上げる可能性があります。
国債依存度を見る意味は、金利のある世界でより大きくなります。
結論
国債依存度とは、一般会計歳出のうち、どの程度を新規国債発行によって賄っているのかを示す割合です。
例えば一般会計歳出100兆円のうち30兆円を新規国債で賄えば、国債依存度は30パーセントです。
国の支出100円のうち、およそ30円を新しい借金で賄っていると考えると分かりやすいでしょう。
国債依存度を見ることで、新規国債発行額という金額だけでは分からない、財政の借金への依存度を比較できます。
税収が増え、新規国債発行額を減らせれば、国債依存度は下がりやすくなります。
反対に歳出が増えても税収が十分に増えず、不足分を国債で賄えば国債依存度は上がる可能性があります。
ただし国債依存度が高いことが、どのような状況でも悪いとは限りません。
災害や経済危機では、一時的に国債を発行して経済や生活を支える必要があります。
重要なのは、一時的な国債発行なのか、平常時でも借金に依存しなければ予算を組めない構造なのかを見分けることです。
2027年度予算では、概算要求が143兆円前後となる一方、新規国債発行額を40兆円程度に抑える方針が示されています。
今後の予算編成では、歳出が最終的にいくらになるのかだけでなく、そのうちどれだけを税収で賄い、どれだけを新しい国債に頼るのかが重要になります。
国債依存度は、国が使うお金の大きさを見る指標ではありません。
そのお金を現在の収入でどこまで賄えているのかを見るための指標なのです。
参考
日本経済新聞 2026年9月1日朝刊 概算要求、143兆円前後 「天井」廃止で過去最大
日本経済新聞 2026年9月1日朝刊 概算要求最大「143兆円」、市場警戒解かず
日本経済新聞 2026年9月1日朝刊 上限撤廃、強まる官邸裁量