地方交付税の不交付団体とは何か 東京都など財政力の強い自治体が交付税を受け取らない理由編

政策

地方交付税は、自治体が標準的な行政サービスを提供するための財源不足を調整する仕組みです。

しかし、すべての自治体が普通交付税を受け取っているわけではありません。

自分たちの税収などで標準的な行政に必要な財源を確保できると計算されれば、普通交付税は交付されません。

こうした自治体を不交付団体と呼びます。

東京都のように税収力の強い自治体が代表例として知られています。

ところが、国が新しい給付制度をつくり、その地方負担を地方交付税で補うことになると、一つの問題が生じます。

普通交付税を受け取っていない自治体の負担をどうするのかという問題です。

参考記事で政府が不交付団体への対応を検討するとしているのも、このためです。

不交付団体とは何か

不交付団体とは、普通交付税が交付されない地方自治体です。

地方自治体にはそれぞれ税収があります。

住民税。

固定資産税。

地方消費税。

法人関係の税収。

地域によって税収力は大きく異なります。

その自治体が標準的な行政を行うために必要な財源を、自らの税収などで賄えると算定されれば、普通交付税による財源不足の補填は必要ありません。

そのため普通交付税は交付されません。

交付団体とは何が違うのか

普通交付税を受け取る自治体を交付団体といいます。

考え方を単純化すると、

標準的に必要なお金

標準的に得られる収入

を比較します。

必要なお金の方が大きければ財源不足が生じます。

その不足を基礎として普通交付税が算定されます。

一方、標準的な収入で標準的な行政需要を賄えると算定されれば、普通交付税は交付されません。

これが不交付団体です。

基準財政需要額とは何か

この判断で重要なのが基準財政需要額です。

基準財政需要額とは、その自治体が標準的な行政サービスを提供するために必要となる一般財源を一定のルールで算定したものです。

実際に自治体が使った金額ではありません。

人口。

道路。

学校。

福祉などの行政需要。

さまざまな要素を一定の基準に当てはめて計算します。

自治体ごとに自由に支出を増やせば、その分だけ普通交付税が増えるという仕組みではありません。

基準財政収入額とは何か

もう一つが基準財政収入額です。

自治体が標準的に得られる地方税収などを一定の方法で算定したものです。

地方税収が大きい自治体ほど、一般的には基準財政収入額も大きくなる方向に働きます。

この基準財政収入額と基準財政需要額を比較します。

標準的な行政に必要な財源に対して収入が不足するなら交付団体になります。

収入で需要を賄えるなら不交付団体となります。

財源超過とは何か

不交付団体を理解するときには、財源超過という考え方も重要です。

基準財政収入額が基準財政需要額を上回る状態です。

例えば単純化して、

基準財政需要額が1000億円

基準財政収入額が1200億円

だったとします。

標準的な行政に必要とされる財源より、標準的に得られる収入の方が200億円多いことになります。

普通交付税によって財源不足を補う必要はありません。

このため不交付団体になります。

東京都はなぜ財政力が強いのか

東京都には人口だけでなく、多くの企業や経済活動が集中しています。

特に大企業の本社が集積しています。

所得や企業活動、不動産などに関連して大きな税源があります。

そのため地方税収の規模も非常に大きくなります。

全国には人口減少などによって税収確保に苦労する自治体がある一方、東京のように強い税源を持つ地域もあります。

こうした地域間の税源の偏りが、地方財政制度を考える重要な背景になっています。

不交付団体だから裕福とは単純にいえない

ただし、不交付団体であれば何にでも自由に使えるお金が大量に余っているという意味ではありません。

不交付団体かどうかは、地方交付税制度上の基準によって判定されます。

自治体には実際にはさまざまな支出があります。

公共施設の老朽化。

子育て支援。

高齢化への対応。

防災。

インフラ整備。

物価や人件費の上昇。

不交付団体でも財政上の課題は存在します。

普通交付税を受け取っていないことと、財政上の制約がないことは別です。

不交付団体は東京都だけではない

不交付団体というと東京都を思い浮かべやすいですが、東京都だけとは限りません。

企業活動が活発な自治体。

大規模な工場などが立地する自治体。

特徴的な税源を持つ自治体。

こうした市町村が不交付団体になることもあります。

また、税収や行政需要は毎年度変化します。

ある年度は不交付団体でも、その状態が永久に続くとは限りません。

地方交付税の算定結果によって変わる可能性があります。

国の新制度で問題が生まれる

不交付団体という仕組みが特に問題になるのが、国が全国共通の新しい制度をつくったときです。

例えば国が新しい給付制度をつくり、

国と地方で費用を負担する

と決めたとします。

地方自治体には新しい支出が発生します。

そこで政府が、

地方負担については地方交付税で財源措置します

と説明したとします。

交付団体なら地方交付税の算定へ反映することで財源を補う仕組みを考えられます。

しかし、不交付団体には普通交付税そのものが交付されません。

地方交付税に算入しても現金が来るとは限らない

ここは地方財政を理解するときに重要な点です。

ある経費が基準財政需要額に算入されたとしても、すべての自治体にその金額の普通交付税が直接支払われるわけではありません。

基準財政需要額が増えても、基準財政収入額の方がなお大きければ、その自治体は不交付団体のままです。

例えば、

基準財政需要額1000億円

基準財政収入額1200億円

の自治体に、新制度による需要100億円を追加するとします。

需要額は1100億円になります。

それでも収入額1200億円の方が大きいため、単純化すれば普通交付税は発生しません。

新しい行政需要を算定に入れることと、その金額が国から現金で交付されることは同じではないのです。

全国共通制度なのに自治体負担が変わる問題

ここで地方側から疑問が生じます。

国が全国共通の制度として決めた政策なのに、

交付団体は地方交付税で財源が補われる

不交付団体は自分たちの財源から負担する

という違いが生じる可能性があるからです。

もちろん不交付団体は財政力が強いから普通交付税を受け取っていません。

しかし、国が新たに義務的な支出を求める場合、それをすべて自治体の財政力に委ねてよいのかという問題は残ります。

所得連動型の新給付でも問題になる

参考記事で取り上げられた所得連動型の新給付でも、この問題が出ています。

政府は地方側に生じる財政負担について、地方財政計画に反映し、地方交付税の算定を通じて穴埋めする考えを示しています。

一方、普通交付税を受け取らない不交付団体については、別途財源措置を検討するとしています。

つまり、

地方交付税で対応します

という説明だけでは全国すべての自治体への財源措置にはならないのです。

なぜ別の財源措置が必要になるのか

全国共通の給付制度で自治体に一定の負担を求めるのであれば、その負担方法についても公平性が求められます。

交付団体には地方交付税。

不交付団体には何もなし。

という仕組みにすると、制度実施に伴う実質的な財政負担に違いが生まれます。

そのため不交付団体については、別の国庫負担や財政措置を設ける方法などを検討する必要が出てきます。

具体的にどのような方式になるかは制度設計によりますが、普通交付税とは別の対応が必要になる可能性があります。

財政力が強いなら自己負担でよいという考え方もある

一方で、

不交付団体は財政力が強いのだから、自分たちで負担すればよい

という考え方もあります。

地方交付税そのものが財政力格差を調整する制度だからです。

税収力の強い自治体にまで同じ財源を配れば、財政調整という地方交付税の考え方と矛盾する可能性があります。

したがって不交付団体への財源措置は単純な問題ではありません。

国の政策としてどこまで国が責任を持つのか。

地方自治体の財政力をどこまで考慮するのか。

両方を考える必要があります。

国と地方の役割分担にも関係する

この問題の根本には、国と地方の役割分担があります。

国が制度を決める。

自治体が実施する。

費用は国と地方で負担する。

この構造では、制度をつくるたびに財源問題が発生します。

特に全国共通の給付制度では、自治体によって財政力が違っても住民が受ける給付内容は同じにする必要があります。

行政サービスを全国共通にしながら、自治体の財政力の違いをどう扱うのか。

不交付団体の問題は、この難しさを象徴しています。

地方交付税は全国一律の補助金ではない

不交付団体の存在から分かる重要なことがあります。

地方交付税は、

国がすべての自治体へ同じように配る補助金

ではないということです。

それぞれの自治体について標準的な財政需要と財政収入を計算し、財源不足があるところへ普通交付税を配分します。

だからこそ自治体によって交付額が違います。

そして財源不足がないと算定されれば、普通交付税はゼロになります。

地方交付税は財政力の差を調整するための制度なのです。

結論

地方交付税の不交付団体とは、標準的な行政に必要となる財源を自らの税収などで賄えると算定され、普通交付税が交付されない自治体です。

基本となるのは基準財政需要額と基準財政収入額です。

標準的に必要となる財源に対して、標準的に得られる収入で賄えるのであれば、普通交付税による財源不足の補填は必要ありません。

東京都など税収力の強い自治体が代表例です。

ただし、不交付団体だから財政上の問題が一切ないという意味ではありません。

特に国が全国共通の新制度をつくった場合には問題が生じます。

地方負担を地方交付税で補うとしても、不交付団体には普通交付税が交付されない可能性があるからです。

参考記事で取り上げられた所得連動型の新給付でも、政府は不交付団体について別途対応を検討するとしています。

国が全国共通の制度をつくる。

地方自治体が実施する。

しかし自治体ごとの財政力は違う。

不交付団体の問題とは、全国共通の政策と地方自治体ごとの財政力の違いを、どのように両立させるかという地方財政の重要な課題なのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月1日朝刊 所得連動の新給付 地方負担、国が穴埋め

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