株式会社では、通常、毎年決まった時期に定時株主総会が開かれます。
上場会社であれば、取締役の選任や会社から提出された議案などについて株主が議決権を行使します。
しかし、会社で重大な問題が起きたときに、次の定時株主総会まで待っていられない場合があります。
たとえば経営陣に重大な問題があり、取締役の交代について早急に株主の意思を確認する必要がある場合です。
そのような場合に、一定の要件を満たした株主が会社に対して株主総会を開くよう求めることができる仕組みがあります。
これが臨時株主総会の招集請求権です。
株主提案権が、基本的には開かれる株主総会へ議題や議案を持ち込む仕組みであるのに対して、招集請求権は株主総会そのものを開くよう求める仕組みです。
どちらも少数株主が経営陣を監督するための重要な権利ですが、その役割は大きく異なります。
臨時株主総会とは何か
株主総会には、大きく分けて定時株主総会と臨時株主総会があります。
定時株主総会は、毎事業年度の終了後、一定の時期に開催される株主総会です。
上場会社では毎年開催される株主総会として一般の投資家にもよく知られています。
これに対して臨時株主総会は、必要が生じたときに開催される株主総会です。
毎年決まった時期に必ず開催するものではありません。
会社の重要事項について、次の定時株主総会を待たずに株主の意思を確認する必要がある場合などに開催されます。
定時株主総会との違い
定時株主総会と臨時株主総会の大きな違いは、開催する時期と理由です。
定時株主総会は、毎事業年度に対応して定期的に開催されます。
一方、臨時株主総会は特別な必要が生じたときに開催されます。
ただし、臨時という名前だからといって、臨時株主総会の決議の効力が定時株主総会より弱いわけではありません。
株主総会として法律や定款で認められた事項について決議します。
必要な決議要件を満たせば、その決議には法律上の効力があります。
定時か臨時かという違いは、株主総会としての格の違いではなく、開催する時期や理由の違いなのです。
株主総会は誰が開くのか
通常、株主総会の招集は会社側が行います。
取締役会設置会社であれば、原則として取締役会が株主総会の招集について決定し、招集手続きが進められます。
いつ株主総会を開くのか。
どこで開くのか。
何を株主総会の目的事項とするのか。
こうした事項を決めて株主へ通知します。
したがって通常は、株主自身が勝手に日時を決めて株主総会を開くわけではありません。
しかし会社側だけが株主総会を開くかどうかを完全に決められると、問題が生じる可能性があります。
経営陣に問題がある場合はどうするのか
たとえば株主が、
現在の取締役を交代させる必要がある
と考えたとします。
ところが、その取締役自身が会社を支配しているとします。
会社側が株主総会を開くかどうかを完全に自由に決められるのであれば、自分たちに不利な議案が提出される可能性のある株主総会を開かないという対応が考えられます。
それでは株主が経営陣を監督できません。
そこで会社法は、一定の要件を満たした株主に株主総会の招集を請求する権利を認めています。
会社側が自発的に株主総会を開こうとしなくても、一定の条件を満たせば株主側から開催を求められるのです。
招集請求権とは何か
会社法では、一定の要件を満たした株主が、取締役に対して株主総会の招集を請求できる仕組みを設けています。
公開会社では原則として、総株主の議決権の3パーセント以上の議決権を6カ月前から引き続き保有する株主が、この権利を行使できます。
定款によって、この要件を緩和できる場合があります。
株主提案権の原則的な1パーセントまたは300個という基準とは違うことが分かります。
臨時株主総会そのものを開催させることは会社や他の株主への影響が大きいため、株主提案権とは異なる要件が設けられているのです。
なぜ3パーセントという基準があるのか
臨時株主総会を開催するには大きな負担がかかります。
会社は株主へ招集通知を送る必要があります。
株主総会資料を準備する必要があります。
議案を検討します。
会場や運営体制などを整える場合もあります。
株主側も議案を確認して議決権を行使しなければなりません。
もし1株だけ持つ株主がいつでも臨時株主総会の開催を求められるとすれば、会社運営が混乱する可能性があります。
そこで一定の議決権割合を持つ株主に権利を限定しています。
少数株主による監督を認めながら、会社への過度な負担を防ぐ仕組みです。
なぜ継続保有期間があるのか
公開会社では原則として6カ月前から引き続き一定の議決権を保有していることも求められます。
これは株主提案権にも見られる考え方です。
ある会社で問題が起きたことを知り、その直後に株式を大量取得してすぐ臨時株主総会を要求するような行動を一定程度制限する意味があります。
一定期間株主として会社に関係してきたことを条件にするわけです。
ただし、会社の形態や定款などによって適用される要件が異なる場合があります。
したがって実際に権利を行使する場合には、その会社に適用される具体的な条件を確認する必要があります。
招集請求では何を求めるのか
株主が単に、
臨時株主総会を開いてください
と言えばよいわけではありません。
株主総会の目的である事項と招集を請求する理由を示して請求します。
つまり、
何について株主総会で判断してほしいのか
なぜ今株主総会を開く必要があるのか
を明らかにする必要があります。
臨時株主総会は単なる株主と経営陣の意見交換会ではありません。
会社として一定の事項を株主総会で取り扱うために開催されるものだからです。
会社が応じれば臨時株主総会が開かれる
株主から適法な招集請求を受けた場合、まず会社側が株主総会を開催することになります。
会社が必要な手続きを進め、株主へ招集通知を行い、臨時株主総会を開催します。
そこで議案について株主が議決権を行使します。
重要なのは、招集を請求した株主が会社の意思を一方的に決定できるわけではないことです。
臨時株主総会を開くことと、そこで提案された議案が可決されることは別です。
最終的には株主総会で必要な賛成を得る必要があります。
会社が招集しなかったらどうなるのか
招集請求権があっても、会社側が無視できるのであれば制度の意味がありません。
そこで会社法には、適法な招集請求があったにもかかわらず一定の場合に会社側が株主総会を招集しないとき、請求した株主が裁判所の許可を得て自ら株主総会を招集できる仕組みがあります。
つまり招集請求権は、
会社にお願いするだけの制度
ではありません。
一定の要件と手続きを満たせば、会社側が動かない場合にも株主総会の開催へ進める道が用意されています。
これによって少数株主による経営監督を実効的なものにしています。
株主提案権とは何が違うのか
臨時株主総会の招集請求権と株主提案権は混同しやすい制度です。
株主提案権は、株主総会で取り上げる議題や具体的な議案について株主側から提案する仕組みです。
基本的には、
株主総会で何を話し合い、何を決議するのか
に関係します。
一方、招集請求権は、
株主総会そのものを開催するよう求める
仕組みです。
つまり、
株主提案権は議題や議案を持ち込む権利
招集請求権は総会を開くよう求める権利
と整理すると分かりやすくなります。
次の定時株主総会まで待てるならどうなるのか
株主が会社へ何らかの提案をしたい場合でも、必ず臨時株主総会を開く必要があるわけではありません。
次の定時株主総会が近ければ、そこで株主提案を行う方法があります。
一方、次の定時株主総会まで長い期間があり、早急に株主の判断が必要な問題がある場合には、臨時株主総会の意味が大きくなります。
たとえば経営体制を巡って重大な対立が生じている場合などです。
時間的な緊急性も、臨時株主総会が利用される理由の一つです。
アクティビストが利用する場合もある
臨時株主総会の招集請求権は、アクティビストが利用することもあります。
たとえば現在の経営陣では企業価値を高められないと考え、取締役の交代などを求める場合です。
次の定時株主総会まで待たずに株主の意思を確認したい場合、一定の要件を満たせば臨時株主総会の招集を求めることが考えられます。
しかし、この権利はアクティビスト専用ではありません。
法律上の要件を満たした株主に認められる少数株主権です。
誰が行使するのかと、どのような制度なのかは分けて考える必要があります。
3パーセント持っていれば議案が通るわけではない
ここも重要です。
仮に3パーセントの議決権を持つ株主が臨時株主総会の招集を請求できたとしても、その3パーセントだけで議案を可決できるわけではありません。
招集請求の要件と株主総会での決議要件は別だからです。
たとえば普通決議なら、株主総会で所定の要件を満たしたうえで過半数の賛成が必要になります。
定款変更などなら原則として特別決議が必要です。
したがって招集を請求した株主は、実際に議案を可決したければ他の株主から支持を集める必要があります。
少数株主に与えられているのは、株主総会を開くための入口を作る権利です。
会社を3パーセントの株主が支配できる制度ではありません。
株主総会を開かせる権利がなぜ必要なのか
株式会社では取締役が会社経営を担います。
しかし、その取締役を選ぶのは株主です。
経営陣に重大な問題が生じたとき、株主が次の定時株主総会まで何もできないとすれば、経営監督が十分に機能しない場合があります。
そこで一定の持株比率などを持つ株主に、臨時株主総会の開催を求める権利を認めています。
経営者が株主総会を開く側でありながら、その経営者自身を株主が監督する。
この構造から生じる問題を補う仕組みなのです。
少数株主権としての意味
臨時株主総会の招集請求権は、少数株主権の重要性がよく分かる制度です。
株式会社は多数決によって運営されます。
しかし少数株主には、単に多数派の判断に従うだけではなく、一定の条件を満たせば問題を株主全体へ提起する手段があります。
株主提案権があります。
臨時株主総会の招集請求権があります。
一定の場合には会社の情報を調査するための権利もあります。
こうした権利を組み合わせることで、経営陣や大株主への監督を可能にしています。
株主提案権より要件が重い理由
株主提案権と臨時株主総会の招集請求権を比較すると、後者の方が会社に与える影響が大きいことが分かります。
すでに開催される株主総会へ議案を追加することと、新たに株主総会そのものを開催することでは会社側の負担が違います。
臨時株主総会を開けば、会社だけでなく他の株主にも対応が必要になります。
そのため、それぞれの権利の影響に応じて異なる要件が設定されています。
少数株主権はすべて同じ基準で利用できるわけではないのです。
結論
臨時株主総会の招集請求権とは、一定の要件を満たした株主が会社に対して株主総会を開催するよう求めることができる権利です。
公開会社では原則として、総株主の議決権の3パーセント以上を6カ月前から引き続き保有する株主に認められる仕組みがあります。
定時株主総会が毎事業年度に対応して定期的に開催されるのに対し、臨時株主総会は必要が生じたときに開催されます。
株主提案権との違いも重要です。
株主提案権は、株主総会へ議題や議案を持ち込むための仕組みです。
臨時株主総会の招集請求権は、株主総会そのものを開くよう求める仕組みです。
また、招集を請求できることと議案を可決できることは別です。
少数株主が臨時株主総会を開くきっかけを作れても、そこで会社の方針を変えるためには他の株主から必要な賛成を得なければなりません。
臨時株主総会の招集請求権は、少数株主に会社を支配させる制度ではありません。
経営陣に重大な問題が生じたときなどに、会社側が自ら株主総会を開こうとしなくても、一定の株主が株主全体へ判断を求めることができるようにすることで、株式会社の経営監督を支える仕組みなのです。
参考
日本経済新聞 2026年8月31日 朝刊 株主提案、要件見直しで火花
日本経済新聞 2026年8月31日 朝刊 業務執行の提案巡り議論