地方就職とは何か 東京の大学へ進学した若者を地方企業が採用する仕組み編

人生100年時代
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地方の人口減少を考えるとき、大きな転換点になるのが高校卒業後の進学です。

地方で生まれ育った若者が、大学進学をきっかけに東京などの都市部へ移ります。

大学卒業後に故郷へ戻れば一時的な人口移動ですが、そのまま都市部の企業へ就職すれば、地方から若者が流出した状態が続くことになります。

そこで重要になるのが「地方就職」です。

地方就職には、故郷へ戻って働く場合だけでなく、出身地とは異なる地方で働く場合もあります。

今回の記事で紹介された国内留学や地方でのインターンシップは、学生が地方の企業や自治体を知るきっかけになります。

地方就職を増やすためには、求人を用意するだけではなく、学生と地方の仕事を結びつける接点をつくることが重要なのです。

地方就職の意味

地方就職という言葉に法律上の統一された定義があるわけではありません。

一般的には、東京などの大都市圏ではなく地方にある企業や自治体などへ就職することを指します。

例えば地方出身者が東京の大学へ進学し、卒業後に故郷の企業へ就職するケースがあります。

一方、東京で生まれ育った学生が国内留学などをきっかけに地方を知り、その地域の企業へ就職するケースも考えられます。

就職先も民間企業だけではありません。

地方自治体。

地域金融機関。

医療機関。

社会福祉法人。

農業法人。

観光関連企業。

地域のNPO。

さまざまな選択肢があります。

さらに地方で起業する方法もあります。

地方就職とは、単純に地方企業へ入社することだけではなく、地方を生活と仕事の拠点として選ぶことだと考えると分かりやすいでしょう。

進学をきっかけに地方を離れる

地方から若者が流出する大きなきっかけが大学進学です。

高校までは地元で生活していても、希望する大学や学部が地域内になければ、進学と同時に地域を離れることになります。

問題は、その後です。

例えば18歳で東京の大学へ進学したとします。

4年間東京で生活します。

友人ができます。

アルバイトをします。

企業のインターンシップへ参加します。

就職活動も東京を中心に行います。

すると大学を卒業する22歳ごろには、生活の基盤が東京にできています。

地元へ戻るという選択肢が以前より遠く感じられることがあります。

進学による人口流出が、そのまま就職による人口流出へつながるわけです。

地方企業を知らないという問題

地方就職が進みにくい理由として、給与や仕事内容などが挙げられることがあります。

もちろん、それらも重要です。

しかし、その前に大きな問題があります。

学生が地方企業を知らないことです。

都市部の大学で就職活動をしていると、学生が接触する企業には偏りが生まれます。

テレビCMで知っている企業。

大学の先輩が就職した企業。

大規模な合同企業説明会に参加する企業。

就職情報サイトで目立つ企業。

こうした企業が中心になります。

地方には優れた技術や高い市場占有率を持つ企業があっても、一般消費者向けの商品を扱っていなければ学生に知られていないことがあります。

学生から見れば、知らない企業は就職先の候補になりにくいのです。

地方企業にとって採用競争の第一歩は、自社の存在を知ってもらうことになります。

Uターンとの違い

地方就職の一つにUターン就職があります。

Uターンとは、地方出身者が進学や就職などで都市部へ移った後、出身地域へ戻ることです。

例えば鹿児島県で生まれ育った人が東京の大学へ進学し、卒業後に鹿児島県の企業へ就職すればUターン就職になります。

地方就職の中でも、比較的地域とのつながりを持ちやすい形です。

家族や友人が地域にいる場合があります。

土地勘もあります。

地域での生活についてもある程度理解しています。

そのため地方企業にとって、都市部へ進学した地元出身学生は重要な採用候補になります。

ただし、地元出身だから必ず戻ってくるわけではありません。

希望する仕事があるのか。

給与や待遇はどうなのか。

将来のキャリアを描けるのか。

こうした条件も重要になります。

Iターンとの違い

Iターンは、都市部で生まれ育った人などが、出身地ではない地方へ移住して働くことです。

例えば東京出身の学生が、大学卒業後に島根県の企業や自治体へ就職するようなケースです。

Uターンよりも難しい面があります。

その地域に家族や友人がいるとは限りません。

地域での生活も経験したことがないかもしれません。

どのような企業があるのかも分かりません。

だからこそ、国内留学やインターンシップが重要になります。

学生時代に一定期間その地域で暮らせば、地域の仕事だけでなく生活そのものを知ることができます。

まったく知らない地域だった場所が、自分が実際に暮らしたことのある場所へ変わります。

この経験がIターン就職の入口になる可能性があります。

学生時代に地方企業を知る意味

地方就職を増やすためには、就職活動が本格化してから地方企業を紹介するだけでは十分ではありません。

もっと早い段階から接点をつくることが重要です。

大学1年生や2年生の段階で地方を訪れる。

地域企業を見学する。

経営者の話を聞く。

社員と交流する。

インターンシップに参加する。

こうした経験があれば、就職活動を始めたときに地方企業も選択肢になります。

学生にとってもメリットがあります。

企業名や給与などの情報だけでは、実際の仕事は分かりません。

職場へ行けば、

どのような人が働いているのか

若手社員はどのような仕事をしているのか

どのような技術を持っているのか

地域でどのような役割を担っているのか

といったことが分かります。

就職先を考えるための情報が増えるわけです。

インターンシップが採用の接点になる

地方企業にとってインターンシップは、学生に自社を知ってもらう重要な機会になります。

特に知名度の低い中小企業にとって意味があります。

例えば地方の製造業には、一般消費者にはほとんど知られていなくても、特定分野で高い技術力を持つ企業があります。

企業名だけを見ても学生には仕事内容が分かりません。

しかし実際に工場へ行き、製品を見て、社員から説明を受ければ印象が変わることがあります。

さらに数日間や数週間働けば、職場の雰囲気も分かります。

企業側も学生の考え方や能力を知ることができます。

採用面接だけでは分からない部分を、お互いに確認できるわけです。

インターンシップは学生の職業体験であると同時に、地方企業と学生が互いを知る機会でもあります。

国内留学なら仕事と暮らしを同時に知ることができる

地方就職では、会社だけを見て決めることはできません。

就職すれば、その地域で生活することになるからです。

東京の企業へ就職する場合でも生活環境は重要ですが、知らない地方へ移る場合はさらに重要になります。

国内留学には、仕事と暮らしを同時に経験できるという特徴があります。

昼間は地域企業や自治体で活動する。

帰りに地域のスーパーで買い物をする。

休日には地域の人と交流する。

公共交通を利用する。

地域行事に参加する。

こうした日常生活を経験できます。

その結果、

ここなら暮らせそうだ

自分には合わないかもしれない

という判断ができます。

地方就職では、就職先と生活する地域を同時に選ぶ必要があります。

国内留学は、その両方を事前に体験できる仕組みなのです。

地方企業側も変わる必要がある

地方就職を増やすためには、学生に地方の魅力を伝えるだけでは十分ではありません。

地方企業側にも努力が必要です。

若者が働きたいと思える職場をつくる必要があります。

例えば、

給与水準

休日

長時間労働

柔軟な働き方

人材育成

キャリア形成

デジタル化

などです。

地方だから多少条件が悪くても働いてくれるだろうという考えでは、都市部企業との人材獲得競争に勝つことは難しくなります。

特に国内留学やインターンシップで学生が実際の職場を見るようになれば、企業の実態も伝わります。

学生との接点を増やすことは、地方企業自身が働き方を見直すきっかけにもなります。

地方就職が人口だけでなく地域経済を支える

若者が地方へ就職する意味は、単に人口が一人増えることではありません。

地域企業に人材が入ります。

その人が地域で所得を得ます。

地域で住宅を借りたり購入したりします。

地域の店で買い物をします。

将来家庭を持つ可能性もあります。

さらに都市部の大学で学んだ知識や経験を地域企業へ持ち込むこともできます。

若い人材が増えれば、地域企業の事業承継や新規事業にもつながる可能性があります。

つまり地方就職は、人口政策であると同時に地域産業政策でもあります。

地方企業が人材を確保できなければ、企業そのものが存続できなくなる可能性があるからです。

地方就職を一度の決断にしない

地方就職というと、大学卒業時に地方へ行くか東京に残るかを一度だけ決めるように思えるかもしれません。

しかし、人の移動はもっと長い期間で考えることができます。

大学卒業後はいったん東京で働く。

そこで専門知識や経験を身につける。

30歳や40歳になってから地方へ移る。

こうした選択もあります。

重要なのは、地方との関係を切らないことです。

学生時代に国内留学を経験した地域であれば、何年後かに転職を考えたとき、再び候補になる可能性があります。

地方就職は、新卒採用だけの問題ではありません。

長い人生の中で都市と地方の間を人が移動できる仕組みをつくることが重要なのです。

結論

地方就職とは、東京などの大都市圏ではなく、地方にある企業や自治体などを働く場所として選ぶことです。

地方出身者が故郷へ戻って働くUターン就職もあれば、都市部出身者などが出身地とは異なる地方へ移るIターン就職もあります。

地方就職を増やすうえで大きな課題になるのが、学生が地方企業を知らないことです。

どれだけ魅力的な企業があっても、その存在を知らなければ就職先の候補にはなりません。

そこで重要になるのが、学生時代の接点です。

企業見学やインターンシップ、国内留学などを通じて、学生が地方企業の仕事を実際に知る機会をつくります。

さらに地域で一定期間暮らせば、会社だけでなく、その地域で生活することまで経験できます。

地方就職を増やすために必要なのは、卒業直前の学生へ求人票を届けることだけではありません。

学生がもっと早い段階から地方の仕事と暮らしを知り、自分の将来の選択肢として考えられる環境をつくることです。

国内留学やインターンシップは、地方企業と若者の間にある「知らない」という壁を取り除く入口だと考えると分かりやすいでしょう。

参考

日本経済新聞 2026年8月29日 夕刊 国内留学 地方と若者結ぶ

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