人口減少でも住宅価格が下がるとは限らないのはなぜか 人口ではなく世帯数と供給量を見る理由編

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日本では人口減少が続いています。

人口が減れば住宅を必要とする人も減るため、住宅価格はいずれ下がると考える人もいるでしょう。

確かに人口は住宅需要を考える重要な要素です。

しかし、

人口が減る

住宅需要が同じ割合で減る

住宅価格が下がる

という単純な関係になるとは限りません。

住宅需要を考えるときには、人口だけではなく世帯数を見る必要があります。

さらに住宅価格は需要だけでは決まりません。

新築住宅がどれだけ供給されるのか。

建設費はいくらかかるのか。

どの地域に住宅があるのか。

中古住宅をどれだけ利用できるのか。

こうした供給側の条件も価格を左右します。

人口が減っていても、世帯数がそれほど減らず、住宅供給がそれ以上に減れば、住宅価格が下がらないことがあります。

新築不足時代の住宅市場を理解するには、人口だけを見るのではなく、世帯数と住宅供給を同時に見る必要があるのです。

人口と世帯数は何が違うのか

人口とは、その地域に何人の人が住んでいるのかを示します。

一方、世帯数は生活をともにする単位がいくつあるのかを示します。

住宅需要を考えるときには、この違いが重要です。

例えば100人が4人家族で暮らしている地域を考えます。

単純化すると25世帯です。

必要になる住宅もおおむね25戸です。

ところが同じ100人が2人ずつ暮らせば50世帯になります。

人口は100人のままですが、必要になる住宅は50戸になります。

つまり住宅需要は、

何人いるのか

だけではなく、

何世帯に分かれて暮らしているのか

によって変わります。

人口が減っても世帯数が増えることがある

日本では人口が減少していても、世帯の小規模化によって世帯数がすぐには減らないことがあります。

例えば両親と子ども2人の4人家族が一つの住宅で暮らしていたとします。

その後、子ども2人がそれぞれ独立して一人暮らしを始めれば、

両親の世帯

子ども一人目の世帯

子ども二人目の世帯

という3世帯になります。

家族全体の人数は変わっていなくても、必要になる住宅は増えます。

高齢者の単身世帯や夫婦だけの世帯が増える場合も同じです。

人口だけを見て住宅需要を判断すると、この世帯構造の変化を見落としてしまいます。

単身世帯が増えると住宅需要は残る

世帯の小規模化で特に重要なのが単身世帯です。

一人で暮らしていても、一つの住宅が必要です。

4人家族なら4人で一戸を使いますが、一人暮らしが4人なら最大で4戸必要になります。

そのため人口が減っていても、単身世帯が増えれば住宅需要は簡単には減りません。

しかも必要とされる住宅の種類も変わります。

4人家族なら広い戸建て住宅やファミリー向けマンションが必要になります。

単身世帯なら、より小さな住宅が求められる可能性があります。

つまり人口減少社会では住宅需要が単純に消えるのではなく、必要とされる住宅の形が変化していくのです。

住宅価格は需要だけでは決まらない

住宅価格を考えるときには需要と供給の両方を見る必要があります。

住宅を欲しい人が減れば、一般には価格を下げる方向に働きます。

しかし同時に住宅供給も減っていれば、必ずしも価格は下がりません。

例えば、ある地域で年間1000戸の住宅需要があったとします。

住宅供給も1000戸なら、需要と供給がおおむね釣り合っています。

人口減少によって需要が900戸になったとします。

需要は1割減っています。

ところが建設人材不足などによって新築供給が700戸まで減れば、需要900戸に対して供給700戸になります。

人口は減っているのに住宅が足りません。

この場合、人口減少だけを理由に住宅価格が下がるとは言えません。

新築住宅の供給はすでに減っている

元の記事では、2025年の新設住宅着工戸数は約74万戸で、前年より6.5パーセント減少したとされています。

20年前と比べると約4割少ない水準です。

2025年には省エネルギー基準の強化に伴う特殊要因もあり、2026年には一定の回復がみられています。

それでも長期的には、新築住宅を大量に供給してきた時代から状況が変わっています。

背景には人口動態だけでなく、建設費や建設人材など供給側の問題があります。

住宅需要が減っても、それ以上に供給能力が縮小すれば、新築住宅の希少性は高まる可能性があります。

人口減少と新築住宅価格下落をそのまま結びつけられない理由です。

大工不足が住宅供給を制約する

住宅は工場の商品と違い、価格が上がったからといって短期間で大量生産できるものではありません。

土地が必要です。

資材も必要です。

そして住宅を建てる人が必要です。

元の記事では、大工は2020年までの20年間でほぼ半減して30万人を下回り、2035年前後には15万人を下回る可能性が示されています。

住宅を買いたい人がいても、施工する人がいなければ住宅供給を増やせません。

すると住宅価格が上昇しても、

供給を増やす

価格を下げる

という調整が働きにくくなります。

住宅価格を考えるときには人口だけでなく、住宅を年間何戸建てられるのかという施工能力も見る必要があります。

建設費が下がらなければ住宅価格も下げにくい

住宅価格には土地価格だけでなく建設費が含まれています。

住宅を建てるためには、

木材

鉄鋼

ガラス

断熱材

住宅設備

人件費

運搬費

などが必要です。

人口が減ったからといって、これらの費用が自動的に下がるわけではありません。

職人が不足すれば人件費はむしろ上昇する可能性があります。

資材価格が高ければ、住宅会社は一定以上の価格で販売しなければ採算を確保できません。

需要が弱い地域では、価格を大幅に下げて販売するより、新築住宅そのものを建てなくなる可能性もあります。

その結果、

人口減少

住宅価格下落

ではなく、

人口減少

新築供給減少

という形で調整される場合があります。

空き家が増えても新築価格が下がるとは限らない

日本には2023年時点で約900万戸の空き家があります。

これだけ住宅が余っているなら、新築住宅も安くなるはずだと思うかもしれません。

しかし、空き家と新築住宅は必ずしも同じ市場の商品ではありません。

空き家が、

希望する地域にない

耐震性能に問題がある

老朽化している

大規模な修繕が必要

という状態なら、新築住宅を求める人の代わりの選択肢にならない場合があります。

元の記事では、賃貸用や売却用などを除くその他空き家は約386万戸あり、その約7割は耐震性が不足していたり、破損や腐朽によって修繕が必要だったりするとされています。

住宅の戸数が多いことと、すぐ住める住宅が十分にあることは違います。

立地によって住宅市場は大きく違う

人口減少の影響は全国一律ではありません。

住宅は移動できないからです。

地方に空き家が100万戸あっても、東京で働く人がその住宅から毎日通勤できるとは限りません。

ある地域では人口減少によって住宅需要が大幅に減り、空き家が増えて価格が下がる可能性があります。

一方、

雇用が多い

交通が便利

生活利便性が高い

教育環境が整っている

といった地域には人口や世帯が集まり続ける可能性があります。

そうした地域で住宅供給が不足すれば、全国人口が減っていても住宅価格が高止まりすることがあります。

日本全体の人口と、自分が住宅を買おうとしている地域の需給は分けて考える必要があります。

土地と建物でも価格の動きは違う

戸建て住宅の価格は、大きく土地と建物に分けて考えることができます。

人口減少によって需要が弱い地域では土地価格が下がる可能性があります。

一方、建物を新しく建てるための資材費や人件費が上昇すれば建築費は高くなる可能性があります。

例えば土地価格が、

2000万円から1500万円

へ下がったとしても、

建築費が2500万円から3200万円

へ上がれば、

土地と建物の合計は4500万円から4700万円

になります。

これは単純化した例ですが、土地価格が下がっても新築住宅全体が安くなるとは限らないことが分かります。

人口減少は主に需要側の要因ですが、建設費は供給側の要因です。

両方を見る必要があります。

中古住宅でも状態の良い物件は不足する可能性がある

中古住宅市場でも同じことが起こります。

空き家や中古住宅の数が増えれば、中古住宅価格は全体として下がるように思えます。

しかし購入者が求めるのは、単に住宅であれば何でもよいというわけではありません。

例えば、

駅から近い

耐震性がある

適切に修繕されている

断熱性能が一定程度ある

すぐに入居できる

といった条件の良い中古住宅には需要が集まります。

一方、立地が悪く、大規模修繕が必要な住宅は買い手が見つかりにくくなります。

すると中古住宅市場でも、

良い住宅は高い

利用しにくい住宅は安い

という二極化が進む可能性があります。

中古住宅が増えることと、良質な中古住宅が増えることは同じではありません。

人口減少より世帯数を見る

住宅需要を考えるときには、人口だけでなく世帯数の変化を見る必要があります。

さらに、

単身世帯がどれくらいあるのか

高齢世帯がどれくらいあるのか

どの地域に世帯が集まっているのか

を見ることも重要です。

住宅は人ではなく、基本的には世帯単位で利用されるからです。

人口が1割減っても世帯数がほとんど減らなければ、必要な住宅戸数も同じように1割減るとは限りません。

逆に人口減少以上に世帯数が減少する地域では、住宅需要が急速に弱くなる可能性があります。

全国平均だけではなく地域ごとの世帯動向を見る必要があります。

住宅購入では将来の需要も考える

人口減少社会で住宅を購入するときには、自分が住んでいる期間だけでなく、その後のことも考える必要があります。

住宅を将来売却する可能性があるからです。

例えば30年後に住宅を売却するとします。

そのとき、その地域で住宅を買いたい世帯がどれくらいいるのかが重要になります。

人口や世帯が大幅に減少する地域では、住宅の買い手が少なくなる可能性があります。

一方、人口が減少する日本全体の中でも、世帯や雇用が集まる地域には住宅需要が残る可能性があります。

そのため住宅選びでは、

現在住みたい場所

だけでなく、

将来も誰かが住みたい場所か

という視点が重要になります。

結論

人口が減少しても住宅価格が必ず下がるとは限りません。

その理由の一つは、人口と世帯数が同じようには動かないからです。

住宅は基本的に世帯単位で必要になります。

4人家族が一戸に住む場合と、一人暮らしの4人がそれぞれ住宅を持つ場合では、人口は同じでも必要な住宅戸数が違います。

単身世帯などが増えれば、人口が減少していても住宅需要が簡単には減らないことがあります。

さらに住宅価格は需要だけではなく供給によっても決まります。

新築住宅の着工戸数が減り、大工などの建設人材も減少すれば、住宅を買いたい人が減る以上に住宅供給が減る可能性があります。

資材価格や人件費が高ければ、人口が減っても建設費は下がりません。

また、日本には約900万戸の空き家がありますが、そのすべてが新築住宅の代わりになるわけではありません。

立地が悪かったり、大規模な修繕が必要だったりする住宅もあります。

そのため、

人口が減るから住宅は余る

住宅が余るから住宅価格は下がる

という単純な見方では住宅市場を理解できません。

見るべきなのは、地域ごとの世帯数、住宅需要、新築供給、建設能力、住宅の状態です。

人口減少社会では、すべての住宅が同じように値下がりするのではなく、需要が残る地域と減る地域、良質な住宅と利用しにくい住宅との差が広がる可能性があります。

住宅を購入するときに重要なのは、日本全体の人口が何人減るかだけではありません。

自分が買おうとしている地域で、将来どれだけの世帯が住宅を必要とし、それに対してどれだけの住宅が供給されるのかを見ることです。

人口減少時代だからこそ、住宅価格を考えるときには人口という一つの数字だけではなく、世帯数と供給量を合わせて考える必要があるのです。

参考

日本経済新聞 2026年8月29日 朝刊 新築不足時代の住宅選び 立地や資金計画を見直し

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