国債を個人が購入する方法というと、個人向け国債を思い浮かべる人が多いでしょう。
しかし、銀行や証券会社などの窓口で購入できる国債には、もう一つ「新窓販国債」と呼ばれるものがあります。
新窓販国債には10年、5年、2年があり、いずれも固定金利です。
個人向け国債より高い利回りになる場合があるため、金利だけを見ると新窓販国債の方が魅力的に見えることがあります。
しかし、両者には大きな違いがあります。
個人向け国債には国による中途換金制度がありますが、新窓販国債を満期前に換金する場合には市場価格で売却することになります。
そのため、購入後に市場金利が上昇すると、売却価格が購入価格を下回って元本割れする可能性があります。
同じ日本国債でも、個人向け国債と新窓販国債では商品設計が大きく違うのです。
新窓販国債とは何か
新窓販国債とは、銀行や証券会社などの金融機関を通じて購入できる国債です。
正式には「新型窓口販売方式による国債」と呼ばれます。
国が発行する国債を金融機関の窓口などで個人や法人が購入できる仕組みです。
新窓販国債には、
10年固定利付国債
5年固定利付国債
2年固定利付国債
があります。
いずれも固定金利です。
購入後に市場金利が変化しても、その国債の表面利率そのものが途中で変更されるわけではありません。
この点では個人向け国債の固定5年や固定3年と似ています。
しかし、中途売却の仕組みは大きく異なります。
個人だけでなく法人も購入できる
個人向け国債は、その名称の通り基本的に個人を対象として設計されてきた商品です。
一方、新窓販国債は個人だけを対象とした商品ではありません。
法人や団体も購入できます。
そのため企業や各種法人などが、安全性を重視した資金運用の一つとして利用することもできます。
個人向け国債と新窓販国債は、どちらも日本国が発行する国債ですが、対象となる投資家や商品設計が異なります。
新窓販国債は市場性のある国債
新窓販国債を理解するうえで最も重要なのが、市場性のある国債だという点です。
国債には市場で売買されるものがあります。
一度発行された国債も、満期まで必ず同じ投資家が保有するわけではありません。
途中で別の投資家へ売却できます。
そのときの売買価格は市場環境によって変化します。
株式ほど激しく価格が動くイメージはないかもしれませんが、国債にも市場価格があります。
特に市場金利が大きく変化すると、国債価格も動きます。
新窓販国債もこの価格変動の影響を受けます。
個人向け国債との最大の違いは中途換金
個人向け国債には特殊な中途換金制度があります。
原則として発行から1年が経過すれば、一定の中途換金調整額を差し引いたうえで国による中途換金制度を利用できます。
市場で買い手を探して売却するわけではありません。
そのため市場金利が上昇して一般的な国債価格が下落していても、その市場価格によって元本部分の換金額が決まる仕組みではありません。
一方、新窓販国債には個人向け国債と同じ中途換金制度はありません。
満期前に資金化したければ、購入した金融機関などを通じて市場価格で売却することになります。
ここが両者の非常に大きな違いです。
金利が上昇すると新窓販国債の価格は下がる
例えば新窓販国債の10年物を購入したとします。
分かりやすくするため、額面100万円、固定金利年2パーセントだったとします。
その後、市場金利が上昇し、新しく発行される10年国債の金利が年3パーセントになったとします。
新しい国債を100万円購入すれば、単純化すると年間3万円の利子を受け取れます。
一方、以前購入した国債から受け取れる利子は年間2万円です。
同じ100万円なら、新しい年3パーセントの国債の方が魅力があります。
そこで以前の年2パーセントの国債を途中で売却するには、価格を下げる必要があります。
これが金利上昇による国債価格下落の仕組みです。
100万円の国債が100万円で売れるとは限らない
新窓販国債について特に注意したいのが、額面と市場価格の違いです。
例えば額面100万円の国債を保有しているとします。
額面100万円というのは、満期に原則として100万円が償還されるという意味です。
途中で100万円で売却できることを保証しているわけではありません。
市場金利の上昇によって価格が下落すれば、
98万円
95万円
90万円
などになる可能性があります。
その時点で売却すれば、購入価格によっては損失が発生します。
「国債だから元本割れしない」と考えるのは適切ではありません。
市場で売却する国債には価格変動リスクがあります。
満期まで保有すれば考え方は変わる
ただし、新窓販国債の市場価格が途中で下落しても、必ず損失になるわけではありません。
満期まで保有する場合です。
例えば額面100万円の国債の市場価格が一時的に90万円まで下落したとしても、その時点で売却しなければ価格下落による損失は確定しません。
国が約束通り元本を償還すれば、満期には額面100万円が返ってきます。
その間、決められた利子も受け取ります。
したがって新窓販国債では、
満期まで保有できるのか
途中で売却する可能性があるのか
によって価格変動リスクの意味が大きく変わります。
長期の10年物ほど価格変動に注意する
新窓販国債には10年、5年、2年があります。
一般的には満期までの期間が長い債券ほど、市場金利の変化による価格変動が大きくなります。
例えば購入直後に市場金利が上昇したとします。
2年物であれば比較的短期間で満期を迎えます。
一方、10年物では低い固定金利を長期間受け取り続けることになります。
そのため市場で売却するときには、より大きな価格調整が必要になる可能性があります。
長期債ほど金利変動リスクが大きいといわれる理由です。
なぜ個人向け国債より金利が高くなることがあるのか
新窓販国債の魅力の一つが、個人向け国債より高い利回りになる場合があることです。
これは両者の商品設計の違いと関係しています。
個人向け国債には、発行後1年経過後の中途換金制度があります。
市場金利が上昇して国債価格が下落していても、市場価格で売却する必要がありません。
変動10年なら半年ごとに適用利率も見直されます。
投資家にとって有利な仕組みが用意されています。
一方、新窓販国債は市場性のある国債です。
途中売却では市場価格の影響を受けます。
つまり、より高い利回りを得られる可能性がある代わりに、途中売却時の価格変動リスクを投資家が負担します。
金融商品では、収益性だけではなくリスクとの組み合わせを見ることが重要です。
表面利率だけでは実際の利回りは分からない
新窓販国債を見るときには、表面利率だけで判断できない点にも注意が必要です。
国債は必ず額面100円につき100円で販売されるとは限りません。
例えば表面利率が年2.7パーセントでも、額面100円の国債を99円台で購入できる場合があります。
満期には額面100円で償還されるため、
保有期間中に受け取る利子
購入価格と償還価格との差
の両方が投資収益になります。
そのため実際の投資判断では、表面利率だけではなく応募者利回りを見ることが重要になります。
金利が下がると新窓販国債の価格は上昇する
価格変動は必ずしもデメリットだけではありません。
購入後に市場金利が低下した場合には、保有している固定金利国債の価値が高まります。
例えば年3パーセントの10年国債を購入したあと、新しく発行される10年国債の金利が年1パーセントまで低下したとします。
新しい国債より高い利子を受け取れる既発債の魅力が高まります。
そのため市場価格が購入価格を上回る可能性があります。
その時点で売却すれば、利子だけでなく売却益を得られる場合があります。
つまり新窓販国債には、
金利上昇なら価格下落
金利低下なら価格上昇
という債券本来の価格変動があります。
金利ピークなら固定金利が有利になる可能性がある
長期の固定金利商品を購入する一つの考え方が、金利が高いところで固定することです。
例えば現在の10年金利が今後のピークで、これから低下すると考えるなら、高い固定金利を10年間確保するメリットがあります。
さらに市場金利が低下すれば、保有している国債価格が上昇する可能性もあります。
一方、まだ金利上昇の途中であれば、購入後にさらに高い金利の国債が発行される可能性があります。
その場合、すでに購入した固定金利国債の市場価格は下落します。
そのため長期固定金利商品では「現在の金利水準が高いか」だけでなく、「これから金利がどちらへ動くか」が重要になります。
個人向け国債とどちらを選ぶのか
個人向け国債と新窓販国債のどちらが優れていると一概に決めることはできません。
例えば、
満期まで確実に使わない資金である
現在の固定金利を長期間確保したい
今後は金利が低下すると考えている
という場合には、新窓販国債の固定金利が魅力になる可能性があります。
一方、
数年後に使う可能性がある
途中で資金化する可能性がある
今後も金利が上昇する可能性を考えている
という場合には、個人向け国債の変動10年などが使いやすくなります。
商品名ではなく、資金を使う時期と金利変動リスクへの考え方から選ぶことが重要です。
結論
新窓販国債とは、銀行や証券会社などを通じて購入できる市場性のある国債です。
10年、5年、2年があり、いずれも固定金利型です。
個人向け国債と同じ日本国が発行する国債ですが、最大の違いは満期前に資金化するときの仕組みにあります。
個人向け国債は、原則として発行から1年経過後であれば国による中途換金制度を利用できます。
一方、新窓販国債を満期前に換金する場合には市場価格で売却します。
そのため購入後に市場金利が上昇すると債券価格が下落し、購入価格を下回る価格で売却しなければならない可能性があります。
反対に市場金利が低下すれば、価格が上昇して売却益が生じる場合もあります。
新窓販国債は個人向け国債より高い利回りになることがありますが、その数字だけで有利不利を判断することはできません。
高い利回りの裏側には、途中売却時の価格変動リスクがあります。
国債を選ぶときには「誰が発行しているか」だけではなく、「満期前にお金が必要になったとき、どのような価格で換金することになるのか」まで確認することが重要です。
参考
日本経済新聞 2026年8月29日朝刊 <ステップアップ>「変動10年」金利上昇に強く 中途売却でも元本確保