転職で年収が1割上がるとはどういうことか 昇給を待つより大きく給料が動く仕組み編

人生100年時代
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会社員の給料は、毎年少しずつ上がっていくものだと考えられがちです。

実際、多くの会社では定期昇給や人事評価によって給与が少しずつ上がります。

しかし転職すると、1回の転職で年収が1割以上増えることがあります。

例えば年収500万円なら550万円、600万円なら660万円、800万円なら880万円です。

毎年数%ずつ昇給する場合と比べると、かなり大きな変化です。

2026年4月から6月にインディードリクルートパートナーズのサービスを通じて転職した人では、転職後に賃金が1割以上増えた人の割合が45.6%に達しました。

なぜ転職すると、社内で昇給を待つより大きく給料が動くのでしょうか。

そこには、会社の内部で決まる給与と、転職市場で決まる給与の仕組みの違いがあります。

社内昇給は少しずつ進むことが多い

現在の会社で給料が上がる場合、通常は会社の人事制度に沿って昇給します。

例えば毎年の人事評価によって基本給が上がったり、昇格して役職手当が増えたりします。

会社によっては定期昇給があり、年齢や勤続年数に応じて給与が上がる場合もあります。

この仕組みでは、給与は連続的に少しずつ変化します。

年収600万円の人が翌年630万円、その次の年に650万円というように上がっていくイメージです。

もちろん大きな昇格があれば一気に給与が上がることもあります。

それでも通常は、会社全体の給与体系とのバランスを考えながら昇給額が決められます。

一人だけ突然年収を200万円上げると、同じ等級の社員との給与差が大きくなります。

そのため社内では、本人の市場価値が急上昇しても給与がすぐには追いつかないことがあります。

転職では給与体系が一度リセットされる

転職すると、この社内給与体系の制約から一度離れます。

転職先の会社は、現在の会社で何年間働いてきたかだけを見て給与を決めるわけではありません。

自社がその人を採用するために、いくら払う必要があるのかを考えます。

例えば現在年収600万円の人がいるとします。

転職先企業が、その人の経験に700万円の価値があると判断すれば、700万円を提示することがあります。

現在の会社で600万円から700万円へ上げようとすると、100万円の昇給になります。

社内ではかなり大きな変更です。

しかし転職先では新しく給与を決めるため、最初から700万円という条件を設定できます。

これが転職によって給与が大きく動きやすい理由です。

1割増でも金額にすると大きい

1割という数字だけを見ると、それほど大きく感じないかもしれません。

しかし年収で考えると違います。

年収400万円なら40万円増えて440万円です。

年収600万円なら60万円増えて660万円です。

年収800万円なら80万円増えて880万円です。

年収1000万円なら100万円増えて1100万円です。

さらに、この差が翌年以降も続けば影響は大きくなります。

例えば年収600万円から660万円へ転職した場合、年間の差は60万円です。

5年間同じ差が続けば、単純計算では300万円になります。

10年間なら600万円です。

もちろん実際には、その後の昇給や賞与、退職金などによって変わります。

それでも転職時の年収差は、その年だけではなく長期間の生涯所得にも影響する可能性があります。

転職時には年収交渉が行われる

転職では、企業が最初から一方的に給与を決めるとは限りません。

採用過程で希望年収や現在の年収を確認し、条件を調整することがあります。

企業側は、この人を採用するためにはどの程度の条件が必要なのかを考えます。

求職者側も、自分の経験や実績に見合う年収を提示します。

例えばA社が年収700万円を提示したとします。

求職者が現在680万円を受け取っていて、別の企業から750万円を提示されているなら、条件を引き上げてもらえる可能性があります。

逆に企業側が、この職務では700万円以上を払えないと判断すれば交渉は成立しません。

転職時の給与は、会社内部の昇給というより、企業と人材の間で行われる価格交渉に近い面があります。

求人企業は最初から年収レンジを設定している

中途採用の求人には、想定年収が示されていることがあります。

例えば年収600万円から900万円というように幅を持たせます。

この幅は、その仕事に対して企業がどの程度の給与を払えるかを示しています。

同じ求人でも、経験が浅い人なら650万円、豊富な経験を持つ人なら850万円になることがあります。

つまり転職市場では、仕事そのものにある程度の市場価格が付いています。

現在の会社で500万円を受け取っている人でも、その仕事の市場価格が700万円なら、転職によって大幅に年収が上がる可能性があります。

反対に現在の会社で高い給与を受け取っていても、転職市場の求人年収が低ければ年収が下がることもあります。

転職すれば必ず年収が上がるわけではない理由もここにあります。

人手不足になると提示年収が上がる

企業が提示する年収にも需要と供給が影響します。

同じ能力を持つ人がたくさんいれば、企業は高い給与を提示しなくても採用できます。

しかし必要な人材が不足すると状況が変わります。

例えば複数の企業がAI人材を採用したいのに、経験者が少ないとします。

A社が700万円を提示しても、B社が800万円、C社が900万円を提示すれば、人材はより条件の良い会社へ移る可能性があります。

そこでA社も提示年収を引き上げる必要があります。

人手不足は単に求人件数を増やすだけではありません。

企業間で人材獲得競争を起こし、給与水準そのものを押し上げます。

これが転職者の年収上昇につながります。

特に専門職では給与が動きやすい

すべての職種で同じように年収が上がっているわけではありません。

2026年4月から6月の調査では、転職後に賃金が1割以上増えた割合はIT系エンジニアで57.5%でした。

事務系専門職でも52.0%です。

専門的な能力を持つ人は、企業側が必要としていても簡単には増やせません。

例えば高度なIT技術を持つ人を短期間で育成することは困難です。

経営企画、法務、M&A、人事制度設計なども、実務経験が必要になります。

そのため企業がすぐに必要とする場合、経験者を転職市場から採用することになります。

限られた人材を企業同士で取り合えば、提示年収が上がりやすくなります。

転職は市場価格への修正機能を持つ

長期間同じ会社で働いていると、給与が市場価格から離れることがあります。

例えば10年前から同じ仕事をしている人がいるとします。

その間に、その仕事への需要が急増して市場年収が500万円から700万円へ上がったとします。

しかし現在の会社の給与制度では毎年2%程度しか昇給しなければ、本人の給与は市場価格に追いつきません。

この人が転職すると、新しい会社では現在の市場価格に近い給与が提示される可能性があります。

転職には、社内給与と外部市場の価格差を修正する働きがあると考えることができます。

逆に転職で年収が下がることもある

転職によって給料が上がる人が増えているからといって、誰でも転職すれば年収が上がるわけではありません。

現在の会社で市場価格より高い給与を受け取っている人もいます。

長年の勤続によって給与が高くなっている人。

会社独自の役職手当を受け取っている人。

利益率の高い会社に勤務している人。

こうした場合、他社へ転職すると同じ給与を提示してもらえないことがあります。

また未経験の業界へ転職すれば、経験が十分に評価されず給与が下がる場合もあります。

転職による年収変化は、現在の給与と転職市場での評価との差によって決まります。

年収だけで転職を判断することにも注意が必要

転職では年収が分かりやすい数字なので注目されます。

しかし年収だけで判断すると見落とすものがあります。

例えば年収が10%上がっても、労働時間が大幅に長くなれば時間当たりの給与はそれほど増えていないかもしれません。

退職金制度や企業年金、福利厚生が変わることもあります。

勤務地や転勤の可能性、在宅勤務制度なども重要です。

さらに高い給与には高い成果責任が伴うことがあります。

特に即戦力採用では、高い年収を払う代わりに短期間で成果を求められる場合があります。

したがって転職による年収増は大きなメリットですが、仕事内容や労働条件を含めて考える必要があります。

昇給と転職では給料の決まり方が違う

社内昇給と転職による年収上昇の最大の違いは、給与を決める市場です。

社内昇給では、会社内部の給与制度によって決まります。

転職では、複数の企業が存在する外部の人材市場によって決まります。

社内では同じ等級の社員とのバランスを考える必要があります。

しかし転職市場では、その人を必要とする会社がいくら払うかによって条件が変わります。

人材不足が強い職種ほど、この外部市場の価格が急速に上がることがあります。

その結果、毎年の昇給では何年もかかる年収増を、転職によって一度に実現する人が出てくるのです。

結論

転職で年収が1割上がるということは、単に給与が少し増えるという話ではありません。

年収600万円なら60万円、800万円なら80万円、1000万円なら100万円の増加になります。

この差が長期間続けば、生涯所得にも大きな影響を与える可能性があります。

社内の昇給では、会社の給与制度や他の社員とのバランスがあるため、給与は通常少しずつ上がります。

一方、転職では給与体系が一度リセットされ、新しい会社がその時点の市場価値を基準に年収を提示します。

さらに人材不足が強まれば、企業同士が人材を取り合うため提示年収も上昇します。

このため、社内で何年も昇給を待つより、転職によって一度に大きく年収が上がるケースが生まれます。

ただし転職すれば必ず給料が上がるわけではありません。

現在の給与より市場価値が高ければ上がりやすく、逆に現在の会社で市場価格以上の給与を受け取っていれば下がる可能性もあります。

転職による年収変化を見ることは、自分の能力が現在の会社の中でいくらと評価されているのかだけではなく、外部の労働市場ではいくらで評価されているのかを知ることでもあるのです。

参考

日本経済新聞 2026年8月28日朝刊 転職者の半数、給料1割以上増

日本経済新聞 2026年8月28日朝刊 転職市場、年収引き上げ続く

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