地方の老人ホームへ移住する老後とは 住居費を下げて介護費用を確保する方法編

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東京都内の老人ホームが高額化するなか、老後の住まいを地方へ移すという選択肢があります。

東京都内の有料老人ホームでは、2026年1月時点の入居時費用の中央値が1001万円となりました。

一方、地域によって老人ホームの費用には大きな差があります。

現役時代は仕事や子どもの学校などの事情から都市部に住む必要があっても、退職後は通勤する必要がありません。

そこで、住居費の高い都市部から比較的費用の低い地域へ移り、浮いたお金を介護や医療、長生きした場合の生活費として残すという考え方が出てきます。

ただし、地方の老人ホームが安いという理由だけで移住を決めることには注意が必要です。

医療機関へのアクセスや家族との距離、介護人材の確保など、費用以外にも確認すべきことがあります。

地方移住で老人ホーム費用を抑える

老人ホームの料金は全国一律ではありません。

地価や建築費、人件費、施設の需給などが地域によって違うためです。

特に土地の価格は、施設運営のコストに影響します。

老人ホームには居室だけではなく、食堂や浴室、廊下、介護設備など広いスペースが必要です。

土地や建物の取得費が高い都市部では、そのコストが入居者の負担にも反映されやすくなります。

地方では土地代などを抑えられる地域があるため、同程度の広さでも都市部より低い料金を設定できる施設があります。

老後に通勤する必要がなくなれば、住居費の高い都市部に住み続ける必要性は現役時代より小さくなる場合があります。

費用差は長期間になるほど大きくなる

老人ホームの地域差を考えるときには、入居一時金だけではなく月額費用も重要です。

例えば都市部の老人ホームが月30万円、地方の老人ホームが月20万円だったとします。

毎月の差額は10万円です。

年間では120万円になります。

5年間なら600万円です。

10年間なら1200万円です。

さらに入居一時金にも数百万円の差があれば、老人ホームでの生活全体では非常に大きな差になります。

老人ホームは数日間利用する宿泊施設ではありません。

長期間生活する可能性があるため、毎月の小さな差が老後資金の寿命を大きく左右します。

浮いたお金を介護や医療に残せる

地方の老人ホームへ移る目的は、単純に住居費を安くすることだけではありません。

重要なのは、そこで浮いたお金を将来必要になる別の支出に備えて残せることです。

高齢になるほど医療費が増える可能性があります。

要介護度が上がれば、介護に関連する負担が増えることもあります。

老人ホームの月額料金そのものが将来値上げされる可能性もあります。

さらに、何歳まで生きるかは分かりません。

住居費を抑えることができれば、こうした予想できない支出に対応するための金融資産を多く残せます。

老後の住居費を下げることは、長生きするための資金を確保することにもつながります。

自宅売却と地方移住を組み合わせる方法もある

都市部に持ち家がある場合には、自宅売却と地方の老人ホームへの移住を組み合わせる方法もあります。

例えば東京の自宅を売却し、その売却代金を老人ホームの入居費用やその後の生活費に充てます。

さらに、東京より費用の低い地域の老人ホームを選べば、売却代金を長期間残せる可能性があります。

自宅という不動産資産を現金化し、同時に毎月の住居費を引き下げるという考え方です。

ただし、自宅の売却価格がそのまま手元に残るわけではありません。

仲介手数料や税金、住宅ローンの残債などを考慮する必要があります。

実際に老人ホーム費用として使える金額を確認しておくことが重要です。

地方ならどこでも安いわけではない

地方の老人ホームなら必ず東京より安いというわけではありません。

日本経済新聞の記事によると、2026年1月時点で有料老人ホームの入居時費用の中央値が最も高かったのは京都府で1391万円でした。

東京都の1001万円を上回っています。

兵庫県も990万円でした。

つまり、東京を離れれば自動的に費用が下がるわけではありません。

観光地や都市部など、土地価格や施設需要が高い地域では老人ホームの費用も高くなることがあります。

都道府県名だけで判断するのではなく、実際の施設ごとの料金を比較する必要があります。

医療機関へのアクセスを確認する

地方移住で特に重要なのが医療です。

高齢になるほど病院や診療所を利用する機会が増える可能性があります。

持病がある人なら定期的な通院が必要です。

老人ホームの近くに必要な診療科の医療機関があるかを確認する必要があります。

救急搬送が必要になった場合、どの病院へ運ばれるのかも重要です。

施設と協力医療機関との距離や連携体制も確認したいところです。

都市部では複数の大病院から選べても、地方では医療機関が限られる地域があります。

老人ホームそのものが快適でも、必要な医療を受けるために長時間移動しなければならないのであれば、高齢者には大きな負担になります。

介護人材が確保されているかも重要

地方では土地や建物の費用を抑えられる一方、別の問題もあります。

介護人材の不足です。

人口減少が進む地域では、介護施設で働く職員を確保することが難しくなる可能性があります。

老人ホームは建物だけでは運営できません。

介護職員。

看護職員。

調理スタッフ。

清掃スタッフ。

さまざまな人が必要です。

料金が安くても、必要な人員を継続的に確保できなければサービスを維持することが難しくなります。

地方の施設を選ぶ場合には、料金だけではなく職員体制や運営法人の安定性も確認する必要があります。

家族から遠くなるデメリットがある

地方移住で最も大きな問題の一つが家族との距離です。

老人ホームへ入居しても、家族との関係がなくなるわけではありません。

面会があります。

入院した場合の対応があります。

施設との相談や手続きもあります。

本人が亡くなった場合には家族が現地へ行かなければならないこともあります。

東京に住む家族から何時間もかかる地域へ移住すれば、面会の回数が減る可能性があります。

交通費や宿泊費も必要になります。

老人ホームそのものの費用は下がっても、家族側の負担が増える場合があります。

本人にとって知らない土地で暮らす負担もある

高齢になってから、まったく知らない地域へ移住することには心理的な負担もあります。

長年暮らしてきた街を離れることになります。

友人や知人と会いにくくなります。

かかりつけ医も変わります。

土地勘もありません。

特に認知症がある人にとって、生活環境の大きな変化が負担になる場合があります。

費用だけを見れば地方移住が合理的でも、本人がそこで安心して暮らせるとは限りません。

終のすみかは、最も安い場所を探すだけではなく、本人が安心して暮らせる場所を探すことが重要です。

出身地へ戻るという選択肢もある

地方移住の中でも比較的検討しやすいのが、本人や配偶者の出身地へ戻る方法です。

まったく知らない土地ではありません。

親族が暮らしている場合もあります。

昔から知っている地域であれば、心理的な抵抗が小さいこともあります。

地方に実家や土地が残っているケースもあります。

東京で長年働いてきた人が、退職後や介護が必要になった段階で故郷へ戻るという選択肢です。

ただし、若い頃と現在では地域の状況が大きく変わっている可能性があります。

医療や交通、買い物などの環境を改めて確認する必要があります。

家族が通える距離という考え方もある

地方移住というと、東京から遠く離れた地域を想像しがちです。

しかし、必ずしも数百キロ離れる必要はありません。

東京から鉄道で1時間から2時間程度の地域まで範囲を広げるだけでも、施設の選択肢や料金が変わる可能性があります。

重要なのは都道府県ではなく、家族が実際に通える距離です。

新幹線や高速道路のアクセスが良ければ、距離が多少離れていても移動しやすい場合があります。

反対に距離は近くても公共交通機関が少なければ、家族の負担が大きくなることがあります。

老人ホームの所在地は地図上の距離だけでなく、実際の移動時間で考えることが重要です。

費用と生活の質を一緒に比較する

地方の老人ホームを検討するときには、費用だけの比較表を作るのでは十分ではありません。

入居一時金。

月額費用。

介護体制。

医療体制。

職員配置。

家族からの移動時間。

周辺環境。

看取りへの対応。

こうした条件を一緒に比較する必要があります。

例えば月5万円安くても、家族が面会するたびに高額な交通費が必要なら、家族全体ではそれほど節約にならない場合があります。

一方、費用が大幅に安く、介護や医療体制も十分で、家族も通いやすい施設が見つかれば、地方移住には大きなメリットがあります。

結論

地方の老人ホームへ移住することは、高額化する都市部の老人ホーム費用を抑え、老後資金を長持ちさせる方法の一つです。

毎月の費用が10万円違えば、10年間では1200万円の差になります。

さらに入居一時金にも差があれば、老後資金への影響は一段と大きくなります。

浮いた資金を介護や医療、長生きした場合の生活費として残すことができます。

ただし、地方ならどこでも安いわけではありません。

医療機関へのアクセス。

介護人材。

家族との距離。

本人の生活環境。

こうした問題もあります。

老人ホームは単なる住居ではありません。

高齢になり、介護や医療を必要としながら人生の最後まで暮らす可能性のある場所です。

だからこそ、最も安い地域を探すのではなく、費用を抑えながら本人が安心して暮らせる地域を探す必要があります。

東京で働き、東京で暮らしてきたからといって、終のすみかまで東京である必要はありません。

住む場所を柔軟に考えること自体が、長寿時代の老後資金を守る一つの方法になっています。

参考

日本経済新聞 2026年8月19日朝刊 終のすみかの現実(上)老人ホーム 手届かぬ東京 入居費1000万円、4割上昇

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