老人ホームはいくらかかるのか 東京で終のすみかが1000万円時代に入った理由編

FP
緑 赤 セミナー ブログアイキャッチ - 1

老後は自宅で暮らし続けるのか、それとも老人ホームに入るのか。

高齢期の住まいを考えるうえで、老人ホームは重要な選択肢です。しかし、都市部ではその費用が大きく上昇し、十分な老後資金がなければ希望する施設に入ることが難しくなっています。

日本経済新聞と高齢者施設検索サイトを運営するライフルシニアの共同調査によると、東京都内の有料老人ホームの入居時費用の中央値は、2026年1月時点で1001万円となりました。

2018年1月と比べると39%の上昇です。

さらに、入居後に必要となる月額費用も約30万円まで上昇しています。

老人ホームを選ぶときには、入居時にいくら必要なのかだけではなく、その後何年間暮らす可能性があるのかまで考えて資金計画を立てる必要があります。

有料老人ホームとは何か

有料老人ホームとは、高齢者に住居を提供し、食事や介護、家事、健康管理などのサービスを提供する施設です。

代表的なものとして、介護付き有料老人ホームと住宅型有料老人ホームがあります。

介護付き有料老人ホームでは、施設の職員などから介護サービスを受けながら生活します。

一方、住宅型有料老人ホームでは、必要に応じて外部の介護サービスなどを利用するのが一般的です。

全国の有料老人ホームは2024年に1万7246施設となり、2000年と比べて49倍に増えています。

単身高齢者の増加や家族による介護の難しさなどを背景として、老人ホームが終のすみかとして果たす役割は大きくなっています。

入居時費用とは何か

有料老人ホームでは、入居するときにまとまった金額を支払う料金体系があります。

これが入居時費用です。

家賃の一部を前払いする前払金や、施設を利用するための費用などが含まれます。

東京都内の有料老人ホームでは、この入居時費用の中央値が2026年1月時点で1001万円となりました。

2018年1月時点から39%上昇しています。

ただし、すべての老人ホームで1000万円を最初に支払わなければならないわけではありません。

入居時費用を抑える代わりに月額費用を高く設定するプランや、入居時費用を設けない施設もあります。

そのため老人ホームの費用を比較するときには、入居時費用だけを見るのではなく、月額費用と合わせて考えることが重要です。

月額費用も約30万円まで上昇している

老人ホームでは入居後も毎月費用が発生します。

家賃のほか、管理費、食費、水道光熱費などが必要になります。

東京都内では、入居時費用があるプランの月額費用の中央値が2026年1月時点で29万7820円となりました。

2018年1月と比べて15%増えています。

老人ホームを運営する側も、食材費や光熱費、人件費などの上昇に直面しています。

そのため、入居した時点の料金がその後もずっと続くとは限りません。

老後の資金計画では、現在の月額費用だけではなく、将来の値上げについても考えておく必要があります。

5年間暮らすと約2800万円かかる

老人ホームの費用で特に重要なのは、入居時費用よりも総額です。

東京都内で入居時費用と月額費用がいずれも中央値の有料老人ホームに5年間暮らした場合を考えてみます。

入居時費用は1001万円です。

月額費用29万7820円を60カ月支払うと約1787万円になります。

両者を合わせると、単純計算で2787万9200円です。

約2800万円になります。

しかも、これは5年間の場合です。

入居期間が10年になれば、月額費用だけでも現在の水準で約3574万円になります。

老人ホームの資金計画では、入居するときのお金を用意できるかだけではなく、その後の生活費を継続的に支払えるかを考える必要があります。

年金だけでは不足する可能性が高い

老人ホームの費用を考えるとき、年金との比較も重要です。

記事によると、国民年金の平均受給月額は約6万円です。

東京都内の有料老人ホームの月額費用の中央値約30万円と比べると、毎月20万円を超える差があります。

仮に月23万円不足するとすれば、年間では276万円です。

5年間なら1380万円になります。

つまり、入居時費用を預貯金などから支払えたとしても、その後の月額費用を年金だけでまかなえるとは限りません。

厚生年金を受け取る人であっても、施設の料金や年金額によっては毎月資産を取り崩す必要があります。

老後資金を考えるときには、生活費だけではなく介護や住み替えに必要となる資金を別に考えておくことも重要になります。

なぜ東京の老人ホームは高くなるのか

老人ホームの費用が上昇する背景には、複数の要因があります。

大きな要因の一つが土地や建物の価格です。

老人ホームには居室だけではなく、食堂や浴室、廊下、介護設備など一定のスペースが必要です。

地価が高い都市部では、施設を取得したり借りたりするためのコストが高くなります。

さらに、人件費の上昇も影響します。

老人ホームでは介護職員や看護職員、調理スタッフなど多くの人が働いています。

人手不足が続けば、人材を確保するための賃金も上げなければなりません。

加えて、食材費、電気代、ガス代なども上昇しています。

こうしたコストが積み重なることで、入居時費用や月額費用の上昇につながります。

老人ホームにも大きな地域差がある

老人ホームの費用は全国一律ではありません。

地域によって大きな差があります。

記事によると、2026年1月時点の入居時費用の中央値が最も高かったのは京都府で1391万円でした。

東京都は1001万円、兵庫県は990万円です。

一方、埼玉県は330万円でした。

東京都の約3分の1です。

東京で暮らしてきたからといって、必ず東京の老人ホームに入らなければならないわけではありません。

実際、ライフルシニアによると、2026年上半期に東京都内在住者が問い合わせた施設のうち、東京都内は6割にとどまりました。

残り4割は神奈川県、千葉県、埼玉県などを含む東京都外でした。

老人ホーム選びでも、住む場所を変えることで費用を抑えるという考え方が現実的な選択肢になりつつあります。

老人ホーム選びは家族のお金の問題でもある

介護費用は高齢者本人だけの問題とは限りません。

本人の年金や預貯金だけでは老人ホームの費用を支払えなければ、子どもなど家族が援助するケースも考えられます。

しかし、50代前後の子ども世代も自分自身の老後資金を準備しなければならない時期です。

住宅ローンや教育費を抱えている家庭もあります。

親の介護費用を長期間負担すれば、子どもの老後資金まで減少する可能性があります。

だからこそ、親の介護が必要になってから初めてお金について話し合うのでは遅い場合があります。

親の年金はいくらなのか。

預貯金はいくらあるのか。

自宅を売却する可能性はあるのか。

どの程度の老人ホームを希望するのか。

こうした問題を元気なうちから家族で共有しておくことが重要です。

結論

老人ホームは、高齢者にとって重要な終のすみかの一つです。

しかし、東京都内では有料老人ホームの入居時費用の中央値が1000万円を超え、月額費用も約30万円まで上昇しています。

現在の費用水準で5年間暮らすだけでも、単純計算では約2800万円になります。

さらに、物価や人件費が上昇すれば、入居後に月額費用が値上げされる可能性もあります。

これからの老後資金づくりでは、日常生活に必要なお金だけを準備すればよいわけではありません。

自宅で暮らし続ける場合。

東京の老人ホームに入る場合。

郊外や地方の老人ホームに移る場合。

それぞれについて必要となる資金を考えておく必要があります。

終のすみかを選ぶことは、住まいを選ぶことだけではありません。

人生の最後まで、どこで、どのように暮らし、その費用をどのように支えるのか。

老人ホームの値上がりは、老後の住まいと資産形成を一体で考えなければならない時代になったことを示しています。

参考

日本経済新聞 2026年8月19日朝刊 終のすみかの現実(上)老人ホーム 手届かぬ東京 入居費1000万円、4割上昇

タイトルとURLをコピーしました