ふるさと納税をするとき、多くの人は自治体のホームページから直接申し込むのではなく、民間の仲介サイトを利用しています。
全国の返礼品を検索し、寄付額や地域、商品の種類などで比較でき、そのまま寄付の申し込みや決済までできるため非常に便利です。
しかし、この便利な仕組みは無料ではありません。
自治体は仲介サイトの運営事業者などに手数料を支払っています。
日本経済新聞の記事によると、総務省は2026年5月、サイト運営事業者に対し、現在11.5%とされる手数料率の引き下げを要請しました。
ふるさと納税の経費規制が厳しくなるなか、この仲介サイト手数料をどこまで減らせるかが制度改革の大きな焦点になっています。
仲介サイトは何をしているのか
ふるさと納税の仲介サイトは、単に返礼品を掲載しているだけではありません。
寄付者にとっては、全国の自治体や返礼品を一つのサイト上で探すことができる巨大な検索サービスでもあります。
例えば、
地域から探す
寄付金額から探す
肉や魚、米などの返礼品から探す
人気ランキングから探す
といった使い方ができます。
さらに、寄付の申し込みや決済なども一つのサイトで行えます。
自治体側から見ると、自分たちだけでは接点を持つことが難しい全国の寄付者に返礼品を紹介してもらえるわけです。
仲介サイトは、ふるさと納税市場における巨大な集客装置として機能しているのです。
自治体はなぜ手数料を払うのか
自治体が仲介サイトを利用する最大の理由は、集客力です。
仮に自治体が自分のホームページだけで寄付を募集したとします。
その自治体をもともと知っている人や、特定の返礼品を探している人なら訪問してくれるかもしれません。
しかし、全国には多数の自治体があります。
そのなかから一つの自治体のホームページを見つけてもらうことは簡単ではありません。
一方、大手の仲介サイトには、最初からふるさと納税をしたい多くの利用者が集まっています。
自治体は一定の手数料を支払う代わりに、その巨大な集客基盤を利用できます。
インターネット通販で事業者が大型ショッピングモールに出店する構造と似ています。
手数料が1割ならどの程度の負担になるのか
仮に仲介サイト関連の手数料が寄付額の約1割だとすると、その負担は小さくありません。
例えば1万円の寄付なら約1000円です。
10万円なら約1万円。
自治体全体で10億円の寄付を集めれば約1億円になります。
寄付額が100億円規模なら約10億円です。
個々の寄付では小さく見えても、ふるさと納税全体では非常に大きな金額になります。
2025年度の全国の寄付額は1兆3314億円でした。
ふるさと納税が1兆円を超える巨大市場になったことで、数%の手数料率の違いでも、制度全体では大きな金額になるわけです。
返礼品の3割とは別に手数料がかかる
ここで重要なのは、仲介サイトへの手数料が返礼品の調達費とは別に発生することです。
ふるさと納税では、返礼品の調達費を寄付額の3割以下とする基準があります。
1万円の寄付なら、返礼品の調達費は原則として3000円以下です。
しかし、自治体の支出はこれだけではありません。
例えば、
返礼品調達費
送料
仲介サイト関連の手数料
決済費用
寄付金受領証明書などの事務費
といった費用が発生します。
返礼品の調達費が3割程度あり、さらに仲介サイト関連費用が1割程度あれば、それだけで寄付額の4割近くになります。
ここに送料などが加わるため、募集経費全体が寄付額の5割近くになる自治体が出てきます。
経費率規制の強化で手数料が問題になる理由
これまで、ふるさと納税の募集経費は寄付額の50%以下とすることが重要な基準でした。
ところが、2026年10月以降は、自治体に残る寄附金活用可能額を段階的に増やしていく方向となっています。
最終的には寄付額の60%以上を地域のために活用できる状態にすることが求められます。
裏返せば、募集経費を40%以下に抑える必要があります。
ここで自治体は難しい選択を迫られます。
返礼品の調達費を減らせば、返礼品事業者の収入や寄付者にとっての魅力に影響します。
送料は物流費や人件費の上昇もあり、簡単には削減できません。
自治体職員の事務コストにも限界があります。
そのため、仲介サイトへの手数料が大きな削減対象として注目されるわけです。
総務省が手数料引き下げを求める理由
総務省は2026年5月、ふるさと納税の仲介サイト事業者に手数料率の引き下げを要請しました。
記事では現在の手数料率は11.5%とされています。
国から見れば、自治体に残る金額を増やすのであれば、自治体だけに経費削減を求めるのではなく、制度を支える民間事業者のコストについても見直す必要があります。
特に仲介サイトは、ふるさと納税市場の拡大によって大きな役割を担うようになりました。
市場規模が小さかった時代と、1兆円を超えた現在では、同じ手数料率が適切なのかという議論も生まれます。
寄付額が増えれば、同じ料率でも手数料収入の金額は大きくなるためです。
手数料を下げれば自治体に残るお金は増える
仮に10億円の寄付を集める自治体があるとします。
仲介サイト関連の手数料を単純化して10%とすれば1億円です。
これが7%になれば7000万円になります。
3000万円の経費削減です。
この3000万円を返礼品の充実に使うのではなく地域の財源として残せれば、子育て支援や教育、福祉、地域振興などに使えるお金が増えます。
全国規模で考えれば、手数料率が数ポイント変わるだけでも非常に大きな金額になる可能性があります。
だからこそ、仲介サイト手数料は制度改革の重要な論点になっています。
ただし仲介サイトにもコストがかかる
もちろん、手数料を単純にゼロにすればよいわけではありません。
仲介サイト側にも運営費用があります。
システムの開発や維持、セキュリティー対策、決済システム、利用者へのサポート、自治体や返礼品に関する情報管理などが必要です。
さらに、全国から膨大な数の寄付者を集めるための広告やサービス開発にも費用がかかります。
仲介サイトがなくなれば、自治体自身がこうした機能の一部を担わなければなりません。
つまり、手数料は単なる利益ではなく、ふるさと納税を便利に利用するためのインフラ費用という側面もあります。
重要なのは、サービスの価値に対して現在の手数料水準が適切なのかという問題です。
自治体は仲介サイトから離れられるのか
手数料が高いのであれば、自治体が仲介サイトを使わずに直接寄付を集めればよいという考え方もあります。
実際、独自のふるさと納税サイトを運営する自治体もあります。
独自サイトなら、大手仲介サイトへの手数料を削減できる可能性があります。
しかし、大きな問題があります。
集客力です。
寄付者は全国の返礼品を比較できる仲介サイトに集まりやすいため、自治体の独自サイトまでわざわざ訪問してもらうのは簡単ではありません。
手数料を削減できても寄付額が大幅に減れば、結果的に自治体に残る金額が減る可能性があります。
仲介サイトを使うかどうかは、単純な手数料率だけでは判断できないのです。
手数料と寄付額の両方を見る必要がある
例えば、仲介サイトを利用して10億円の寄付を集め、そのうち1億円の手数料を支払っている自治体があるとします。
一方、仲介サイトをやめたことで手数料を5000万円削減できても、寄付額が8億円まで減ってしまえば、必ずしも自治体にとって得とは限りません。
逆に、地域ブランドが強く、独自サイトでも十分に寄付者を集められる自治体なら、仲介サイトへの依存を減らすメリットが大きくなります。
今後は、
手数料が何%か
だけではなく、
その手数料を払うことで何円の寄付を獲得できているのか
という費用対効果が重要になります。
仲介サイトの役割そのものが変わる可能性
ポイント付与が禁止され、経費規制も強化されれば、仲介サイト同士の競争も変わっていく可能性があります。
これまではポイント還元やキャンペーンなど、寄付者にどれだけ経済的なメリットを提供できるかが競争力の一つでした。
今後は、返礼品の検索性、寄付金の使途の分かりやすさ、自治体の魅力を伝える情報、寄付後の関係づくりなどがより重要になるかもしれません。
単なる「返礼品のショッピングモール」ではなく、寄付者と自治体を結びつける情報基盤としてどれだけ価値を提供できるかが問われます。
結論
ふるさと納税の仲介サイトは、全国の自治体や返礼品を集約し、検索、申し込み、決済などを提供することで、寄付者と自治体を結びつけています。
自治体にとって最大のメリットは、全国の寄付者に接触できる圧倒的な集客力です。
一方、その対価として支払う手数料は自治体の募集経費となり、地域に残る寄付金を減らします。
経費規制が強化され、最終的に寄付額の6割以上を地域に残すことが求められるようになれば、1割前後とされる仲介サイト関連の費用はますます大きな論点になります。
ただし、手数料だけを減らして寄付額そのものが減ってしまっては意味がありません。
これから自治体に求められるのは、仲介サイトにいくら支払ったかだけではなく、その費用によってどれだけの寄付を獲得し、最終的にいくら地域に残すことができたのかを検証することです。
ふるさと納税市場が成熟するなか、仲介サイトも自治体も「寄付額を増やす競争」から「より少ない経費で地域に多くのお金を残す競争」へ移っていくことになるでしょう。
参考
日本経済新聞 2026年8月14日 朝刊 ふるさと納税26年度 市区7割が「減少」の見方