医療費の増加が続くなか、政府は医療保険制度の見直しを進めています。その一つが「OTC類似薬」の追加負担制度です。
2027年3月から、市販薬と同じような成分や効能を持つ医療用医薬品については、従来の自己負担に加えて追加負担を求める制度が始まる予定です。一方で、重症患者や長期間の治療が必要な患者については例外措置も設けられる方向となっています。
今回は、このOTC類似薬の追加負担制度について、制度の目的や対象となる薬、例外措置まで分かりやすく解説します。
OTC類似薬とは何か
OTCとは「Over The Counter」の略で、薬局やドラッグストアで医師の処方箋がなくても購入できる一般用医薬品を指します。
OTC類似薬とは、こうした市販薬と成分や効能がほぼ同じでありながら、医療機関で処方される医療用医薬品のことです。
代表的なものとしては次のような薬があります。
・湿布薬
・解熱鎮痛薬
・抗アレルギー薬
・保湿剤
・かぜ薬の一部
医療機関で処方されるため健康保険が適用されますが、市販薬でも購入可能なものが多く含まれています。
なぜ追加負担制度が導入されるのか
最大の目的は医療費の適正化です。
日本では高齢化の進展に伴い医療費が年々増加しており、現役世代の保険料負担も重くなっています。
一方、市販薬でも十分対応できる症状についてまで保険診療が利用されると、公的医療保険の財政負担は大きくなります。
そこで、
・軽症なら市販薬を活用する
・保険診療は重症患者へ重点配分する
という考え方から制度が見直されることになりました。
これは限られた医療財源を重症患者へ重点的に配分するという政策でもあります。
追加負担はどのくらいになるのか
現在でも患者は年齢などに応じて1~3割の自己負担を支払っています。
新制度ではこれに加え、薬剤費の4分の1を追加で自己負担します。
対象として想定されているのは77成分、およそ1000品目に及びます。
対象薬の範囲については今後正式に決定されますが、多くの人が日常的に利用している薬も含まれる見込みです。
重症患者は対象外となる場合がある
すべての患者が追加負担となるわけではありません。
厚生労働省は医療上必要な長期使用については配慮する方針を示しています。
例えば、
・長期使用が医学的に必要
・慢性疾患で継続治療が必要
・診療ガイドラインで有効性が認められている
こうした場合には追加負担の対象外となる方向です。
医療上欠かせない薬まで患者負担を増やさないよう配慮されています。
湿布はなぜ例外措置が議論されるのか
湿布薬は制度上、特に議論となっています。
変形性膝関節症などでは長期間使用されることが多い一方、診療ガイドラインでは通年使用の有効性について十分な根拠が示されていないとされています。
そのため原則として追加負担の対象になります。
しかし、
・画像検査で重症と確認
・医師が通年使用を必要と判断
・毎日の使用を指示
という条件を満たす患者については、2028年度末まで経過措置として追加負担を免除する案が示されています。
制度開始直後の混乱を避けるための暫定措置といえます。
保湿剤にも経過措置が設けられる
保湿剤についても同様です。
ヘパリン類似物質や尿素製剤は、アトピー性皮膚炎では長期使用の有効性が認められています。
このため、アトピー性皮膚炎の患者は追加負担の対象外となる方向です。
一方で、アトピー以外でも重い皮膚疾患で継続使用が必要な患者もいます。
そのため、
・免疫抑制薬などの治療歴
・十分改善しない重症患者
など一定条件を満たす場合には、2028年度末まで経過措置として追加負担を求めない案が示されています。
制度は今後も見直される
今回の経過措置は恒久的なものではありません。
経過措置期間中に、
・新たな医学的エビデンス
・診療ガイドラインの改訂
・制度導入後の処方実態
などを検証したうえで、制度の見直しが行われる予定です。
つまり、新制度は導入して終わりではなく、実際の運用状況を踏まえながら改善されていく仕組みとなっています。
制度が私たちに与える影響
今回の制度改正は、単に患者負担を増やすことだけが目的ではありません。
本当に保険診療が必要な医療へ財源を重点配分し、市販薬で対応できる軽症についてはセルフメディケーションを促進する狙いがあります。
一方で、慢性疾患や重症患者への配慮も盛り込まれており、「一律負担増」ではなく、医学的必要性を考慮した制度設計が進められています。
今後は対象となる薬や具体的な運用方法がさらに明らかになるため、自分が利用している薬が制度の対象になるかどうかについても確認しておくことが重要になるでしょう。
結論
OTC類似薬の追加負担制度は、増え続ける医療費を抑えながら、公的医療保険を将来にわたって維持するための改革の一つです。
2027年3月からは、市販薬と同様の成分を持つ医療用医薬品について追加負担が導入される予定ですが、重症患者や長期治療が必要な患者には経過措置や例外規定が設けられる方向となっています。
今後も制度内容は見直される可能性があるため、患者自身も制度の趣旨を理解し、セルフメディケーションと保険診療を適切に使い分けることが求められる時代になっていくでしょう。
参考
日本経済新聞 2026年8月6日 朝刊「OTC類似薬の追加負担案 湿布、重症患者は一部例外」