電子帳簿保存法への対応が義務化されてから、多くの事業者が電子データの保存方法を見直すようになりました。
一方で、「保存を忘れたらどうなるのか」「紙に印刷しておけば問題ないのではないか」といった疑問を持つ人も少なくありません。
電子帳簿保存法に違反したからといって、直ちに罰金や刑事罰が科されるわけではありません。しかし、税務調査では思わぬ不利益につながる可能性があります。
今回は、電子帳簿保存法に適切に対応しなかった場合の主なリスクを整理します。
電子データを保存していないと問題になる
電子取引で受け取った請求書や領収書は、電子データのまま保存しなければなりません。
例えば、
- メール添付の請求書
- クラウドからダウンロードした領収書
- 電子インボイス
などを紙に印刷しただけでは、電子帳簿保存法の保存義務を満たしたことにはなりません。
税務調査で電子データの提示を求められた際に、保存されていなければ問題となる可能性があります。
税務調査で説明が難しくなる
帳簿や請求書は、税務申告の根拠となる重要な証拠です。
電子データが適切に保存されていないと、
- 取引内容
- 支払時期
- 取引先
などを十分に説明できないケースがあります。
その結果、調査に時間がかかったり、追加資料の提出を求められたりすることも考えられます。
重加算税の加重措置もある
電子帳簿保存法では、電子取引データに関して隠ぺいや仮装が認められた場合、重加算税が通常より10%加重される制度があります。
これは、電子データは改ざんしやすいという特性を踏まえた措置です。
一方、令和7年度税制改正では、国税庁長官が定める基準に適合したシステムを利用し、一定の要件を満たしている場合には、この10%加重措置の対象外となる制度も創設されました。
適切なシステムを利用することが、税務リスクの軽減にもつながります。
消費税実務にも影響する
電子データで受け取ったインボイスは、電子帳簿保存法に従って保存する必要があります。
保存方法に問題があると、税務調査で確認を受ける可能性があります。
電子帳簿保存法は法人税だけの制度ではなく、消費税実務とも密接に関係しています。
そのため、請求書や領収書の管理方法を社内で統一しておくことが重要です。
日常業務の積み重ねが重要
電子帳簿保存法への対応は、一度設定すれば終わるものではありません。
毎日の業務の中で、
- 電子データを保存する
- 保存漏れがないか確認する
- データを削除しない
- 機種変更時に移行する
といった作業を継続することが求められます。
制度違反の多くは、特別な不正ではなく、日常の管理不足から生じることも少なくありません。
ペナルティを避ける最善策
電子帳簿保存法への対応で最も重要なのは、「税務調査になってから慌てないこと」です。
日頃から、
- 保存方法を決める
- 社内ルールを整備する
- クラウドサービスを適切に活用する
- 定期的に保存状況を点検する
といった体制を整えておけば、多くのリスクは未然に防ぐことができます。
制度を難しく考え過ぎるよりも、継続できる運用を築くことが大切です。
結論
電子帳簿保存法に違反した場合、直ちに刑事罰が科されるわけではありませんが、税務調査で適切な説明ができなくなったり、電子取引データの隠ぺいや仮装が認められた場合には重加算税の加重措置の対象となったりする可能性があります。
重要なのは、電子帳簿保存法を特別な制度として捉えるのではなく、日常の経理業務の一部として運用することです。電子データを適切に保存し、必要なときにすぐ提示できる環境を整えておくことが、税務リスクを減らし、安心して事業を続けるための最善の備えになるでしょう。
参考
税のしるべ
2026年7月27日
電子帳簿保存法Q&Aを更新、7年度改正を踏まえ電子取引関係は10問追加