相続制度は世界共通の仕組みと思われがちですが、実際には国によって大きく異なります。
日本の相続法も、欧州の制度を参考にしながら発展してきました。しかし、そのまま取り入れたわけではなく、日本独自の歴史や社会事情の中で現在の姿になっています。
そのため、日本の相続制度には便利な面もあれば、相続人同士の争いが起こりやすいという課題も抱えています。
今回は、日本の相続法の特徴を海外との違いを交えながら見ていきます。
日本の相続法はフランス法の影響を受けている
現在の日本の相続法は、明治時代に制定された民法を基礎としています。
当時の日本は近代国家を目指し、欧州諸国の法制度を参考にしました。
相続制度については、フランス民法の考え方を多く取り入れています。
ただし、日本では戦後に家制度が廃止されるなど大きな制度改革が行われたため、現在の相続法は欧州の制度を基礎としながらも、日本独自の仕組みへと発展しています。
日本では相続手続きを家族が進める
日本の相続制度の大きな特徴は、多くの手続きを相続人自身が行うことです。
被相続人が亡くなると、相続人を確定し、財産を調査し、遺産分割協議を行い、それぞれの名義変更を進めます。
金融機関、不動産、株式などについても、相続人が個別に手続きを行う必要があります。
家族間で話し合いがまとまれば比較的スムーズですが、意見が対立すると手続きが長期間に及ぶことも珍しくありません。
海外では専門家が中心となる国もある
一方、フランスなどでは公証人が相続手続きを包括的に担う仕組みがあります。
財産の確認、遺言の執行、相続人の確定、遺産分割などを専門家が一体的に進めるため、相続人だけで手続きを進める日本とは大きく異なります。
このような仕組みでは、専門家が全体を把握するため、手続きの重複や見落としが起こりにくいという利点があります。
日本では各手続きが個別に行われるため、相続人が多い場合や財産が複雑な場合には負担が大きくなりやすいのです。
遺産分割協議が重要になる理由
日本では、遺言がない場合、多くのケースで相続人全員による遺産分割協議が必要になります。
つまり、法律だけで財産の行き先がすべて決まるわけではありません。
相続人全員が話し合い、誰がどの財産を取得するかを決めます。
この仕組みには、それぞれの事情を柔軟に反映できるという長所があります。
一方で、相続人同士の意見が対立すると協議がまとまらず、家庭裁判所での調停や審判に進むこともあります。
日本で「争族」と呼ばれる問題が起こりやすい背景には、このような制度の特徴も関係しています。
時代に合わせて制度は改正され続けている
日本の相続法は完成された制度ではありません。
高齢化や少子化、未婚化、再婚家庭の増加など、家族の姿が変わる中で制度も見直されています。
2018年の民法改正では、配偶者居住権や特別寄与制度などが新たに創設されました。
さらに、所有者不明土地問題への対応など、相続をめぐる社会課題に対応するための制度改正も進められています。
社会が変化する以上、相続法もまた変わり続ける法律なのです。
結論
日本の相続法はフランス法の影響を受けながら発展してきましたが、日本独自の歴史や社会事情を反映した制度になっています。
特に、相続人同士の話し合いを重視する仕組みは、日本の相続法を特徴づける大きなポイントです。
その一方で、相続人間の意見がまとまらなければ手続きが長期化することもあります。
日本の相続法を理解するには、法律の条文だけでなく、その背景にある制度の成り立ちや海外との違いにも目を向けることが大切です。
参考
日本税理士会連合会 令和7年度全国統一研修会「相続法概説」(早川眞一郎)