相続時精算課税制度は本当に使いやすくなったのか 制度改正編

税理士
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「相続時精算課税制度は一度選ぶと後戻りできない。」

この理由から、以前は利用をためらう人が少なくありませんでした。

暦年課税と比べると使い勝手が悪く、「特別な事情がある人だけが利用する制度」という印象を持たれていたのです。

しかし、近年の税制改正によって制度は大きく見直されました。

新たな非課税枠が設けられるなど、従来よりも使いやすい制度へと変わり、相続対策の選択肢として改めて注目されています。

今回は、相続時精算課税制度の特徴と、制度改正によって何が変わったのかを分かりやすく解説します。

相続時精算課税制度とは何か

相続時精算課税制度とは、生前に贈与した財産を相続時にまとめて精算する仕組みです。

通常の暦年課税では、毎年の贈与ごとに贈与税を計算します。

一方、相続時精算課税制度では、生前贈与した財産を相続時に相続財産へ加算し、最終的な相続税として精算します。

つまり、「贈与」と「相続」を一体として考える制度なのです。

制度改正で大きく変わったポイント

これまでの制度では、相続時精算課税制度を選択すると、毎年の少額贈与であっても申告が必要になるなど、実務上の負担がありました。

しかし、制度改正によって基礎控除に相当する新たな非課税枠が設けられました。

この改正により、一定額までの贈与については相続財産への加算対象とならず、贈与税の申告も不要となるケースが生まれました。

その結果、従来よりも日常的な資産移転に利用しやすい制度へと変わっています。

暦年課税との違いを理解する

制度を選ぶ際に重要なのは、暦年課税との違いを理解することです。

暦年課税は、毎年少しずつ財産を移転することに向いています。

一方、相続時精算課税制度は、まとまった財産を早い段階で移転したい場合に適しています。

例えば、

将来値上がりが期待される資産。

事業承継の対象となる自社株式。

収益を生み続ける資産。

こうした財産は、早めに次世代へ移転することで、その後の値上がりや収益を受贈者へ移すことができます。

制度の違いを理解した上で選択することが大切です。

一度選択すると原則として変更できない

相続時精算課税制度には、大きな特徴があります。

それは、一度選択すると、その贈与者については原則として暦年課税へ戻ることができないという点です。

このため、制度を利用する際には慎重な判断が必要です。

「今年だけ有利だから」という短期的な判断ではなく、

今後の資産形成。

相続までの期間。

家族構成。

将来の財産の増減。

こうした要素を総合的に考えて選択しなければなりません。

値上がりが期待できる財産との相性が良い

この制度が特に力を発揮するのは、将来価値が上昇すると考えられる財産です。

例えば、

未上場株式。

成長企業の株式。

収益不動産。

こうした資産を早い段階で移転すれば、その後の価値上昇分は受贈者の財産となります。

結果として、将来の相続財産を抑える効果が期待できます。

財産の種類によって制度との相性は大きく異なります。

制度だけで判断しないことが重要

相続対策では、「どちらの制度が得か」という問いをよく耳にします。

しかし、実際には制度だけで優劣を決めることはできません。

若い世代へ早く資産を移したい家庭。

事業承継を予定している家庭。

金融資産が中心の家庭。

不動産が多い家庭。

それぞれで最適な制度は異なります。

税額だけではなく、家族の生活設計や資産承継の目的まで考えて制度を選ぶことが重要です。

長期的な視点で考える

相続対策は、一年で終わるものではありません。

十年、二十年という長い時間をかけて進めることが一般的です。

そのため、その年の税制だけで判断するのではなく、

将来の税制改正。

資産価値の変化。

家族のライフイベント。

こうした変化も見据えながら計画を立てる必要があります。

相続時精算課税制度も、その長期的な資産承継戦略の一つとして考えることが大切です。

結論

相続時精算課税制度は、近年の税制改正によって従来よりも利用しやすい制度へと進化しました。

一方で、一度選択すると原則として変更できないなど、慎重な判断が求められる制度でもあります。

大切なのは、「制度が新しくなったから利用する」のではなく、自分や家族の資産状況、将来の承継計画に合っているかを見極めることです。

相続対策に万能な制度はありません。

それぞれの制度の特徴を正しく理解し、長期的な視点で活用することが、令和時代の円滑な資産承継につながるでしょう。

参考

東京地方税理士会 令和の資産家の相続税対策 近年の税制改正をふまえて 江本尚浩 講義資料

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