事業承継という言葉を聞くと、多くの人は「社長が交代すること」や「株式を後継者へ渡すこと」を思い浮かべるでしょう。
もちろん、それらは事業承継の重要な要素です。
しかし、中小企業庁が示している今後の方向性を見ると、事業承継はもっと広い視点で考えられています。
そこでは、「会社を引き継ぐこと」だけではなく、「会社を成長させ、地域社会へ価値を提供し続けること」が重視されています。
今回は、中小企業庁が考える新しい事業承継の方向性について考えてみます。
事業承継は経営のゴールではない
従来の考え方では、後継者へ株式を承継し、社長交代が終われば事業承継も完了したと考えられがちでした。
しかし、実際にはその日から新しい経営が始まります。
後継者は、
会社の成長戦略を描き、
社員を育成し、
新たな市場へ挑戦し、
会社を次の時代へ導いていかなければなりません。
つまり、事業承継は「終わり」ではなく、「新しい経営のスタート」なのです。
制度から経営支援へ発想が変わりつつある
これまでの制度は、
株式承継。
相続税。
贈与税。
など、税制面の支援が中心でした。
しかし現在は、
後継者育成。
DX推進。
生産性向上。
地域との連携。
こうした経営課題も事業承継と一体で考える方向へ変化しています。
会社を引き継ぐだけでは十分ではなく、その後も成長できる会社をつくることが重要視されているのです。
後継者は「守る人」から「変える人」へ
以前は、
創業者が築いた会社を守ることが後継者の役割と考えられていました。
もちろん、会社の理念を受け継ぐことは大切です。
しかし、時代は変化しています。
生成AI。
デジタル化。
人口減少。
脱炭素。
こうした環境変化の中では、過去と同じ経営を続けるだけでは会社は成長できません。
後継者には、
守るべきものは守り、
変えるべきものは変える。
そんな柔軟な経営姿勢が求められています。
地域とともに成長する企業が期待されている
中小企業庁の検討資料では、事業承継後の企業が地域経済へどのように貢献するかも重要な視点として示されています。
地域で雇用を維持する。
地域企業と連携する。
新しい産業を育てる。
若い人材が働きたくなる会社をつくる。
こうした取り組みは、企業だけではなく地域全体の発展にもつながります。
これからの事業承継は、地域社会の未来を支える役割も期待されているのです。
制度も社会の変化に合わせて進化していく
講義資料では、今後の事業承継税制について、
生産性向上。
複数後継者への対応。
海外子会社への対応。
地域貢献。
雇用環境の変化。
など、多くの論点が整理されています。
これは、事業承継制度が完成形ではなく、社会環境に合わせて進化していく制度であることを示しています。
制度を利用する側も、現在のルールだけではなく、将来の方向性にも目を向けることが重要です。
未来をつくる経営者が求められる時代へ
これからの後継者には、
税務知識だけではなく、
経営戦略。
人材育成。
デジタル活用。
地域連携。
こうした幅広い能力が求められます。
会社を引き継ぐだけではなく、新しい価値を生み出す経営者が期待されているのです。
その意味で、事業承継とは「財産の承継」ではなく、「未来を創る経営者へのバトンタッチ」といえるでしょう。
結論
中小企業庁が考える新しい事業承継は、株式や税金だけを対象とした制度ではありません。
後継者育成、生産性向上、地域貢献などを含めた総合的な経営支援へと、その考え方は広がっています。
これからの事業承継では、「会社を残すこと」だけでは十分ではありません。
会社を成長させ、地域社会へ新しい価値を提供し続けることが、本当の意味での事業承継になります。
経営者が未来を見据えた準備を進めることこそが、次の世代へ会社を引き継ぐ最大の財産になるのです。
参考
北陸税理士会「事業承継税制(特例版)における実務上の論点整理」
中小企業庁「今後の検討の方向性について」