マンション価格の高騰が続く中、「定期借地権付きマンション(定借マンション)」への注目が急速に高まっています。
これまで「土地は自分のものにしたい」という考え方が日本では一般的でした。しかし近年は、住宅に対する価値観が変わりつつあります。
土地を所有することよりも、便利な場所に住み、快適な時間を手に入れることを重視する人が増えているのです。
定借マンションの増加は、不動産市場だけでなく、これからの人生設計や資産形成の考え方にも大きな影響を与える変化と言えるでしょう。
定期借地権マンションとは何か
定期借地権マンションとは、土地を購入するのではなく、一定期間借りて、その土地の上に建てられたマンションを購入する仕組みです。
契約期間は近年では70年前後が多く、契約終了時には建物を解体し、更地にして地主へ返還することが基本となります。
そのため購入者は、
・土地代が不要
・固定資産税は建物部分のみ
・購入価格が比較的安い
というメリットがあります。
一方で、
・毎月の地代
・解体積立金
・契約終了後には資産が残らない
という特徴も理解しておく必要があります。
つまり、「安く買えるマンション」ではなく、「仕組みが異なる住宅」と考えることが重要です。
なぜ供給が急増しているのか
今回の供給拡大には、地主側の事情が大きく影響しています。
都市部には、
・企業の遊休地
・学校法人の土地
・自治体所有地
・古くから所有している土地
が数多くあります。
これらを売却すると、多額の譲渡益課税が発生するケースがあります。
そのため、
「売却はしたくない」
「土地は持ち続けたい」
という地主が増えています。
そこで選ばれるのが定期借地権です。
土地を手放さず、
・まとまった借地収入
・長期の安定収益
・将来は土地が戻る
というメリットを得られるためです。
企業にとっても、資産を有効活用しながら資金を確保できる選択肢になっています。
購入者の価値観も変わってきた
需要側にも変化があります。
かつて住宅は、
「土地を持って初めて資産」
という考え方が主流でした。
しかし現在は、
「生活の質」
「通勤時間」
「子育て環境」
「駅から近い立地」
などを優先する人が増えています。
例えば、
通勤時間を毎日30分短縮できれば、
年間では約250時間以上、
10年間では2,500時間以上もの時間を生み出します。
時間は二度と取り戻せない資産です。
そのため、
「土地は借りてもよい」
「便利な場所で暮らしたい」
という発想が自然になってきました。
これは若い世代だけでなく、共働き世帯や子育て世帯にも広がっています。
資産価値について理解しておくべきこと
定借マンションで最も注意すべき点は資産価値です。
契約期間が短くなるにつれて、
借地権の残存期間も減少します。
その結果、
売却価格は所有権マンションより下落しやすくなります。
ただし最近は契約期間が70年前後まで延びています。
購入後すぐに価値が下がるわけではありません。
重要なのは、
「何年間住む予定なのか」
というライフプランとの整合性です。
転勤が多い人、
短期間で住み替える予定がある人、
資産価値を重視する人には慎重な判断が必要でしょう。
一方、
老後まで住み続ける予定であれば、大きな問題にならないケースもあります。
人生100年時代の住宅選びは変わる
人生100年時代では、
住宅も「一生に一度の買い物」ではなく、
ライフステージに合わせて住み替える時代になりつつあります。
子育て期
働き盛り
子どもの独立後
定年後
高齢期
それぞれ必要な住まいは変わります。
その変化に柔軟に対応するには、
「所有」にこだわり過ぎない考え方も必要になります。
住宅は資産であると同時に、
毎日の暮らしを支える生活インフラでもあります。
どちらを優先するかは、人それぞれ異なります。
定借マンションが向いている人
定借マンションは次のような人には有力な選択肢になります。
・都心部に住みたい人
・購入予算を抑えたい人
・職住近接を重視する人
・教育環境を優先したい人
・長期間住み続ける予定の人
反対に、
・資産価値を最優先したい人
・土地を子どもへ残したい人
・頻繁に住み替える予定の人
には慎重な検討が必要です。
住宅選びは価格だけではなく、自分自身の人生設計に合っているかどうかが最も重要なのです。
結論
定期借地権マンションの増加は、不動産価格の高騰だけが理由ではありません。
地主の税務や資産活用の考え方、購入者の価値観、働き方、ライフスタイルなど、さまざまな社会の変化が重なって生まれた新しい住宅市場の姿です。
これからの住宅選びでは、「所有していること」よりも、「どのような暮らしを実現できるか」という視点がますます重要になります。
人生100年時代の住まいは、資産価値だけでは測れません。家族構成や働き方、将来設計を踏まえ、自分にとって最も価値のある住まい方を選ぶことが、これからの賢い住宅購入につながるのではないでしょうか。
参考
日本経済新聞 2026年7月11日朝刊
定借マンション供給急増 地主、売却時の税負担を敬遠 薄れる持ち家志向も後押し #真相深層