事業承継を考える中小企業の経営者にとって、自社株の評価は避けて通れない重要なテーマです。後継者へ株式を引き継ぐ際には、その評価額が相続税や贈与税に大きく影響するため、評価方法によって税負担が大きく変わることがあります。
近年は、現行の非上場株式の評価方法について見直しを求める意見も出ており、今後の税制改正の議論でも注目されるテーマの一つとなっています。
今回は、非上場株式の評価制度の現状と、経営者が今から備えておきたいポイントについて考えてみます。
なぜ非上場株式の評価が重要なのか
上場企業の株価は市場で毎日決まりますが、多くの中小企業には市場価格がありません。
そのため、相続や贈与では税法上の評価方法によって株価を算定することになります。
評価額が高くなれば相続税や贈与税の負担も増え、逆に低くなれば税負担は軽くなります。
しかし、自社株は会社の経営権そのものでもあります。税負担だけを考えて評価額を下げることが、本当に会社の将来にとって望ましいとは限りません。
事業承継では、税金と経営の両方を考える視点が必要になります。
評価方法には課題も指摘されている
現在の評価方法は、会社の規模や事業内容などによって複数の方式が使い分けられています。
一方で、会社の属性や業績の変化によって評価額が大きく変動する場合があることから、企業の実態を十分に反映していないのではないかという議論もあります。
また、事業を継続している会社であっても、一部の資産について市場価格を基準に評価する仕組みが、本来の企業価値を正確に表しているのかという点についても検討が続いています。
今後の制度改正では、より実態に即した評価方法が議論される可能性があります。
事業承継は制度改正を待つものではない
制度改正の可能性があるからといって、事業承継を先送りすることが最善とは限りません。
経営者の年齢や健康状態、後継者の育成状況、会社の成長段階などは、それぞれ異なります。
事業承継は数年から十年以上かけて進めることも珍しくありません。
そのため、
・現在の株価を把握する
・承継時期を検討する
・将来の税負担を試算する
・複数の承継方法を比較する
といった準備を早めに始めることが重要です。
制度が変わったときにも柔軟に対応できるよう、選択肢を持っておくことが経営の安心につながります。
企業価値を高めることが最も重要である
自社株評価というと、どうしても「評価額を下げる方法」に関心が集まりがちです。
しかし、本来の目的は会社を次世代へ円滑に引き継ぐことです。
企業の収益力や財務基盤が強くなれば、自社株の評価額が高くなる場合もありますが、それは会社の価値が向上した結果でもあります。
後継者にとって重要なのは、税負担だけではなく、安定して利益を生み続ける会社を承継できることです。
経営改善や収益力の向上は、事業承継対策そのものでもあります。
制度改正の動向を継続して確認する
税制は社会や経済の変化に合わせて見直されます。
非上場株式の評価方法も、今後の議論によって一部が見直される可能性があります。
そのため、一度対策を立てたら終わりではなく、毎年の税制改正や関連する情報を確認しながら、自社の承継計画を定期的に見直すことが大切です。
長期的な視点で準備を進めることが、円滑な事業承継への近道になります。
結論
非上場株式の評価方法は、事業承継に大きな影響を与える重要な制度です。今後、より実態に即した評価方法が議論される可能性はありますが、制度改正を待つだけでは十分な対策とはいえません。
まずは現在の自社株の評価を正しく把握し、企業価値の向上と承継計画を一体で考えることが重要です。税制改正の動向にも目を向けながら、長期的な視点で準備を進めることが、会社と後継者の双方にとって安心できる事業承継につながるでしょう。
参考
税のしるべ
「日税連が9年度税制改正の建議書、重要項目に取引相場のない株式の評価の見直しなど」
2026年7月6日