自社株評価はいつ見直すべきか 中小企業の承継実務編

税理士
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中小企業の事業承継では、自社株評価は一度算定すれば終わりではありません。会社の業績や資産内容、税制改正などによって株式の評価額は変化するため、定期的な見直しが欠かせません。

「まだ承継は先だから」と考えているうちに、自社株の評価額が大きく上昇し、想定以上の相続税や贈与税が発生するケースも少なくありません。

今回は、自社株評価を見直すべきタイミングと、事業承継を円滑に進めるための実務上のポイントについて考えてみます。

自社株評価は会社の成長とともに変化する

非上場会社の株価は、市場で日々売買されるわけではありませんが、会社の状況に応じて評価額は変動します。

例えば、

・利益が増加したとき

・純資産が増加したとき

・土地や有価証券などの資産価値が上昇したとき

・配当方針が変わったとき

などは、自社株評価に影響を与える可能性があります。

会社が順調に成長することは喜ばしいことですが、その結果として承継時の税負担が大きくなることもあるため、経営と税務の両面から状況を把握することが重要です。

見直しを検討したい五つのタイミング

自社株評価は毎年必ず算定しなければならないものではありませんが、次のような場面では見直しを検討する価値があります。

第一に、決算が終了したときです。利益や純資産が変動すると評価額にも影響する可能性があります。

第二に、事業承継計画を策定または見直すときです。株式移転の時期を検討するためにも、最新の評価額を把握しておく必要があります。

第三に、大きな設備投資や不動産取得など、資産構成が変わったときです。

第四に、税制改正や評価方法の見直しが行われたときです。制度変更によって評価額の考え方が変わる可能性があります。

第五に、経営者の年齢や健康状態など、承継を具体的に考え始める時期です。

これらのタイミングで現状を確認することで、将来の選択肢を広げることができます。

評価額だけで承継時期を決めてはいけない

自社株評価が低いうちに贈与や承継を進めたいと考えることは自然です。

しかし、評価額だけを基準に承継時期を決めることには注意が必要です。

後継者が十分に育成されていなかったり、取引先や金融機関への引継ぎが不十分だったりすれば、会社経営そのものに支障をきたす可能性があります。

事業承継は、税金対策だけではなく、人・組織・経営ノウハウの承継まで含めて考えることが大切です。

企業価値を見える化する機会として活用する

自社株評価の見直しは、税金を計算するためだけの作業ではありません。

会社の財務状況や収益力、資産構成を客観的に確認する機会にもなります。

評価額がなぜ上がったのか、あるいは下がったのかを分析することで、経営改善につながるヒントが見つかることもあります。

また、金融機関との対話や後継者への経営教育においても、自社の価値を数字で説明できることは大きな強みになります。

自社株評価を経営管理の一つの指標として活用する視点を持つことが重要です。

制度改正への備えも忘れてはいけない

今後、自社株の評価方法が見直される可能性についても議論が続いています。

制度が変更されれば、これまでの試算結果が変わることも考えられます。

だからこそ、評価額を一度確認して終わりではなく、税制改正の動向を踏まえながら定期的に見直すことが重要です。

経営環境が変化する中では、柔軟に対応できる承継計画こそが企業の安定につながります。

結論

自社株評価は、事業承継を成功させるための重要な判断材料です。しかし、評価額だけを意識するのではなく、会社の成長や後継者の育成、経営環境の変化も含めて総合的に考える必要があります。

決算や資産構成の変化、税制改正などの節目ごとに評価を見直し、自社の現状を正しく把握することが、将来の円滑な事業承継につながります。自社株評価を単なる税務手続ではなく、経営を見つめ直す機会として活用していきましょう。

参考

税のしるべ
「日税連が9年度税制改正の建議書、重要項目に取引相場のない株式の評価の見直しなど」
2026年7月6日

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