毎年発表される税制改正に関する建議や要望は、すぐに法律へ反映されるわけではありません。しかし、その内容には今後の税制の方向性が色濃く表れており、経営者や個人事業主にとっては将来への重要なヒントになります。
令和9年度税制改正に向けて、日本税理士会連合会が公表した建議書にも、中小企業経営に大きく関係するテーマが数多く盛り込まれました。
今回は、その中でも経営者が知っておきたいポイントを整理し、今後どのような準備を進めるべきかを考えてみます。
税制改正の建議は未来の制度設計図である
税制改正は突然決まるものではありません。
各省庁や経済団体、業界団体、専門家団体などが毎年さまざまな提言を行い、それらを踏まえて政府・与党が税制改正大綱をまとめていきます。
そのため、日本税理士会連合会の建議書は、税理士の現場で見えている課題を国へ伝える貴重な資料でもあります。
今後の制度改正を予測する上でも、一度目を通しておく価値があります。
非上場株式の評価方法は今後も注目されるテーマ
中小企業の事業承継では、自社株の評価額が相続税や贈与税に大きな影響を与えます。
現在の評価方法については、会社の区分や評価方式によって大きく評価額が変わるケースがあり、実態との乖離を指摘する声も少なくありません。
もし評価方法の見直しが進めば、
・事業承継の進め方
・株式の移転時期
・後継者への承継計画
などにも影響する可能性があります。
事業承継は数年単位で準備するものです。制度改正の方向性を把握しておくことが重要になります。
中小企業支援は「賃上げ」が中心テーマになっている
近年の税制改正では、一貫して賃上げ支援が重視されています。
人手不足が続く中で、中小企業にとって従業員の確保は最大の経営課題の一つです。
税額控除制度がより使いやすくなれば、賃上げを行う企業への支援も拡充される可能性があります。
ただし、税制だけに頼るのではなく、
・利益体質の改善
・生産性向上
・業務効率化
を同時に進めなければ、継続的な賃上げは難しくなります。
税制はあくまで経営を後押しする仕組みであることを忘れてはいけません。
インボイス制度はまだ発展途上である
制度開始から一定期間が経過しましたが、実務上の課題は今も残っています。
特例措置が延長される可能性が議論されていることからも、多くの事業者が制度対応の途中段階にあることが分かります。
特に小規模事業者では、
・経理処理
・請求書管理
・消費税計算
などの負担が増えています。
今後も制度変更や特例の見直しが行われる可能性があるため、最新情報を継続的に確認する姿勢が重要です。
税制改正は経営戦略の一部として考える時代へ
税制改正は税金だけの問題ではありません。
設備投資、人材採用、事業承継、資金繰り、DX投資など、企業経営全体に関わる内容が増えています。
だからこそ、
「税制が変わったから対応する」
のではなく、
「制度改正を見据えて経営計画を立てる」
という考え方が求められています。
経営者に必要なのは、改正後に慌てることではなく、改正前から情報を収集し、自社への影響を考えておくことです。
結論
税制改正に関する建議書は、単なる要望集ではありません。そこには現場で積み重ねられた課題や、今後の税制が目指す方向性が示されています。
非上場株式の評価方法、賃上げ支援、インボイス制度など、中小企業に直結するテーマは今後も議論が続くでしょう。
経営環境が大きく変化する時代だからこそ、税制改正を「後から知る情報」ではなく、「経営判断に活用する情報」として捉えることが、これからの企業経営には欠かせません。
参考
税のしるべ
「日税連が9年度税制改正の建議書、重要項目に取引相場のない株式の評価の見直しなど」
2026年7月6日