税務調査で公正証書はどこまで確認されるのか 相続実務編

税理士
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相続対策では、公正証書遺言や家族間の契約など、公証人が関与する手続が年々増えています。

「公正証書なら税務署は確認できないのではないか」

「遺言の内容は秘密なのではないか」

このような疑問を持つ方も少なくありません。

しかし、近年の国税通則法の改正により、相続税や贈与税の調査において、一定の場合には税務署が公証人へ公正証書の内容を確認できる制度が整備されました。これは、相続財産をより正確に把握し、公平な課税を実現するための改正です。

今回は、この制度の概要と実務上のポイントについて解説します。

公正証書とは何か

公正証書とは、公証人が法律に基づいて作成する公文書です。

代表的なものには、

・公正証書遺言

・金銭消費貸借契約

・任意後見契約

・離婚給付契約

などがあります。

公証人が本人確認や意思確認を行ったうえで作成するため、高い証明力を持つことが特徴です。

そのため、相続実務では、相続人同士の争いを防ぐ目的で公正証書遺言が利用されるケースが増えています。

なぜ税務署が確認できるようになったのか

相続税調査では、財産の移転状況や権利関係を正確に把握することが重要です。

例えば、

遺言による財産分配

生前の契約

債権債務の内容

などは、相続税額に大きく影響する場合があります。

そこで国税通則法第74条の3では、相続税や贈与税の調査または徴収について必要がある場合には、公証人が作成した公正証書のうち、対象となる納税義務者に関する部分の閲覧を求めたり、その内容について公証人へ質問したりできることが定められました。

すべての公正証書が対象ではない

この制度を誤解してはいけません。

税務署が自由にあらゆる公正証書を閲覧できるわけではありません。

対象となるのは、

相続税または贈与税の調査

または徴収について必要がある場合

に限られます。

さらに、閲覧できる範囲も対象となる納税義務者に関係する部分に限定されています。必要性を超えて広範囲に調査できる制度ではありません。

税理士は遺言内容も踏まえて申告する時代へ

相続税申告では、遺産分割協議書だけでなく、公正証書遺言が存在するケースも少なくありません。

税理士は、

遺言内容

財産評価

遺留分への影響

生前贈与との関係

などを総合的に確認しながら申告を進める必要があります。

公正証書があるから安心ではなく、その内容と実際の財産移転が一致しているかを確認することが重要です。

制度が整備された現在では、税理士にもこれまで以上に丁寧な確認作業が求められています。

司法書士や公証人との連携が重要になる

相続実務は税理士だけでは完結しません。

遺言書の作成では公証人が関与し、不動産の名義変更では司法書士が活躍します。

さらに、

税理士

司法書士

公証人

弁護士

金融機関

など、多くの専門家が関わることで円滑な相続手続が実現します。

これからの税理士には、税務知識だけではなく、他士業との連携を前提とした総合的な対応力が求められるでしょう。

経営者ほど生前準備が重要

中小企業経営者は、

自社株

事業用不動産

会社への貸付金

事業承継

など、多くの資産を保有しています。

遺言を作成していても、財産の内容が変われば見直しが必要になることもあります。

また、公正証書遺言を作成した後も、税理士と定期的に財産状況を確認し、相続税への影響を検討することが望ましいでしょう。

生前の準備が充実しているほど、相続発生後の税務調査リスクも小さくなります。

結論

公正証書は高い証明力を持つ重要な文書ですが、相続税や贈与税の調査において必要がある場合には、国税通則法に基づき、税務署が公証人へ内容を確認できる制度が整備されています。ただし、その権限は必要な範囲に限定されており、すべての公正証書を自由に調査できるものではありません。

税理士には、遺言や契約内容を正確に理解したうえで申告を行うことが求められます。また、司法書士や公証人など他の専門家と連携しながら、生前から適切な相続対策を進めることが、円滑な資産承継につながるでしょう。

参考

近畿税理士会「税法実務講座 税理士目線の国税通則法 No.3」講義資料

国税通則法第74条の3(当該職員の相続税等に関する調査等に係る質問検査権)

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