疑わしい取引の届出をしなかった場合どうなるのか 法的責任編

税理士
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マネー・ローンダリング対策の話になると、多くの税理士が気になることがあります。

「もし疑わしい取引に気付かなかったらどうなるのか」

「届出をしなかった場合に処罰されるのか」

「どこまで責任を負うのか」

といった疑問です。

税理士は捜査機関ではありません。

しかし犯罪収益移転防止法では、特定事業者として一定の義務が課されています。

今回は疑わしい取引の届出と税理士の責任について考えてみます。

税理士は犯罪を見抜く義務があるのか

最初に理解しておきたいのは、税理士に犯罪を見抜く義務があるわけではないということです。

税理士は警察官でも検察官でもありません。

顧客の説明が真実かどうかを捜査する権限もありません。

求められているのは、

本人確認を行うこと

必要な確認を行うこと

違和感があれば慎重に対応すること

です。

つまり結果責任ではなく、適切な手続を行ったかどうかが重要になります。

届出制度の目的とは

疑わしい取引の届出制度は、犯罪を断定するための制度ではありません。

様々な事業者から情報を集めることで、犯罪収益の流れを把握することが目的です。

税理士。

金融機関。

不動産業者。

司法書士。

行政書士。

それぞれが得た情報を集約することで、全体像が見えてくることがあります。

そのため届出とは告発ではなく情報提供という性格を持っています。

届出をためらう心理

実務では届出をためらう心理が働きます。

顧客との関係が悪化するのではないか。

誤解だったらどうしよう。

判断を間違えたら困る。

こうした不安を持つのは自然なことです。

しかし制度は完全な確信を求めているわけではありません。

合理的な疑念がある場合に適切な対応を行うことが重要なのです。

本当に問題となるのは何か

税理士にとって本当に問題となるのは、違和感を認識しながら何もしない場合です。

例えば、

明らかに説明が不自然である

本人確認を拒否している

資金源を説明できない

実態のない取引が繰り返されている

こうした状況を認識しながら確認も記録も行わなければ問題が生じる可能性があります。

重要なのは気付いた時の対応です。

記録が税理士を守る

後日問題になった場合に重要なのは記録です。

どのような説明を受けたのか。

どのような資料を確認したのか。

どのような判断を行ったのか。

これらが記録として残っていれば、自らの対応を説明できます。

逆に記録がなければ適切に対応したことを証明することが難しくなります。

その意味でも記録保存は極めて重要です。

顧客との信頼関係はどうなるのか

届出制度について誤解されやすいのは、顧客を裏切る制度だという考え方です。

しかし本質は異なります。

税理士は法令を守りながら顧客を支援する専門家です。

医師が法律を守りながら診療するのと同じように、税理士も法令を守りながら業務を行います。

適切な対応を行うことと顧客との信頼関係は両立します。

むしろコンプライアンスを重視する姿勢が信頼につながることも少なくありません。

税理士事務所の体制整備が重要

個人の経験や勘だけに頼るのは危険です。

事務所として、

本人確認手続

記録保存ルール

相談体制

職員教育

対応手順

を整備しておくことが重要です。

担当者一人で抱え込まない仕組みを作ることがリスク管理につながります。

マネロン対策は個人戦ではなく組織的な取り組みなのです。

最も重要なのは誠実な対応

制度を理解すればするほど難しく感じるかもしれません。

しかし最終的に重要なのは誠実な対応です。

確認すべきことを確認する。

記録すべきことを記録する。

不明な点を放置しない。

この基本を守ることが最大のリスク対策になります。

税理士に完璧な判断は求められていません。

求められているのは専門家としての誠実な行動なのです。

結論

税理士に求められているのは犯罪を見抜くことではなく、適切な確認と記録を行うことです。疑わしい取引の届出制度は犯罪の断定ではなく、社会全体で犯罪収益の流れを把握するための仕組みです。

本当に重要なのは結果ではなく対応の過程です。確認を行い、記録を残し、誠実に対応することが税理士自身を守り、社会の信頼を支えることにつながるのです。

参考

警察庁刑事局組織犯罪対策部組織犯罪対策第一課犯罪収益対策室(JAFIC)
「マネー・ローンダリング対策について」講義資料

警察庁刑事局組織犯罪対策部組織犯罪対策第一課犯罪収益対策室(JAFIC)
「疑わしい取引の届出方法について」補助資料

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