毎日しっかり眠っているはずなのに、朝から疲れが残っている。そんな経験をしている人は少なくありません。
大阪公立大学の研究では、40〜64歳の約4割が「眠っても疲れが取れない」と感じる「非回復性睡眠」の状態にあることが明らかになりました。さらに、そのような人は心身の健康状態が悪いと感じるリスクが約2〜2.5倍高くなることも報告されています。
人生100年時代では、健康寿命を延ばすことがますます重要になります。その土台となるのが睡眠です。
今回は、「睡眠時間」ではなく「睡眠の質」という視点から、私たちの働き方や生活習慣について考えてみたいと思います。
非回復性睡眠とは何か
非回復性睡眠とは、十分な時間眠ったにもかかわらず、朝起きても疲れが取れたと感じられない状態をいいます。
「6時間しか寝ていないから疲れている」という単純な話ではありません。
7時間眠っていても疲れが抜けない人もいれば、6時間でも十分に回復できる人もいます。
つまり、睡眠時間だけでは睡眠の良し悪しは判断できないのです。
近年では、睡眠の「量」よりも「質」が重要であることが多くの研究で示されています。
疲れが取れない本当の原因
今回の研究では、仕事や家事に費やす時間が長いことが、睡眠の質に影響している可能性が指摘されています。
現代人は昼間だけでなく、夜もスマートフォンやパソコンに囲まれています。
仕事が終わってもメールを確認し、SNSを見て、動画を楽しみ、気が付けば就寝時間が遅くなってしまいます。
身体は横になっていても、脳は休めていない状態です。
さらに、家事や育児、介護などの負担が重なる世代では、自分自身の休息時間を十分に確保できないことも少なくありません。
疲労が蓄積し、その疲労が翌日に持ち越されるという悪循環が起こります。
睡眠は最高の健康投資である
健康というと、運動や食事に目が向きがちです。
もちろん、それらも重要です。
しかし、その効果を十分に発揮するためには、良質な睡眠が欠かせません。
睡眠中には脳の情報整理が行われ、成長ホルモンが分泌され、身体の修復が進みます。
免疫機能の維持やストレスの回復にも睡眠は大きく関わっています。
つまり、睡眠は単なる休憩時間ではなく、身体をメンテナンスする時間なのです。
睡眠を軽視すると、その影響は数年後、数十年後の健康にも表れてきます。
忙しい人ほど睡眠を最優先にする
仕事が忙しくなると、多くの人は最初に睡眠時間を削ります。
しかし、本来は逆です。
疲れているときほど、睡眠を優先したほうが仕事の効率は高まります。
集中力や判断力、記憶力は睡眠不足によって大きく低下します。
ミスが増え、生産性が落ち、結果として仕事時間がさらに長くなるという悪循環に陥ります。
一方で、十分に回復した状態で仕事を始めると、短時間でも高い成果を出しやすくなります。
睡眠は時間を失うことではなく、時間を生み出す投資ともいえるでしょう。
社会全体で睡眠を支える時代へ
今回の研究で印象的なのは、「個人の努力だけでは限界がある」という指摘です。
長時間労働や家事負担、介護、育児など、睡眠不足の背景には社会全体の課題があります。
企業では働き方改革を進めることが重要です。
家庭では家事の分担や便利なサービスの活用も選択肢になります。
社会全体で「睡眠を削って頑張る人」を評価する文化から、「十分に休み、健康に働く人」を評価する文化へ変わることが求められています。
人生100年時代では、長く働き続けるためにも、睡眠は欠かせない経営資源であり、人生の資産でもあるのです。
結論
健康寿命を延ばすためには、運動や食事だけでなく、睡眠の質にも目を向ける必要があります。
「長く眠ること」ではなく、「疲れがしっかり取れる睡眠」を目指すことが大切です。
毎日の睡眠は、明日の仕事のためだけではありません。
10年後、20年後も元気に働き、自分らしい人生を送るための大切な土台です。
忙しい毎日だからこそ、自分の睡眠を見直すことが、未来の健康への第一歩になるのではないでしょうか。
参考
日本経済新聞(2026年7月1日 朝刊)
中年の4割、睡眠後も疲れ 仕事・家事の時間が影響か