値上げできる会社とできない会社の違いとは何か 価格戦略編

経営

原材料価格やエネルギー価格の上昇、地政学リスクによる物流の混乱など、企業を取り巻く経営環境はますます不確実性を増しています。

日本経済新聞の社長100人アンケートでは、6割を超える企業が半年以内の値上げを予定している一方で、約8割の企業が「十分に価格転嫁できていない」と回答しました。

つまり、多くの企業が値上げをしたくても、思うように利益へ結び付けられていないという現実があります。

これからの経営では、「値上げするかどうか」ではなく、「値上げできる会社になること」が重要なテーマになります。

価格はコストではなく価値で決まる

「原材料が高くなったので値上げします。」

この説明だけでは、多くのお客様は納得しません。

お客様が支払うのはコストではなく、その商品やサービスから得られる価値だからです。

品質が高い。

対応が早い。

安心して任せられる。

専門性が高い。

こうした価値が伝わって初めて、価格は受け入れられます。

価格競争から抜け出す企業は、価格ではなく価値を伝える努力を続けています。

利益を守る会社は日頃から原価を把握している

値上げの判断は感覚ではできません。

原材料費

人件費

物流費

エネルギーコスト

これらがどの程度上昇しているのかを数字で把握していなければ、適切な価格改定はできません。

月次決算や管理会計を活用している企業ほど、利益率の変化を早く察知できます。

逆に、決算が終わるまで利益が分からない会社では、値上げのタイミングを逃してしまいます。

価格戦略は経営管理そのものなのです。

値上げだけでは利益は守れない

今回のアンケートでは、多くの企業が調達先の分散や原材料の見直しにも取り組んでいます。

これは非常に重要な視点です。

利益を守る方法は値上げだけではありません。

仕入先を複数持つ。

代替材料を検討する。

物流ルートを見直す。

業務をAIやDXで効率化する。

在庫管理を改善する。

こうした取り組みを組み合わせることで、価格競争力を維持しながら利益を確保できます。

これからは「コストを下げる経営」と「価値を高める経営」の両立が求められる時代です。

サプライチェーンは経営戦略そのものになった

以前は、調達は購買部門の仕事と考えられていました。

しかし現在では、調達そのものが企業価値を左右しています。

一つの国、一つの企業、一つの港に依存する経営は、大きなリスクになります。

今回の中東情勢でも、多くの企業が原材料不足や納期遅延の影響を受けました。

世界情勢が変化するたびに経営が揺らぐようでは、安定した事業運営はできません。

調達先の分散、国内回帰、在庫戦略、循環型資源の活用など、サプライチェーン全体を経営課題として考える必要があります。

税理士にも価格戦略を支援する役割が広がる

税理士は税金を計算するだけの存在ではありません。

月次試算表から利益率を分析し、

どの商品が利益を生んでいるのか。

どこで利益が減少しているのか。

どの程度の値上げが必要なのか。

こうした経営判断に必要な数字を提供できる立場にあります。

価格改定は営業だけの仕事ではなく、数字に基づく経営判断です。

その判断材料を提供することは、これからの税理士に期待される重要な役割の一つになるでしょう。

結論

世界情勢の変化は、企業に避けられないコスト上昇をもたらしています。

しかし、その環境の中でも利益を確保できる企業は存在します。

その違いは、単に値上げを実施したかどうかではありません。

価値を伝える力を持ち、原価を正確に把握し、サプライチェーンを見直し、数字に基づいて経営判断を行っているかどうかです。

これからの時代は、「安く売る会社」よりも、「適正な価格で選ばれる会社」が成長していきます。

価格戦略は販売戦略ではなく、企業の未来を守る経営戦略そのものなのです。

参考

日本経済新聞(2026年6月30日 朝刊)

社長100人アンケート〉「半年内に値上げ」6割超 ナフサ・原油不足 供給網に深い傷 調達先分散など急ぐ

景況感 慎重さ強まる 企業の経営判断、守り意識

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