外形標準課税の申告書が完成すると、多くの担当者は一安心します。
しかし税務申告は提出して終わりではありません。
税務調査で内容が検証される可能性があります。
法人税調査では売上や経費が中心になりますが、外形標準課税では少し視点が異なります。
税務署や自治体が注目するのは、付加価値額や資本金等の額が正しく計算されているかどうかです。
今回は税務調査で確認されやすい外形標準課税のポイントについて解説します。
税務調査は計算より根拠を確認する
税務調査というと、計算ミス探しをイメージする人が多いかもしれません。
しかし実際には計算式よりも根拠資料の確認が中心です。
なぜその金額になったのか。
どの資料を基に集計したのか。
契約内容はどうなっているのか。
こうした点が確認されます。
外形標準課税は制度が複雑なため、単純な転記ミスよりも判断ミスが問題になることが多いのです。
最も確認されるのは報酬給与額
税務調査で最も確認されやすいのが報酬給与額です。
なぜなら付加価値額の中で最も大きな割合を占めるからです。
特に確認されるのは、
出向者給与負担金
役員報酬
企業年金掛金
派遣契約料
などです。
給与台帳だけではなく、人事資料や契約書まで確認されることがあります。
報酬給与額は税額へ直接影響するため、調査官も重点的に確認します。
派遣契約と請負契約は重要論点
外形標準課税特有の論点として有名なのが派遣契約です。
派遣契約料は75%を報酬給与額へ算入します。
一方で請負契約は同じ扱いにはなりません。
そのため契約の実態確認が行われます。
契約書の名称だけではありません。
誰が指揮命令を行っているのか。
実際にどのような働き方をしているのか。
こうした実態が確認されます。
出向者給与負担金もよく見られる
グループ企業では出向制度が多く利用されています。
そのため給与負担金の処理も調査対象になります。
出向契約書は存在するか。
負担金額の算定根拠はあるか。
実際に出向しているのか。
こうした点が確認されます。
特に大企業グループでは重要な調査項目です。
純支払利子の科目判定
純支払利子も確認されます。
特に注意されるのは手形売却損です。
会計上は支払利息以外の勘定科目で処理されることがあります。
しかし外形標準課税では支払利子に含まれる場合があります。
また、
貸付金利息
国債利息
地方債利息
などの受取利子も確認されます。
漏れがあると純支払利子が変わってしまいます。
純支払賃借料の見落とし
賃借料関係も誤りが多い分野です。
特に次の項目はよく確認されます。
借上社宅
社宅使用料
更新料
転貸収入
会計処理だけでは判断できないケースも多いため、契約書の確認が行われることがあります。
税務調査では実態重視の姿勢が徹底されています。
資本金等の額は組織再編で注意
資本割では資本金等の額が確認されます。
通常の年度であれば大きな問題は起きません。
しかし、
合併
会社分割
増資
減資
自己株式取得
などがある場合は注意が必要です。
法人税申告書との整合性も確認されます。
分割基準は人事資料まで確認される
複数都道府県に事業所がある場合は分割基準も重要な調査項目です。
従業者数の根拠資料が確認されます。
給与台帳
人事システム
出向者管理表
組織図
などが対象になります。
地方税特有の調査ポイントといえるでしょう。
調査官が本当に見ているもの
外形標準課税の調査で重要なのは、数字そのものではありません。
取引の実態です。
派遣なのか請負なのか。
出向なのか単なる業務支援なのか。
賃借料なのか別の費用なのか。
調査官は制度趣旨に照らして実態を確認しています。
そのため税理士も実態を理解したうえで申告する必要があります。
税理士が準備すべきこと
調査対応で最も重要なのは証拠資料の保存です。
契約書
給与台帳
出向契約書
派遣契約書
賃貸借契約書
分割基準資料
これらを整理して保存しておくことが重要です。
申告書だけ保管していても十分ではありません。
計算根拠まで説明できる状態を維持することが求められます。
結論
外形標準課税の税務調査では、報酬給与額、派遣契約、出向者給与負担金、純支払利子、純支払賃借料、資本金等の額、分割基準などが重点的に確認されます。
調査官が見ているのは計算結果ではなく、その背後にある取引の実態です。
税理士には制度の趣旨を理解し、根拠資料を整備したうえで申告することが求められます。
外形標準課税の実務とは、単なる計算作業ではなく、企業活動の実態を税務上正しく表現する仕事なのです。
参考
近畿税理士会「税法実務講座(法人税)事業税の外形標準課税対象法人の申告の基礎③ 外形標準課税対象法人の申告書作成の基礎」