複数の都道府県に事業所がある場合はどう申告するのか 分割基準編

税理士
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企業が一つの都道府県だけで事業を行っているとは限りません。

本社は大阪府。

工場は奈良県。

営業所は東京都。

支店は愛知県。

このように複数の都道府県に事業所を持つ企業は珍しくありません。

では法人事業税や法人住民税はどの都道府県へ納めるのでしょうか。

全額を本社所在地へ納めるわけではありません。

そこで登場するのが「分割基準」という仕組みです。

今回は外形標準課税の実務で欠かせない分割基準について解説します。

分割基準とは何か

分割基準とは、複数の都道府県にまたがって事業を行う法人の課税標準額を各都道府県へ配分するためのルールです。

法人事業税や法人住民税は地方税です。

地方自治体の財源となる税金です。

そのため事業活動が行われている地域へ適正に税収を配分する必要があります。

そこで一定の基準によって課税標準額を各自治体へ振り分ける仕組みが設けられています。

これが分割基準です。

なぜ分割が必要なのか

例えば大阪府に本社があり、奈良県に大規模な工場がある会社を考えてみましょう。

もし税額の全てを大阪府へ納付するとどうなるでしょうか。

奈良県は工場の受入れに伴う行政サービスを提供しているにもかかわらず税収を得られません。

これは公平ではありません。

事業活動の実態に応じて税収を配分するために分割基準が存在しているのです。

地方税らしい考え方といえるでしょう。

基本となる従業者数基準

法人事業税の分割基準として最も重要なのは従業者数です。

どの都道府県で何人が働いているかによって配分割合が決まります。

講義資料の事例では、

大阪府本社

大阪府営業所

奈良県工場

の3拠点について月ごとの従業者数が示されています。

外形標準課税では、この従業者数を基礎として各都道府県への配分割合を算定します。

なぜ売上ではなく従業者数なのか

経営者からよく聞かれる質問があります。

「売上高で配分した方が分かりやすいのではないか」

確かにそう思うかもしれません。

しかし売上は本社へ集中計上されることも多く、実際の事業活動の場所を反映しない場合があります。

一方で従業者数は実際に事業活動が行われている場所を比較的正確に示します。

地方税は地域との関わりを重視するため、従業者数が重要な基準になっているのです。

講義資料の事例から見えること

講義資料では、

本社

43人~65人

営業所

18人~50人

工場

100人~112人

と推移しています。

これを見ると奈良県工場が圧倒的に多くの従業者を抱えていることが分かります。

その結果、法人事業税の課税標準額も奈良県へ大きく配分されることになります。

つまり本社所在地だけではなく、実際の事業活動の規模が税額に反映されるのです。

月末人数を使う理由

講義資料では毎月末の従業者数が記載されています。

これは一時点の人数だけで判断すると実態を反映できないためです。

例えば決算直前だけ大量採用を行った場合、一時点だけを見ると不公平になります。

そこで各月末の人数を基礎として平均的な事業活動規模を把握します。

制度としての公平性を確保するための工夫です。

税理士が注意すべき実務ポイント

分割基準では税額計算そのものより基礎データの管理が重要です。

従業者数の集計方法

転勤者の取扱い

出向者の取扱い

臨時従業員の取扱い

こうした点で誤りが生じやすくなります。

特に人事部門と経理部門で管理データが異なることもあります。

税理士は人事データの内容まで確認する必要があります。

分割基準は地方税の特徴そのもの

法人税には分割基準という考え方はありません。

国税だからです。

一方で地方税は地域との関係を重視します。

どこで働いているのか。

どこで事業活動をしているのか。

どの自治体の行政サービスを利用しているのか。

こうした視点が税額計算へ反映されます。

分割基準は地方税の特徴を最もよく表している制度の一つです。

結論

分割基準は複数の都道府県に事業所を持つ法人の課税標準額を適正に配分するための制度です。

法人事業税では従業者数が重要な基準となります。

税額計算だけでなく、人事データの管理や従業者数の把握も重要になります。

地方税は地域との関係を重視する税制であることを理解すると、分割基準の必要性も見えてきます。

次回は、ここまで学んだ内容を踏まえて「法人事業税の税額はどのように計算されるのか」を実際の事例を使って解説します。

参考

近畿税理士会「税法実務講座(法人税)事業税の外形標準課税対象法人の申告の基礎③ 外形標準課税対象法人の申告書作成の基礎」

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