「賃金を上げたい気持ちはある。でも、その原資がない。」
中小企業の経営者から、このような声を聞くことが少なくありません。
近年は最低賃金の引上げが続き、人材不足も深刻化しています。優秀な人材を確保するためには、賃金水準の見直しは避けて通れない経営課題となりました。
2026年度の助成金制度でも、「賃上げ」は最も重要なテーマの一つとして位置付けられています。
つまり、国は企業の賃上げを後押ししようとしているのです。
今回は、賃上げと助成金の関係について考えてみます。
賃上げはコストではなく投資
賃金を上げると、人件費は確実に増えます。
そのため、「利益が減るのではないか」と心配する経営者も多いでしょう。
しかし、賃上げには大きな効果があります。
社員の定着率が高まる。
採用競争力が向上する。
仕事への意欲が高まる。
企業イメージが改善する。
これらは数字には表れにくいものの、長期的には企業の利益を生み出す重要な経営資産になります。
つまり、賃上げは単なるコストではなく、人への投資なのです。
助成金は賃上げへの第一歩を支援する
賃上げには資金が必要です。
そこで活用したいのが助成金です。
2026年度も、業務改善助成金やキャリアアップ助成金など、賃上げを支援する制度が継続されています。
これらの制度は、賃金を引き上げるだけでなく、生産性向上のための設備投資や制度整備と組み合わせることで、より大きな効果を発揮します。
つまり、「賃上げをしたいが資金面で不安がある」という企業にとって、助成金は経営判断を後押しする存在なのです。
人材不足は給与だけでは解決しない
もちろん、賃金だけを上げれば人材が集まるわけではありません。
働きやすい職場環境。
教育制度。
評価制度。
福利厚生。
こうした職場づくりも同時に進める必要があります。
助成金制度には、育児や介護との両立支援、人材育成、職場環境改善などを対象とした制度も数多く用意されています。
つまり、賃上げと職場改善を一体で進めることが、これからの人材戦略になります。
生産性向上が賃上げを支える
賃金だけを上げ続けることはできません。
企業には、その原資を生み出す仕組みが必要です。
業務の効率化。
DXの推進。
AIの活用。
設備投資。
教育によるスキルアップ。
こうした取り組みによって、一人当たりの生産性を高めることが、持続的な賃上げにつながります。
助成金制度が設備投資やリスキリングを重視している背景にも、この考え方があります。
「生産性向上」と「賃上げ」は、切り離せない関係にあるのです。
税理士は賃上げを数字で支援できる
賃上げを実施する際、経営者が最も知りたいのは、「会社は本当に負担できるのか」という点です。
ここで力を発揮するのが税理士です。
利益計画を作成し、人件費の増加が資金繰りに与える影響を試算する。
設備投資や助成金の活用も含めてシミュレーションを行う。
数字に基づいて判断できれば、経営者は安心して賃上げに踏み切ることができます。
税理士は、賃上げを実現するための「経営の設計図」を描く専門家でもあるのです。
結論
人材不足が続く時代において、賃上げは避けて通れない経営課題です。
しかし、それは単なる人件費の増加ではなく、企業の未来への投資でもあります。
助成金を上手に活用し、生産性向上と組み合わせながら賃上げを進めることで、企業は持続的な成長を実現できます。
これからの経営者に求められるのは、「助成金を受給すること」ではなく、「助成金を活用して強い会社をつくること」ではないでしょうか。
参考
2026年度版「助成金」受給&活用マニュアル(企業実務 2026年7月号付録)