相続が地域格差を広げているのか 地方経済編

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日本では人口減少と東京一極集中が長年続いています。

その結果として地域間の経済格差が広がっていることはよく知られています。しかし、その背景にはあまり注目されていない要因があります。

それが相続です。

相続は家族の財産を次世代へ引き継ぐ制度ですが、日本全体で見ると莫大な資産移転でもあります。そして現在、その資産移転の多くが地方から都市部へ向かっています。

今回は、相続と地域格差の関係について考えてみたいと思います。

人口移動の後に資産移動が起きる

戦後、日本では地方から都市部への人口移動が続いてきました。

進学や就職を機に若者が東京や大阪へ移り住み、そのまま定着する流れです。

一方で親世代は地元に残り、自宅や土地、預貯金などを保有し続けてきました。

そして現在、その親世代が高齢化し、相続が本格化しています。

地方で築かれた財産は、都市部で暮らす子どもたちへ承継されます。

つまり、かつての人口流出が、数十年後の資産流出として現れているのです。

地方で蓄えられた資産が都市へ向かう

地方の高齢者は長年にわたり資産を形成してきました。

退職金、預金、不動産など、その金額は決して小さくありません。

しかし相続人の多くは都市部で生活しています。

相続後、預金は都市部の金融機関へ移され、不動産は売却されることも少なくありません。

結果として地方で蓄積された資産が地域経済の外へ流出します。

企業であれば地域外への資本流出は問題視されますが、相続による資産流出は自然な現象として見過ごされがちです。

しかし、その影響は決して小さくありません。

地域金融機関の基盤が弱くなる

地域経済にとって預金は重要な資源です。

地方銀行や信用金庫は地域住民から集めた預金を企業や個人へ貸し出しています。

ところが相続を機に預金が都市部へ移転すると、地域金融機関の預金残高は減少します。

預金が減れば貸出余力も減ります。

その結果、地元企業の設備投資や事業拡大を支える力が弱くなる可能性があります。

地域経済の活力は金融機関の資金供給力と密接に結びついているのです。

空き家問題も地域格差を広げる

相続は不動産にも大きな影響を与えます。

地方の実家を相続しても、遠方に住む子どもにとって管理は容易ではありません。

そのため売却や放置が選ばれるケースが増えています。

売却できればまだよいのですが、人口減少地域では買い手が見つからないこともあります。

結果として空き家が増加します。

空き家は景観や防災、防犯の問題を引き起こし、地域の魅力を低下させます。

人口減少が空き家を生み、空き家がさらに人口流出を招くという悪循環が生まれるのです。

資産の集中が新たな格差を生む

相続による資産移転は、都市部の資産増加にもつながります。

東京などでは相続した資金が住宅購入や投資に使われます。

金融資産はさらに運用され、新たな資産を生み出します。

つまり都市部では資産が資産を呼ぶ循環が起きています。

一方、地方では資産が流出し続けます。

この差は時間とともに拡大していきます。

人口格差だけでなく、資産格差もまた地域間の差を広げる要因になっているのです。

地方創生には資産承継の視点が必要

地方創生というと、観光振興や企業誘致、移住促進が議論されます。

もちろん重要な政策です。

しかし、それだけでは十分ではありません。

地域で築かれた資産を地域内で循環させる仕組みも必要です。

例えば家族信託や法人化による不動産活用、地域事業への投資、事業承継支援などがあります。

地域に残る資産を次世代へどう引き継ぐかという視点が欠かせません。

人口政策だけでなく、資産政策も地方創生の重要な柱になるでしょう。

税理士に求められる役割の変化

税理士は相続税申告の専門家です。

しかし今後は単なる税額計算だけではなく、資産承継全体を考える役割が期待されるかもしれません。

相続財産をどのように引き継ぎ、どのように活用するか。

地域との関わりをどう維持するか。

こうした視点を持った助言が重要になります。

税理士は家族の財産だけでなく、地域の未来にも関わる存在になりつつあるのです。

結論

相続は家族内の財産承継制度ですが、日本全体で見ると地方から都市部への巨大な資産移転でもあります。

人口移動によって生まれた流れが、現在は相続を通じて資産移動として現れています。

その結果、地域金融機関の預金減少や空き家問題、地域経済の停滞など、さまざまな形で地域格差の拡大につながっています。

地方創生を考えるうえでは人口だけでなく、資産の流れにも目を向ける必要があります。

相続は家族の問題であると同時に、日本の地域経済の未来を左右する重要なテーマでもあるのです。

参考

日本経済新聞(2026年6月22日朝刊)

「預金の5割、首都圏集中 昨年度 相続やネット銀伸長 地方基盤のゆうちょ、残高4兆円減」

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