相続した実家をどうするか。
空き家問題を考えるとき、多くの人が最後に直面するのが「解体」という選択です。
建物が老朽化して売却が難しい場合や、近隣への危険が懸念される場合には、解体して更地にすることが現実的な解決策となることがあります。
しかし、そのとき必ず話題になるのが費用の問題です。
数百万円単位の解体費用を誰が負担するのか。親なのか、相続人なのか、それとも行政が支援してくれるのか。
今回は、空き家の解体費用を巡る現実について考えてみます。
空き家解体が増えている背景
日本では空き家が増加を続けています。
総務省の住宅・土地統計調査によると、2023年時点で空き家は約900万戸に達しました。
人口減少や高齢化が進むなか、今後さらに増加することが予想されています。
問題なのは、空き家の中には築50年、60年を超える老朽住宅も多いことです。
建物が傷み、雨漏りや倒壊の危険が高まれば、そのまま放置することはできません。
売却しようとしても買い手が見つからず、結果として解体を選択するケースが増えているのです。
解体費用はいくらかかるのか
解体費用は建物の構造や立地によって大きく異なります。
一般的には、
・木造住宅 100万円~300万円程度
・鉄骨造住宅 200万円~500万円程度
・鉄筋コンクリート造 300万円以上
が一つの目安とされています。
さらに、
・アスベストの除去
・庭木やブロック塀の撤去
・浄化槽の撤去
・家財道具の処分
などが必要になると費用は増加します。
地方では土地価格より解体費用の方が高くなるケースも珍しくありません。
そのため「売却したくても解体費用が出せない」という問題が発生します。
解体費用を負担するのは誰か
原則として解体費用を負担するのは所有者です。
親が生前に解体するのであれば親が負担します。
親が亡くなった後に相続した場合は、相続人が所有者となり負担することになります。
相続人が複数いる場合には、遺産分割の中で費用負担を話し合うことになります。
しかし現実には、
「長男だけが管理している」
「遠方の兄弟は関心がない」
「費用負担で意見がまとまらない」
といった問題も少なくありません。
空き家問題は不動産の問題であると同時に、家族間の問題でもあるのです。
解体しないリスク
解体費用が高額だからといって放置すると、別のリスクが生じます。
建物が倒壊して近隣に被害を与えた場合、所有者責任が問われる可能性があります。
また、
・雑草の繁茂
・害虫や害獣の発生
・不法侵入
・放火
などのリスクもあります。
さらに近年は空家等対策の強化が進んでいます。
管理不全空家や特定空家等に指定されると、行政指導や勧告の対象になることがあります。
放置にはコストがかからないように見えて、実際には大きなリスクを抱えているのです。
解体すると固定資産税はどうなるのか
解体をためらう理由としてよく挙げられるのが固定資産税です。
住宅が建っている土地には住宅用地特例が適用されています。
そのため建物を取り壊すと土地の固定資産税が上がる場合があります。
この制度があるため、
「危険だと分かっていても解体しない」
というケースが長年存在してきました。
ただし近年は制度の見直しが進んでいます。
管理不全空家等に指定された場合には住宅用地特例の対象外となる可能性があります。
つまり、放置し続ければ税負担が軽いという時代ではなくなりつつあります。
補助金制度を活用できる場合もある
自治体によっては空き家解体に対する補助制度があります。
補助額は地域によって異なりますが、
・数十万円程度の補助
・解体費用の一部補助
・危険空き家への重点支援
などが行われています。
ただし予算枠や条件があるため、利用できるとは限りません。
解体を検討する際には、市区町村へ事前に確認することが重要です。
解体が最善とは限らない
空き家問題の解決策は解体だけではありません。
建物の状態によっては、
・賃貸活用
・リフォーム再販
・空き家バンクへの登録
・二拠点居住向け活用
などの選択肢もあります。
特に近年は中古住宅市場が拡大しており、築年数が古くても需要が見込める場合があります。
解体費用を支払った後では元に戻せません。
そのため、まずは売却や活用の可能性を確認したうえで判断することが大切です。
子ども世代に負担を残さないために
空き家問題で最も避けたいのは、何も決めないまま次世代へ引き継ぐことです。
親世代が元気なうちに、
・家を残すのか
・売却するのか
・貸すのか
・解体するのか
を家族で話し合っておくことが重要です。
実家は思い出の場所ですが、同時に維持管理が必要な資産でもあります。
将来の負担を減らすためには、早めの準備が欠かせません。
結論
空き家の解体費用は原則として所有者が負担します。相続後であれば、その責任は相続人に引き継がれます。
解体費用は決して安くありませんが、老朽化した空き家を放置することにも大きなリスクがあります。倒壊や近隣トラブル、行政指導などを考えると、解体は有力な選択肢の一つです。
もっとも、解体が唯一の解決策とは限りません。売却や賃貸活用などの可能性も含めて検討し、家族で十分に話し合うことが大切です。
空き家問題の本質は建物ではなく、次の世代へどのように引き継ぐかという家族の課題にあるのかもしれません。
参考
・日本経済新聞 2026年6月6日朝刊「実家じまい、代行広がる 物件買い取りから遺品処分を一括 子世代、負担減で重宝」
・日本経済新聞 2026年6月6日朝刊「空き家、全国で900万戸 売却時、複数事業者に査定依頼を」
・総務省 令和5年住宅・土地統計調査
・国土交通省 空家等対策の推進に関する特別措置法関連資料