ふるさと納税は2008年の創設以来、地方創生を象徴する制度として定着しました。令和7年度の寄附総額は1兆円を超え、多くの自治体にとって重要な財源となっています。
一方で、近年は制度本来の目的である地域応援よりも返礼品競争が注目される場面も少なくありません。また、都市部の税収流出や自治体間競争の激化といった課題も指摘されています。
こうした中、新たな地方創生施策として注目されているのが「ふるさと住民登録制度」です。
この制度は、単なる寄附ではなく、人と地域との継続的な関係づくりを目指す仕組みとして期待されています。
今回は、ふるさと納税の次に来る可能性がある制度について考えてみます。
ふるさと納税が果たした役割
ふるさと納税の最大の成果は、地方自治体を身近な存在にしたことです。
従来、住民税は居住地に納めるものであり、自分の意思で自治体を選ぶことはできませんでした。
しかし、ふるさと納税によって、
・生まれ故郷を応援する
・旅行先の自治体を支援する
・災害被災地に寄附する
といった行動が可能になりました。
税金の使い道を自ら選択するという考え方は、多くの人に支持されました。
その一方で、
・返礼品競争の過熱
・都市部の税収減少
・制度本来の趣旨との乖離
などの課題も生まれています。
寄附から関係へ
次の時代に求められているのは、寄附だけではない地域との関わりです。
人口減少が進む地方では、財源不足だけでなく、人手不足が深刻化しています。
例えば、
・祭りの担い手不足
・農業従事者の減少
・地域活動の担い手不足
・高齢化による自治会機能の低下
などの問題が各地で発生しています。
お金だけでは解決できない課題が増えているのです。
そこで注目されているのが「関係人口」という考え方です。
地域に住んでいなくても、継続的に地域と関わる人を増やそうという発想です。
ふるさと住民登録制度という新しい挑戦
令和8年度中に創設予定のふるさと住民登録制度は、この関係人口を拡大するための仕組みです。
住民票を移さなくても、関心のある自治体に登録できます。
さらに一定の条件を満たした人は、
・地域イベントへの参加
・農業ボランティア
・清掃活動
・まちづくり活動
などを通じて地域の担い手として活動できます。
制度の特徴は、自治体と住民の関係を「住むか住まないか」の二択ではなく、多段階で考える点にあります。
これは従来の住民制度にはなかった発想です。
将来は住民税も変わるのか
現在、住民税は居住地の自治体へ納めます。
しかし、今後は
「生活する場所」
と
「応援したい場所」
が異なる人が増える可能性があります。
例えば、
東京で働きながら地方創生に参加する人
週末だけ地方で活動する人
将来移住を検討している人
などです。
地方財政審議会では、登録先自治体への住民税納付についても議論されています。
現段階では制度化は決まっていませんが、将来的には税の考え方そのものが変わる可能性があります。
人口獲得競争から関係人口競争へ
これまで自治体は人口を増やす競争をしてきました。
しかし人口減少社会では、すべての自治体が人口を増やすことはできません。
今後は、
「何人住んでいるか」
よりも、
「何人が関わっているか」
が重要になるかもしれません。
そのため自治体は、
・移住支援
・観光振興
・地域活動
・ワーケーション
・副業人材の活用
などを通じて関係人口の獲得を目指すようになります。
ふるさと住民登録制度は、その基盤となる可能性があります。
地方創生の主役はお金から人へ
ふるさと納税は地方創生の第一段階だったとも考えられます。
第一段階は「お金を送る仕組み」でした。
次の段階は「人が関わる仕組み」です。
地域に何度も訪れ、
地域の人と交流し、
地域活動に参加し、
必要に応じて移住する。
そうした関係が増えることで、地方創生はより持続可能なものになります。
地方が求めているのは寄附者だけではなく、共に地域を支える仲間なのかもしれません。
結論
ふるさと納税の次に来る制度として注目されるのが、ふるさと住民登録制度を中心とした関係人口政策です。
ふるさと納税が「お金による応援」だったとすれば、ふるさと住民登録制度は「人による応援」といえます。
人口減少が進む日本では、住民と非住民の境界は今後さらに曖昧になっていくでしょう。
将来は「どこに住んでいるか」だけでなく、「どの地域に関わっているか」が重要な時代になるかもしれません。
ふるさと納税の次に来る制度とは、税金を送る仕組みではなく、人と地域をつなぐ仕組みなのです。
参考
・税のしるべ 2026年5月25日号「ふるさと住民登録制度を8年度中に創設へ、登録先自治体への住民税の納付などは制度の定着等を踏まえ検討」
・総務省 関係人口の創出・拡大に関する施策資料
・総務省 地方財政審議会資料(2026年4月10日)
・内閣官房 デジタル田園都市国家構想関連資料