人口減少が進む地方では、地域を支える担い手不足が深刻な課題となっています。一方で、都市部に住みながら特定の地域を応援したい、定期的に訪れたいと考える人も増えています。
こうした背景のもと、総務省は令和8年度中に「ふるさと住民登録制度」を創設する予定です。この制度は、実際の住所地とは別に関心のある自治体へ登録し、その地域との継続的なつながりを持つことを目的としています。
今回は、この新しい制度の概要と今後の可能性について整理します。
関係人口という考え方
地方創生の議論では、これまで「定住人口」と「交流人口」が重視されてきました。
定住人口とは、その地域に住んでいる人です。交流人口とは観光客など一時的に訪れる人を指します。
これに対して近年注目されているのが「関係人口」です。
関係人口とは、その地域に住んではいないものの、継続的に地域と関わりを持つ人々のことです。
例えば次のような人が該当します。
・定期的に地方を訪れる人
・地域イベントに参加する人
・農業体験やボランティア活動を行う人
・地域の課題解決に協力する人
・将来的な移住を検討している人
ふるさと住民登録制度は、この関係人口を可視化し、さらに増やすことを目的としています。
ふるさと住民登録制度の概要
制度では、住民票を移さなくても自治体に登録できます。
登録先は市区町村が基本となりますが、都道府県のみへの登録も可能です。
登録方法はスマートフォンのアプリなどを活用した簡便な仕組みが想定されています。
登録すると、自治体から次のような情報提供を受けられます。
・観光情報
・イベント情報
・地域ニュース
・地域活動の案内
従来は地域とのつながりを個別に管理する必要がありましたが、制度化によってより参加しやすくなることが期待されています。
ベーシック登録とプレミアム登録
制度には二つの登録区分があります。
まず「ベーシック登録」です。
こちらは特別な条件がなく、誰でも登録できます。
登録者はアンケートなどを通じて自治体との関係性を確認しながら、地域情報の提供を受けます。
もう一つが「プレミアム登録」です。
こちらは年3回以上の担い手活動が要件となります。
担い手活動には次のようなものが想定されています。
・地域イベントの企画運営
・農業ボランティア
・清掃活動
・自治会活動
・まちづくり団体での活動
実際に地域を支える活動に参加することで、より深い関係人口として位置付けられます。
プレミアム登録者への支援
プレミアム登録者には、地域活動を後押しするための支援が用意される予定です。
具体的には、
・交通費補助
・宿泊費補助
・ワーキングスペース利用料補助
などが検討されています。
さらに、
・公共施設の住民並み利用
・災害時の避難先としての受け入れ
など、住民に準じた支援も想定されています。
これは「住民」と「観光客」の中間的な存在を制度として認める新しい取り組みといえるでしょう。
ふるさと納税との違い
制度名から「ふるさと納税」を連想する人も多いかもしれません。
しかし、両者の目的は大きく異なります。
ふるさと納税は寄附制度です。
一方、ふるさと住民登録制度は地域との関係づくりを目的としています。
そのため、登録しただけで特産品などを受け取ることはできません。
総務省は、現地に行かなくても利益を受けられるような物品提供を認めない方針を示しています。
制度の本質は「応援消費」ではなく「地域への参加」にあります。
将来的に住民税はどうなるのか
注目されているのが税制との関係です。
地方財政審議会では、登録先自治体へ住民税を納付できるようにする仕組みについても議論されています。
ただし現時点では制度化は決まっていません。
総務省は、
・制度の定着状況
・関係人口の実態
・地方財政への影響
などを踏まえて今後検討するとしています。
もし将来的に実現すれば、「住んでいる場所」と「応援したい場所」の双方を支える新しい税の仕組みにつながる可能性があります。
人口減少時代の新しい地域との関わり方
これまで自治体は、住民を増やすことを重視してきました。
しかし人口減少が進む中、すべての地域が人口を増やすことは現実的ではありません。
そのため今後は、
「住んでいる人を増やす」
から
「関わる人を増やす」
へと発想が変わりつつあります。
ふるさと住民登録制度は、その象徴的な取り組みといえるでしょう。
二地域居住やワーケーション、副業人材の活用など、多様な働き方や暮らし方が広がる中で、地域との新しい関係づくりの基盤になる可能性があります。
結論
ふるさと住民登録制度は、人口減少社会における新しい地域政策として注目されています。
この制度は単なる観光振興策ではなく、地域の担い手を増やし、都市と地方をつなぐ仕組みとして設計されています。
今後、税制との連携や関係人口の可視化が進めば、「住民票のある場所だけがふるさと」という考え方も変わるかもしれません。
人口減少時代において、地域との関わり方そのものを再定義する制度として、その動向に注目していきたいところです。
参考
・税のしるべ 2026年5月25日号「ふるさと住民登録制度を8年度中に創設へ、登録先自治体への住民税の納付などは制度の定着等を踏まえ検討」
・総務省 地方財政審議会資料(2026年4月10日)
・総務省 地方創生関連資料「関係人口の創出・拡大に向けた取組」