相続税の申告が必要になる人・ならない人(基礎控除実務編)

税理士
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相続が発生したとき、多くの人が最初に気になるのが、

「うちは相続税の申告が必要なのか」

という点です。

しかし実務では、

  • 「財産が少ないと思っていた」
  • 「自宅しかないから大丈夫だと思った」
  • 「配偶者が全部相続するから申告不要だと思った」

などの思い込みによって、判断を誤るケースが少なくありません。

相続税は、“相続した人ごと”ではなく、“遺産全体”で判定する税金です。

今回は、国税庁「相続税の申告のしかた(令和7年分用)」を参考にしながら、相続税申告が必要になる基準を、実務目線で整理していきます。


相続税申告が必要になる基本ルール

国税庁資料では、

「相続や遺贈などによって取得した財産の課税価格の合計額」が「遺産に係る基礎控除額」を超える場合、相続税申告が必要になる

と説明されています。

つまり、まずは、

  • 財産総額
  • 債務
  • 葬式費用
  • 各種特例前の課税価格

を整理し、その合計額が基礎控除を超えるかどうかを確認する必要があります。


基礎控除の計算方法

基礎控除額は、次の算式で計算します。

3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

例えば、

  • 配偶者+子2人

の場合、法定相続人は3人ですので、

3,000万円+600万円×3人=4,800万円

となります。

つまり、課税価格の合計額が4,800万円を超えると、原則として相続税申告が必要になります。


“法定相続人の数”で間違いやすいポイント

実務では、この「法定相続人の数」で間違いが起きやすくなります。

特に注意が必要なのが、

  • 相続放棄
  • 養子
  • 代襲相続

です。


相続放棄しても人数に含まれる

実務上、意外と知られていないのが、

「相続放棄しても基礎控除計算では人数に含まれる」

という点です。

例えば、

  • 配偶者
  • 子2人

のうち、子1人が相続放棄した場合でも、

基礎控除計算上の法定相続人は3人のままです。

つまり、

3,000万円+600万円×3人=4,800万円

となります。

これは相続税実務では非常に重要な論点です。


養子は無制限に増やせるわけではない

相続税法では、養子を無制限に法定相続人へ含められるわけではありません。

国税庁資料では、

  • 実子がいる場合 → 養子1人まで
  • 実子がいない場合 → 養子2人まで

とされています。

例えば、

  • 実子1人
  • 養子2人

の場合、民法上の相続人は3人ですが、相続税計算上の法定相続人は2人です。

つまり基礎控除は、

3,000万円+600万円×2人=4,200万円

となります。

養子縁組による相続税対策は、昔から行われていますが、現在は一定の制限が設けられています。


配偶者だけが相続する場合でも注意

実務では、

「配偶者が全部相続するから相続税はかからない」

と思われることがあります。

確かに、配偶者には非常に大きな税額軽減制度があります。

しかし、

  • 申告そのものは必要
  • 二次相続で税負担が増える可能性
  • 小規模宅地との組み合わせ
  • 将来の遺産分割

なども含めて考える必要があります。

特に、

「とりあえず全部配偶者へ」

という分割は、一次相続では税額ゼロでも、二次相続で大きな税負担になるケースがあります。

そのため、相続税実務では「今回の税額」だけでなく、「次の相続」まで含めた設計が重要になります。


“申告不要”と“税額ゼロ”は違う

ここは実務上、非常に誤解が多いポイントです。

例えば、

  • 小規模宅地等の特例
  • 配偶者の税額軽減

を使うことで、最終的な相続税額がゼロになることがあります。

しかし、これらは「申告した人だけ」が使える制度です。

つまり、

  • 申告不要
  • 申告した結果、税額ゼロ

は全く別です。

ここを誤ると、

  • 特例適用不可
  • 税額増加
  • 延滞税
  • 税務調査

につながる可能性があります。


自宅だけでも相続税対象になる時代

昔は、

「自宅しかないから相続税は関係ない」

という感覚が一般的でした。

しかし現在は、

  • 都市部地価上昇
  • マンション価格高騰
  • 相続人減少
  • 基礎控除縮小

などにより、自宅不動産だけで基礎控除を超えるケースも増えています。

特に、

  • 都内戸建て
  • 駅近土地
  • 賃貸併用住宅
  • タワーマンション

などは、想像以上に評価額が高くなることがあります。

さらに、

  • 名義預金
  • 生命保険
  • 退職金
  • 株式

などを合計すると、本人が考えているより財産総額が大きくなるケースは少なくありません。


相続税実務は“早めの把握”が重要

相続税の申告期限は、

「相続開始を知った日の翌日から10か月以内」

です。

しかし実際には、

  • 戸籍収集
  • 財産調査
  • 不動産評価
  • 遺産分割協議
  • 銀行解約
  • 税理士相談

など、多くの作業が必要になります。

そのため、相続発生後に初めて確認するのではなく、

  • 財産一覧
  • 不動産状況
  • 保険契約
  • 家族構成
  • 生前贈与状況

などを、事前に整理しておくことが非常に重要になります。


結論

相続税申告が必要になるかどうかは、

  • 財産額
  • 法定相続人
  • 特例適用
  • 不動産評価
  • 生前贈与

など、多くの要素によって決まります。

また、

  • 「申告不要」
  • 「申告した結果税額ゼロ」

は全く違います。

特に現在は、

  • 地価上昇
  • 基礎控除縮小
  • 高齢化
  • 金融資産増加

などによって、一般家庭でも相続税実務に直面しやすい時代になっています。

そのため、

「うちは大丈夫だろう」

と思い込まず、まずは財産全体を整理し、基礎控除との比較を行うことが、相続実務の第一歩になります。

次回は、「“名義預金”はなぜ問題になるのか」をテーマに、税務調査でも頻繁に論点になる“名義”と“実質”の考え方を、実務目線で整理していきます。


参考

国税庁「相続税の申告のしかた(令和7年分用)」令和7年4月

国税庁「タックスアンサー 相続税」令和7年

国税庁「相続税のあらまし」令和7年

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