短時間正社員、副業前提の雇用、組織設計、評価制度――本シリーズでは、働き方の変化を起点に企業のあり方を多角的に検討してきました。
その中で浮かび上がってきたのは、「会社とは何のために存在するのか」という根本的な問いです。
従来の前提が崩れつつある今、この問いに改めて向き合う必要があります。
これまでの会社は何をしてきたのか
従来の会社の役割は、大きく3つに整理できます。
・雇用の安定を提供する
・収入の源泉となる
・キャリア形成の場となる
このモデルは、
・終身雇用
・年功序列
・フルタイム勤務
といった仕組みによって支えられてきました。
個人は会社に所属することで、
・生活の安定
・社会的な位置付け
・長期的な成長機会
を得ることができました。
なぜこのモデルが揺らいでいるのか
しかし現在、この前提は大きく変化しています。
・人材の流動化
・副業の一般化
・スキルの市場化
により、個人は必ずしも1社に依存する必要がなくなりました。
一方で企業側も、
・人材を囲い込むことの難しさ
・長期雇用のコスト
・環境変化への対応
といった課題に直面しています。
その結果、
「会社がすべてを提供する」というモデルは成立しにくくなっています。
会社は「依存の場」から「接続の場」へ
今後の会社の役割は、大きく変わります。
従来は、
・個人を内部に囲い込む存在
でしたが、これからは、
・個人と機会をつなぐ存在
へと変化します。
具体的には、
・多様な人材が関わるプラットフォーム
・スキルを発揮する機会の提供
・価値創出の場の設計
といった役割です。
会社は「所属先」ではなく、「機会の集合体」に近づいていきます。
雇用は契約関係へと再定義される
この変化は、雇用の本質にも影響を与えます。
従来の雇用は、
・長期的な関係
・暗黙の期待
・包括的な役割
に基づいていました。
しかし今後は、
・役割単位での契約
・成果に基づく対価
・明確な責任範囲
という形に近づきます。
これは、雇用と業務委託の境界が曖昧になることを意味します。
それでも会社が必要な理由
では、会社は不要になるのでしょうか。
結論として、会社の役割はむしろ重要になります。
理由は、個人では担えない機能が存在するためです。
・大規模な資源配分
・リスクの集約と分散
・長期的な投資
・複雑なプロジェクトの統合
これらは、個人や単発の契約では実現が難しい領域です。
つまり会社は、
「個人ではできない価値を実現する装置」
として存在し続けます。
問われるのは「どの価値を提供するか」
これからの会社に問われるのは、
「人を囲い込めるか」ではなく
「どの価値を提供できるか」
です。
具体的には、
・魅力的なプロジェクト
・成長機会
・公正な評価
・柔軟な働き方
といった要素です。
これらを提供できなければ、人材は自然と離れていきます。
個人と企業の関係は対等に近づく
この変化の本質は、関係性の変化です。
従来は、
・企業が選ぶ
・個人が従う
という構造でした。
しかし今後は、
・企業が選ばれる
・個人が選択する
という関係に近づきます。
完全な対等ではありませんが、交渉関係としての性質が強まります。
結論
会社とは何のために存在するのか。
その答えは、
「個人では実現できない価値を創出するため」
にあります。
働き方や雇用形態がどれだけ変化しても、この本質は変わりません。
一方で、
・人材の囲い込み
・時間による管理
・曖昧な評価
といった従来の手法は通用しなくなります。
これからの会社は、
・機会を設計し
・価値創出を支え
・個人と接続する
存在へと進化する必要があります。
この転換に対応できるかどうかが、企業の存続を左右することになるでしょう。
参考
日本経済新聞 2026年4月27日 朝刊
短時間正社員、育児以外でも 介護や副業と両立 中小、優秀な人材確保