生成AIの普及によって、企業や個人事業主が作成する文書のあり方が大きく変わり始めています。
ChatGPTなどの生成AIを活用して、
- 議事録
- 提案書
- 業務マニュアル
- 契約書のたたき台
- 企画書
- 社内報告書
などを作成することが珍しくなくなりました。
一方で、こうしたAI作成文書について、
「電子帳簿保存法の対象になるのか」
「どのように保存すべきなのか」
という疑問を持つ経営者や経理担当者も増えています。
今回は、AI時代に求められる文書管理の考え方について整理してみます。
電子帳簿保存法の本来の目的
電子帳簿保存法は単なるデジタル化推進の法律ではありません。
本来の目的は、
- 国税関係帳簿の保存
- 国税関係書類の保存
- 電子取引データの保存
を適正に行うことです。
つまり重要なのは、
「AIが作ったかどうか」
ではなく、
「税務上保存義務がある文書かどうか」
です。
この視点を理解することが出発点になります。
AI作成文書はすべて保存対象なのか
結論から言えば、AIが作成した文章だからという理由だけで電子帳簿保存法の対象になるわけではありません。
例えば、
- ブログ記事
- 社内メモ
- アイデア整理資料
- プレゼン原稿
などは、通常は電子帳簿保存法上の保存義務の対象ではありません。
一方で、
- 請求書
- 見積書
- 契約書
- 発注書
- 領収書
など税務上重要な取引に関係する文書は、AIが作成した場合であっても保存対象になる可能性があります。
重要なのは文書の内容と用途です。
電子取引データとの関係
近年特に重要になっているのが電子取引データです。
メールやクラウドを通じて受領した請求書や契約書は電子取引データに該当する場合があります。
例えば、
AIを活用して契約書案を作成し、
メールで相手方とやり取りし、
電子契約サービスで締結した場合、
最終的な契約データや関連する電子取引情報は保存対象となる可能性があります。
AIそのものよりも、その後の取引プロセスに注目する必要があります。
AI生成データの管理リスク
AI時代ならではの課題もあります。
生成AIでは短時間で大量の文書を作成できます。
その結果、
- 最新版が分からない
- 修正履歴が残らない
- 誰が作成したか不明
- 保存場所が統一されていない
といった問題が発生しやすくなります。
従来よりも文書量が急増するため、保存ルールの整備が重要になります。
税務調査で確認されるポイント
今後の税務調査ではAI利用そのものよりも、
- 取引証憑の保存状況
- 電子データの検索性
- 真実性の確保
- 保存期間の管理
などが確認されると考えられます。
AIで作成した請求書であっても、人間が作成した請求書であっても、税務上の保存義務に違いはありません。
重要なのは証憑として適切に管理されているかどうかです。
企業に求められるAI文書管理体制
AI活用が進む企業では、新たな文書管理ルールが必要になります。
例えば、
- AI利用ルールの整備
- 保存対象文書の明確化
- ファイル命名規則の統一
- クラウド保存先の一元化
- バックアップ体制の構築
などです。
AIは業務効率を高めますが、管理ルールがなければ情報資産が散逸する危険もあります。
経営者は生産性向上と統制強化を両立させなければなりません。
2040年の文書管理の姿
2040年には企業文書の多くがAIによって作成される可能性があります。
議事録も契約書案も提案書も、まずAIが下書きを作り、人間が確認する流れが一般化するでしょう。
そのとき重要になるのは、
「誰が作成したか」
ではなく、
「どのように保存し、いつでも説明できる状態にあるか」
です。
電子帳簿保存法も、AI時代の実務に合わせて運用が進化していくと考えられます。
結論
AIが作成した文章や資料だからといって、すべてが電子帳簿保存法の対象になるわけではありません。重要なのはAI利用の有無ではなく、その文書が税務上保存義務のある取引情報に該当するかどうかです。
しかしAIの普及によって文書量は爆発的に増加します。これまで以上に保存ルールや管理体制の整備が重要になるでしょう。
AI時代の文書管理とは、単なる保存作業ではありません。企業の信頼性を支える重要な経営基盤です。これからの経営者にはAI活用力だけでなく、AIが生み出す情報資産を適切に管理する能力も求められる時代になるのではないでしょうか。
参考
税のしるべ
2026年6月1日
連載「インボイス制度の再確認」税理士・森田 修
第8回/電気通信利用役務の提供に係るインボイスの保存