新NISA制度の開始によって、多くの人が資産形成に投資を活用する時代になりました。
人生100年時代を迎え、退職後も投資を続ける人が増えています。その結果、相続財産の中にNISA口座の資産が含まれるケースも今後ますます増えていくでしょう。
しかし、NISAは通常の証券口座とは異なる非課税制度です。
そのため、
「NISAの資産は相続できるのか」
「非課税枠は引き継げるのか」
「相続後はどう管理するのか」
といった疑問を持つ人も少なくありません。
今回はNISA口座と相続の関係について考えてみたいと思います。
NISA口座の資産も相続財産になる
まず基本的な点として、NISA口座で保有している株式や投資信託は相続財産になります。
被相続人が亡くなった時点で保有していた資産は、
・国内株式
・投資信託
・ETF
・REIT
などであっても通常の金融資産と同様に相続の対象になります。
そのため、
「NISAだから相続できない」
ということはありません。
預金や一般の証券口座と同じように相続人へ引き継がれます。
非課税制度そのものは相続できない
一方で誤解されやすいのが非課税枠です。
NISAの最大の特徴は、一定の範囲内で運用益や配当金が非課税になることです。
しかし、この非課税制度は口座名義人本人のための制度です。
そのため、本人が亡くなった場合には非課税枠そのものは終了します。
つまり、
資産は相続できる
非課税枠は相続できない
ということになります。
これは相続対策を考える上で非常に重要なポイントです。
相続人のNISA口座へ移すことはできない
よくある誤解として、
「親のNISA資産を子どものNISA口座へそのまま移せるのではないか」
という考えがあります。
しかし、そのような制度はありません。
相続した資産は相続人名義の証券口座へ移管されます。
その後、
・保有を続ける
・売却する
・新たにNISAで買い直す
などの選択を行うことになります。
親の非課税枠を子どもが引き継ぐことはできないのです。
相続税評価はどうなるのか
NISA口座であっても相続税の計算方法は基本的に変わりません。
相続税の対象となる評価額は、亡くなった日の時価を基準として計算されます。
つまり、
「NISAだから相続税も非課税」
ではありません。
NISAは所得税や住民税の運用益課税を非課税にする制度であり、相続税そのものを軽減する制度ではないからです。
この点も誤解しやすいポイントです。
相続開始時の時価が新たな取得価額になる
相続後の税金を考えるうえで重要なのが取得価額です。
NISA口座内の資産は、相続発生日の時価で相続人へ引き継がれます。
例えば、
被相続人の取得価額 500万円
相続時の時価 900万円
だった場合、被相続人が生きていれば400万円の値上がり益があります。
しかし相続人は900万円を基準として資産を引き継ぎます。
その後、
1,000万円で売却した場合
課税対象となる利益は100万円です。
相続前の値上がり分まで課税されるわけではありません。
人生100年時代とNISAの相続
新NISAは長期投資を前提とした制度です。
若い世代だけでなく、高齢者の利用も急速に広がっています。
人生100年時代では、
65歳から投資を始める
70歳でNISAを活用する
80歳でも資産運用を続ける
というケースも珍しくなくなるでしょう。
その結果、相続財産の中にNISA資産が含まれることが当たり前になる可能性があります。
今後は相続人側にもNISA制度の理解が求められる時代になるでしょう。
資産の所在を家族に伝えることが重要
NISAの相続で最大の問題は制度ではありません。
口座の存在が分からないことです。
ネット証券を利用している場合、
・通帳がない
・郵送物が少ない
・店舗がない
ため、相続人が気付かないことがあります。
そのため、
どこの証券会社を利用しているのか
どの銀行と連携しているのか
を一覧化しておくことが重要です。
デジタル終活の観点からも、資産の見える化はますます重要になっています。
結論
NISA口座の資産は相続財産として相続人へ引き継がれます。
しかし、NISAの非課税枠そのものは相続できません。
資産は引き継げても制度は引き継げないという点が、NISA相続の最大の特徴です。
人生100年時代では、NISAを利用する高齢者が増え、相続財産に占める金融資産の割合も高まっていくでしょう。
その中で重要なのは、制度の仕組みを理解することだけではありません。
どこに資産があるのかを家族が把握できる状態にしておくことです。
NISA時代の相続対策とは、非課税制度を活用することだけでなく、資産を確実に次世代へ引き継ぐ準備でもあるのです。
参考
金融庁「NISAに関するQ&A」
金融庁「NISAを知る」
日本証券業協会「相続手続きに関する資料」
日本経済新聞 2026年6月3日夕刊「マネー相談 黄金堂パーラー〉終活(下)デジタル遺品 リスト化、不要な口座は解約」