令和8年分の年末調整では、基礎控除や給与所得控除だけでなく、生命保険料控除にも注目したい改正があります。
年齢23歳未満の扶養親族を有する場合について、一般生命保険料控除に特例が設けられるためです。
生命保険料控除というと、毎年秋ごろに保険会社から届く控除証明書を会社へ提出する手続きという印象が強いかもしれません。
しかし、令和8年分については扶養親族の年齢によって控除の計算が変わる可能性があります。
子どもなどを扶養している家庭では、例年以上に確認しておきたいポイントです。
生命保険料控除とは何か
生命保険料控除は、一定の生命保険料を支払った場合に受けられる所得控除です。
所得税は一年間の収入そのものに直接税率を掛けて計算するわけではありません。
給与所得者であれば、まず給与収入から給与所得控除を差し引いて給与所得を求めます。
そこから基礎控除や社会保険料控除、扶養控除などの所得控除を差し引きます。
生命保険料控除も、この所得控除の一つです。
控除によって課税対象となる所得が小さくなり、その結果として所得税負担が軽くなる仕組みです。
支払った保険料が全部控除されるわけではない
生命保険料控除について誤解しやすいのが、支払った保険料の全額を所得から差し引けるわけではないことです。
生命保険料控除には、保険契約の種類や支払った保険料などに応じた計算方法があります。
一定額を超えて保険料を支払っても、所得控除が同じ金額だけ増え続けるわけではありません。
また、控除額が増えた金額だけ所得税が減るわけでもありません。
所得から控除額を差し引き、その結果小さくなった課税所得を基に税額を計算します。
保険料の支払額、所得控除額、実際の減税額はそれぞれ違うものとして理解する必要があります。
令和8年分では23歳未満がポイントになる
令和8年分では、年齢23歳未満の扶養親族を有する場合について生命保険料控除の特例が設けられています。
対象となる場合、新契約に係る一般生命保険料控除の計算が拡充されます。
子どもなどを扶養する世帯について、生命保険料控除を通じて税負担を軽減する仕組みです。
そのため、令和8年分の年末調整では生命保険料控除証明書だけでなく、自分に23歳未満の扶養親族がいるかどうかも重要な確認事項になります。
一般生命保険料控除の上限が変わる
特例の対象となる場合、新契約に係る一般生命保険料控除の所得税の控除額は最高6万円となります。
通常の新契約に係る一般生命保険料控除の最高額は4万円です。
したがって、条件を満たす人については一般生命保険料控除の枠が拡大することになります。
ただし、保険料を支払っているすべての人について一律に控除額が2万円増えるという意味ではありません。
実際の控除額は支払った保険料などに応じた計算によって決まります。
生命保険料控除全体の上限にも注意する
一般生命保険料控除の上限が拡大するという部分だけを見ると、生命保険料控除全体の上限までそのまま増えるように感じるかもしれません。
しかし、ここは分けて考える必要があります。
生命保険料控除には、一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料などの区分があります。
今回の特例によって新契約に係る一般生命保険料控除の上限が拡大しても、生命保険料控除全体については別に限度額があります。
したがって、一般生命保険料控除が増えた金額だけ、必ず所得控除全体が増えるとは限りません。
自分がどの種類の保険に加入し、それぞれいくら保険料を支払っているのかを確認する必要があります。
扶養親族の年齢確認も重要になる
今回の特例では23歳未満という年齢がポイントになります。
年末調整では、単に子どもがいるかどうかだけで判断するのではなく、扶養親族に該当するか、年齢要件を満たしているかなどを確認する必要があります。
さらに令和8年度税制改正では、扶養親族などの所得要件についても見直しが行われています。
そのため、扶養親族の年齢だけでなく、その親族の所得状況も合わせて確認することが重要です。
特に大学生年代の子どもがアルバイトをしている家庭などでは、年間の所得を確認しておいた方がよいでしょう。
年末調整では控除証明書を確認する
生命保険料控除を年末調整で受ける場合には、保険会社などから交付される生命保険料控除証明書が重要になります。
年末になると会社から年末調整関係の書類が配布され、保険会社からも控除証明書が届きます。
毎年同じ保険に加入していると前年と同じように処理してしまいがちですが、令和8年分については特例の対象になる可能性があります。
前年の控除額をそのまま当てはめるのではなく、令和8年分の制度に基づいて確認することが大切です。
保険に入れば税金で得をするという制度ではない
生命保険料控除が拡充されると、節税のために生命保険へ加入した方がよいと考える人もいるかもしれません。
しかし、生命保険は本来、死亡や病気など一定のリスクに備えるための商品です。
保険料として支払った金額がそのまま税金から戻ってくるわけではありません。
生命保険料控除は、必要な保障を確保するために加入した保険について税制上一定の配慮をする仕組みと考えた方がよいでしょう。
税制上の控除だけを理由に保険契約を判断するのではなく、必要な保障と保険料負担を合わせて考えることが重要です。
結論
令和8年分では、23歳未満の扶養親族を有する場合について生命保険料控除の特例が設けられています。
対象となる場合、新契約に係る一般生命保険料控除の所得税の控除額は最高6万円となり、通常の最高4万円から拡充されます。
ただし、すべての対象者について控除額が一律2万円増えるわけではありません。
実際の保険料支払額や契約内容、生命保険料控除全体の限度額なども確認する必要があります。
令和8年分の年末調整では、生命保険料控除証明書を前年と同じように提出するだけではなく、23歳未満の扶養親族がいるか、その親族が税制上の要件を満たしているかまで確認することが大切です。
基礎控除や給与所得控除だけでなく、家族構成によって変わる控除にも目を向けることが、令和8年分の年末調整を正しく理解するポイントになります。
参考
税のしるべ 2026年9月7日 8年分年末調整のしかたを公表、昨年との変更点や留意事項など掲載
国税庁 2026年8月31日 令和8年分 年末調整のしかた