2040年問題とは何か 85歳以上が増えると日本の医療提供体制が変わる理由編

人生100年時代
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日本の高齢化問題というと、これまでは2025年問題がよく取り上げられてきました。

団塊の世代が75歳以上となり、医療や介護の需要が増えることが大きな課題だったからです。

しかし、その先には2040年というもう一つの大きな節目があります。

2040年に向けて重要になるのは、単に高齢者が増えることではありません。

より年齢の高い85歳以上の人が増え、医療と介護を同時に必要とする人が増える一方で、医療や介護を支える現役世代は減少していきます。

つまり2040年問題とは、患者側の需要が変化するだけではなく、医療を提供する側の人材不足も同時に進む問題です。

そのため現在と同じ数の病院や病床を維持することではなく、高度急性期、急性期、包括期、慢性期、在宅医療、介護まで含めた医療提供体制そのものを組み替える必要があります。

2040年問題とは何か

2040年問題とは、2040年前後に日本の人口構造が大きく変化することで、社会保障や医療、介護などに生じるさまざまな課題を表す言葉です。

医療の分野では二つの変化を同時に考える必要があります。

一つは高齢化です。

もう一つは人口減少です。

高齢化によって医療や介護を必要とする人が増える一方、人口減少によって医療や介護を提供する働き手は少なくなります。

需要と供給の両側から医療提供体制に大きな変化が起きるわけです。

2025年問題との違い

2025年問題では、団塊の世代が75歳以上になることが大きなテーマでした。

75歳以上になると、一般的に医療や介護を利用する機会が増えます。

そのため社会保障費や医療提供体制への影響が注目されてきました。

2040年に向けては、さらに高齢の85歳以上の人たちの増加が重要になります。

75歳の人と90歳の人では、必要となる医療や介護が同じとは限りません。

年齢が高くなるほど複数の疾患を抱えたり、身体機能が低下したり、介護を必要としたりする可能性が高くなります。

したがって2040年問題では、高齢者の人数だけでなく高齢者の中の年齢構成まで見る必要があります。

85歳以上が増えると何が変わるのか

85歳以上になると、一つの病気だけを治療すれば医療が完結するとは限らなくなります。

たとえば肺炎で入院した患者がいるとします。

糖尿病もある。

心不全もある。

腎機能も低下している。

認知機能にも問題がある。

さらに足腰が弱っていて、一人で生活することが難しい。

このような患者では、肺炎を治療するだけでは自宅へ戻れない場合があります。

病気の治療と同時に身体機能や生活環境まで考える必要があります。

医療と介護の複合ニーズとは何か

高齢になるほど重要になるのが、医療と介護の複合ニーズです。

病気を治療するだけであれば医療が中心になります。

しかし食事や入浴、排せつ、移動などの日常生活に支援が必要になれば介護も必要です。

85歳以上の高齢者が増えると、医療だけ必要な人、介護だけ必要な人という単純な区分では対応しにくくなります。

医療を受けながら介護サービスを利用する。

自宅で訪問診療を受けながら訪問介護も利用する。

介護施設で生活しながら医療を受ける。

こうした組み合わせが重要になります。

高齢者救急が増える

85歳以上の増加は救急医療にも影響します。

高齢者は転倒や肺炎、心不全の悪化などをきっかけに救急搬送されることがあります。

ただし救急搬送された高齢者のすべてが、高度な急性期治療を必要とするわけではありません。

一定の治療を行い、早期からリハビリや退院支援を始めることが適している患者もいます。

そのため2040年の救急医療では、重症患者を受け入れる高度急性期や急性期の拠点と、高齢者救急などを幅広く受け入れる包括期の役割分担が重要になります。

急性期病床を増やせば解決するわけではない

高齢者が増えるのであれば、病院の病床を増やせばよいように思えるかもしれません。

しかし高齢者の増加と日本全体の人口減少は同時に進みます。

地域によってはすでに人口そのものが大きく減少しています。

さらに将来的には高齢者人口も減少へ向かう地域があります。

一時的な需要だけを見て大量の病床を作れば、その後病床が余る可能性があります。

建物だけ残っても、医師や看護師を確保できなければ病床を動かすこともできません。

必要なのは病床を増やすことではなく、病床機能を高齢者中心の医療需要に合わせて組み替えることです。

急性期から包括期への転換

これまでの地域医療構想では、過剰な急性期病床を減らし、回復期病床を増やすことが重要な課題でした。

2040年に向けた新しい構想では、高齢者救急なども念頭に置いた包括期の機能が重要になります。

高度な手術や集中治療が必要な患者は急性期拠点へ集めます。

一方、高齢者に多い救急患者については、治療だけでなくリハビリや在宅復帰まで幅広く対応できる病院が受け入れます。

同じ急性期という名前の病床を全国に広く残すのではなく、患者像に応じて機能を分けるわけです。

病床の集約化が必要になる

2040年問題では病院の集約化も避けて通れません。

人口が減っても、複数の病院がそれぞれ現在と同じ急性期機能を維持すれば、医療人材が分散します。

それぞれの病院に医師を配置する。

看護師を配置する。

検査設備を置く。

24時間の救急体制を維持する。

患者数が減る一方でこの体制を維持すれば、医療資源を効率的に利用することが難しくなります。

そこで高度な医療を一定の拠点病院へ集め、周辺病院との役割分担を進める必要があります。

病床数より医療人材が問題になる

2040年を考えるとき、非常に重要なのが医療人材です。

病床は建物とベッドがあれば存在します。

しかし患者を受け入れるには人が必要です。

医師。

看護師。

薬剤師。

検査技師。

リハビリを担う専門職。

さらに在宅や介護の現場でも多くの人材が必要です。

働く世代が減少すれば、病床があっても人材不足によって稼働できないという問題が大きくなる可能性があります。

2040年の医療では、病床数だけを確保する政策から、人材をどこへ重点的に配置するかという政策への転換が必要になります。

地方と都市部では問題が違う

2040年問題は全国一律に進むわけではありません。

地方ではすでに人口減少が進み、患者数そのものが減っている地域があります。

こうした地域では、病床や病院の維持が問題になります。

一方、大都市部では高齢者数の増加によって医療や介護需要が増える地域もあります。

同じ2040年でも、地方では病院の集約化が中心課題となり、都市部では増加する高齢患者をどう受け入れるかが大きな課題になる可能性があります。

全国一律ではなく、地域ごとの人口構造を見ながら医療提供体制を考える必要があります。

在宅医療の役割が大きくなる

すべての高齢者を病院で支えることはできません。

そこで在宅医療の役割が重要になります。

急性期の治療が終わった患者には、必要に応じて包括期などでリハビリや退院支援を行います。

その後、自宅などの生活の場へ戻ります。

通院が難しい場合には訪問診療や訪問看護を利用します。

状態が悪化した場合には病院が受け入れます。

病院と在宅を完全に分けるのではなく、患者の状態に応じて行き来できる仕組みが必要になります。

介護の受け皿も必要になる

病床を減らして在宅医療を増やすだけでは2040年問題は解決しません。

高齢者には介護が必要になる場合があるからです。

病院から退院できる医学的な状態になっても、自宅で生活できるとは限りません。

家族が介護できない。

一人暮らしである。

認知機能が低下している。

こうした場合には介護サービスが必要です。

病床再編と同時に、訪問介護や施設介護などを含めた地域の介護提供体制も考える必要があります。

2040年までという長期計画の難しさ

2040年を目標とする政策には、もう一つ難しい問題があります。

将来予測には不確実性があることです。

人口推計はできますが、医療技術がどこまで進歩するかを正確に予測することはできません。

オンライン診療がさらに普及する可能性があります。

治療方法が変わり、現在は入院が必要な病気でも将来は短期間で治療できるようになるかもしれません。

反対に、新しい感染症など予想できない出来事が発生する可能性もあります。

そのため2040年の姿を一度決めて固定するのではなく、途中で計画を見直せる仕組みが必要になります。

地域医療構想は病床削減計画ではない

地域医療構想について、病院や病床を減らすための政策と理解されることがあります。

しかし本来の目的は、将来の医療需要に合わせて医療提供体制を作り直すことです。

必要な病床は残す。

不足する機能は増やす。

過剰な機能は減らす。

高度な医療は集約する。

在宅で対応できる患者は地域で支える。

こうした医療資源の再配置が中心になります。

人口が減るから一律に病床を減らすという単純な政策ではありません。

2040年問題は医療の量から配置への問題

これまで日本では、医療需要の増加に対応するため、医療提供体制を拡大することが大きな課題でした。

しかし人口減少社会では状況が変わります。

全国で同じように病院や病床を増やす時代ではありません。

ある地域では病床を減らす。

ある地域では高齢者向けの医療機能を増やす。

高度な医療は拠点へ集める。

在宅医療を整備する。

限られた医療人材を必要な場所へ配置する。

つまり2040年問題では、医療資源の量だけではなく、どこにどの機能を配置するかが重要になるのです。

結論

2040年問題とは、85歳以上を中心とする高齢者が増え、医療と介護を同時に必要とする人が増える一方で、人口減少によって医療や介護を支える働き手が減少していく問題です。

重要なのは、高齢者が増えるから病院のベッドを増やせばよいという単純な話ではないことです。

85歳以上の患者では、急性期治療だけでなく、リハビリ、退院支援、在宅医療、介護まで一体として必要になるケースが増えます。

そのため高度な急性期医療を拠点病院へ集約し、高齢者救急などを担う包括期を整備し、さらに在宅医療や介護へつなぐ医療提供体制が必要になります。

同時に医師や看護師などの働き手も減るため、すべての病院を現在と同じ形で維持することは難しくなります。

2040年に向けた地域医療構想の本当の課題は、病床を何床減らすかだけではありません。

限られた医療人材と財源を使いながら、どの地域にどの病院を残し、どの医療機能を集約し、病院の外で高齢者をどう支えるのかという医療提供体制全体の再設計です。

2040年問題とは、高齢者が増える問題であると同時に、人口が減る日本でこれまでの医療提供体制をそのまま維持できなくなる問題なのです。

参考

日本経済新聞 2026年8月27日朝刊 2040年の地域医療構想上 病床の取引市場制度 創設を

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