重加算税は「過少申告」だけでは課されない 公表裁決が示した重要な判断基準

税理士
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重加算税は、税務調査の中でも最も重いペナルティの一つです。そのため、「申告漏れがあれば重加算税になる」と誤解している方も少なくありません。

しかし、国税不服審判所が公表した令和7年10月20日付の裁決は、その考え方に重要な整理を示しました。

この裁決では、複数年にわたり過少申告が続いていたにもかかわらず、重加算税の要件は満たさないと判断されています。

この判断は、個人事業者だけでなく、中小企業経営者や税理士にとっても非常に参考になる内容です。

重加算税は最も重い加算税

税務上の申告誤りには、状況に応じて様々な加算税が課されます。

その中でも重加算税は、「故意に事実を隠したり、事実を偽ったりした場合」に課される特別な制裁です。

単なる計算ミスや勘違いではなく、納税者が積極的に税務当局を欺こうとしたことが必要になります。

したがって、

「申告額が少なかった」

という事実だけでは足りません。

重要なのは、その過少申告に至る過程で、隠蔽や仮装という積極的な行為が存在したかどうかです。

今回の事案はどのようなものだったのか

今回の請求人は、タイル工事業を営む個人事業者でした。

仕事は一社から継続的に受注し、請負代金は妻名義の銀行口座へ振り込まれていました。

税務調査の結果、数年間にわたり実際の売上より少ない金額で申告していたことが判明します。

税務署は、

・妻名義口座を利用していたこと
・請求書を自ら作成していたこと
・実際の売上を把握していたこと
・納税できる金額に合わせて申告額を決めていたこと

などを理由として、重加算税を課しました。

一見すると、故意に税金を少なくしていたようにも見える事案です。

しかし、審判所は異なる結論を導きました。

「隠蔽・仮装」が認められなかった理由

審判所が重視したのは、「積極的な隠蔽行為」が存在したかどうかでした。

たしかに売上は妻名義の口座へ入金されていました。

しかし、その売上自体は申告されていました。

もちろん金額は不足していましたが、売上そのものを完全に隠していたわけではありません。

また、

・架空経費を計上した
・帳簿を改ざんした
・証拠書類を廃棄した
・二重帳簿を作成した

といった典型的な隠蔽・仮装行為も認められませんでした。

つまり、

「過少申告はあった」

ことと、

「隠蔽・仮装があった」

ことは別問題であると整理したのです。

過少申告と重加算税は同じではない

今回の裁決は、税務実務の重要な原則を改めて確認しています。

それは、

「故意の過少申告」

「重加算税」

は必ずしも一致しないということです。

もちろん、意図的に税金を少なく申告したこと自体は問題です。

その結果、更正処分や過少申告加算税などが課される可能性はあります。

しかし、重加算税まで課すためには、さらに一段高いレベルの不正行為が必要になります。

この区別は、国税通則法の趣旨そのものでもあります。

税務調査では何が重要になるのか

税務調査では、売上漏れだけではなく、その背景まで詳しく確認されます。

例えば、

・帳簿は正しく保存されていたか
・請求書や領収書は残っているか
・銀行口座は適切に管理されているか
・説明に一貫性があるか

なども重要な判断材料になります。

結果だけではなく、その過程や管理状況が重視されるのです。

その意味では、日頃から適切な帳簿管理を行い、証拠書類を整理しておくことが最大のリスク対策になります。

税理士にとっても参考になる裁決

この裁決は、税理士にとっても非常に参考になります。

税務調査では、「申告漏れがある以上、重加算税は避けられない」と考えがちですが、法律上はそうではありません。

本当に隠蔽・仮装が存在したのか。

納税者に外部からうかがえる特段の不正行為があったのか。

これらを個別具体的に検討する必要があります。

今回の裁決は、重加算税の適用範囲を改めて整理した実務上重要な判断として、今後も参考になるでしょう。

結論

今回の公表裁決は、「過少申告」と「重加算税」は別の問題であることを改めて示しました。

複数年にわたり過少申告が続いていたとしても、それだけでは重加算税は課されません。

税務当局は、隠蔽または仮装という積極的な行為や、当初から過少申告を意図し、その意図を外部からもうかがえる特段の行動があったことまで立証する必要があります。

納税者にとってはもちろん、税理士や経営者にとっても、重加算税の判断基準を正しく理解することは、税務調査への適切な対応につながります。

制度の趣旨を理解し、日頃から適正な帳簿管理と誠実な申告を心掛けることが、最も重要な税務リスク対策であると言えるでしょう。

参考

税のしるべ

2026年7月13日

判決と裁決「公表裁決」

【公表裁決】過少とはいえ申告、隠蔽または仮装に該当する積極的な行為はなく重加算税の要件満たさず

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