遺贈寄付とは何か 亡くなった後に大学へ財産を残すという選択肢編

税理士
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大学への寄付は、生きている間に行うものだけではありません。

自分が亡くなった後、遺産の一部を母校や応援したい大学へ寄付する方法があります。

これが遺贈寄付です。

例えば預貯金の一部を奨学金として使ってほしい、保有している財産を研究活動に役立ててほしいと考え、遺言によって大学へ財産を残すことができます。

長寿化が進み、子どもがいない人や、相続人へ財産を残したうえで残りを社会のために使いたいと考える人もいます。

大学にとって遺贈寄付は、大口の寄付につながる可能性がある重要な資金調達方法です。

寄付者にとっても、自分が生涯をかけて築いた財産の一部を次の世代の教育や研究へ残す方法になります。

遺贈寄付とは何か

遺贈とは、遺言によって自分の財産を特定の人や団体へ無償で譲ることです。

その仕組みを公益的な目的への寄付に利用するのが遺贈寄付です。

例えば、

預貯金のうち一千万円を母校へ遺贈する

財産の一定割合を大学へ遺贈する

特定の有価証券を大学へ遺贈する

といった内容を遺言に定めることが考えられます。

通常の寄付では本人が生きている間に財産を大学へ渡します。

遺贈寄付では、本人が亡くなったことによって遺言の内容が実行されます。

そのため、生前の生活資金を確保しながら、残った財産を社会に役立てることができます。

遺言によって大学へ財産を残す

遺贈寄付を行う場合には、基本的に遺言を作成します。

遺言によって、どの大学へ、どの財産を、どのように渡すのかを定めます。

単に生前に家族へ大学へ寄付したいと話していただけでは、希望通りに実行されるとは限りません。

自分の死後に確実に寄付を実現したいのであれば、法的に有効な遺言を残すことが重要です。

遺言には自筆証書遺言や公正証書遺言などがあります。

財産の内容が複雑な場合や、相続人との関係を考慮する必要がある場合には、専門家へ相談しながら作成することも考えられます。

また、大学によっては遺贈寄付について専用の相談窓口を設けています。

寄付を希望する大学がどのような財産を受け入れているのかを生前に確認しておくことも重要です。

現金や預貯金は利用しやすい

遺贈寄付で比較的分かりやすいのが、現金や預貯金です。

例えば、

預金のうち五百万円を大学の奨学金基金へ寄付する

財産の一〇%を大学へ遺贈する

といった方法があります。

一定額を指定する方法であれば、大学側も受け入れる財産の内容を把握しやすくなります。

一方、財産の一定割合を指定する方法なら、遺言を作成した後に財産額が増減しても対応しやすいという特徴があります。

長期間にわたって保有資産は変化する可能性があります。

そのため、どのような指定方法が自分の希望に合うのかを考えておく必要があります。

有価証券を遺贈する場合

株式や投資信託などの有価証券を保有している人も増えています。

こうした金融資産を大学へ遺贈したいと考えることもあります。

ただし、大学がすべての有価証券をそのまま受け入れられるとは限りません。

価格変動の大きい資産や換金が難しい資産については、大学側が受け入れに慎重になる場合があります。

そのため、遺言で特定の株式をそのまま大学へ渡すと決める前に、大学側の受け入れ方針を確認することが重要です。

必要に応じて、財産を換金したうえで一定額を寄付する仕組みを検討することも考えられます。

不動産はさらに慎重な検討が必要になる

土地や建物を大学へ遺贈することも考えられます。

しかし、不動産は現預金と比べて受け入れが難しい財産です。

建物には維持管理費がかかります。

土地によっては固定資産税や管理上の問題があります。

売却しようとしても、すぐに買い手が見つかるとは限りません。

境界や権利関係に問題がある不動産もあります。

大学にとって利用価値のない不動産を受け取れば、寄付どころか負担になる可能性があります。

そのため大学によっては、不動産そのものではなく、売却して現金化した後の資金を寄付してもらう方法を案内する場合があります。

不動産を遺贈したい場合には、生前に大学へ相談しておくことが特に重要です。

相続人への配慮も必要になる

遺贈寄付を考える場合には、相続人との関係も重要です。

自分の財産だから自由に遺言を書けばよいと考えるかもしれませんが、一定の相続人には遺留分が認められています。

遺留分とは、一定の相続人に法律上保障された最低限の遺産取得割合です。

遺贈によって相続人の遺留分を侵害すると、死後に遺留分をめぐる問題が生じる可能性があります。

大学側も、遺族との紛争が予想される寄付を積極的に望むとは限りません。

そのため、全財産を大学へ寄付するという方法だけではなく、家族に必要な財産を残したうえで一部を大学へ寄付する方法もあります。

自分の社会貢献への意思と家族への配慮を両立させることが重要です。

寄付金の使い道を指定することもできる

遺贈寄付では、大学へ財産を渡すだけではなく、どのような目的に使ってほしいのかを希望することもできます。

例えば奨学金として利用してほしいと考える人がいます。

自分が学んだ学部の研究を支援したい人もいるでしょう。

若手研究者を支援したい、留学生のために使ってほしいといった希望も考えられます。

ただし、使い道を細かく限定しすぎると、将来大学が資金を利用しにくくなる可能性があります。

遺贈寄付は数十年後に実行される場合もあります。

その時点で学部や研究組織が再編されている可能性もあります。

そのため、寄付目的について大学と事前に相談し、将来も実行可能な内容にしておくことが重要です。

遺贈寄付を基金として残す方法もある

遺贈された財産を大学基金に組み入れる方法もあります。

例えば一千万円を寄付して、その資金をすぐに使い切るのではなく、基金として長期的に管理します。

基金を運用し、その収益を毎年奨学金や研究費に利用することも考えられます。

この方法なら、一度の遺贈寄付を長期間にわたって大学の教育や研究に役立てることができます。

寄付者の名前を冠した基金を設けるケースもあります。

自分が亡くなった後も、その基金によって学生や研究者が支援され続ければ、財産を次の世代へつなぐことができます。

大学にとって重要な長期資金になる

遺贈寄付は大学のファンドレイジングにとって重要な分野です。

通常の寄付では、一人が毎年数万円程度を寄付するケースが多くあります。

一方、遺贈では生涯を通じて形成した財産の一部を寄付するため、比較的大きな金額になる可能性があります。

こうした資金を大学基金へ組み入れることができれば、大学の長期的な財務基盤を強化できます。

少子化によって授業料収入への依存が難しくなるなか、大学には寄付、基金、資産運用などを組み合わせた財源の多様化が求められます。

遺贈寄付は、その重要な選択肢の一つです。

生前から大学との関係を築く

遺贈寄付は死後に実行されますが、大学との関係は生前から築くことができます。

例えば卒業生が毎年少額の寄付を続けます。

大学から教育や研究について定期的に報告を受けます。

キャンパスを訪れたり、公開講座に参加したりすることもあります。

そうした長期間の関係の中で、自分の財産の一部を最終的に母校へ残したいと考える人が出てきます。

大学側から見れば、突然遺贈寄付を求めるのではなく、卒業生や支援者との信頼関係を長年積み重ねることが重要です。

少額の継続寄付と遺贈寄付は、まったく別のものではありません。

長期間大学を応援してきた人が、最後に行う寄付として遺贈を選択することがあります。

結論

遺贈寄付とは、遺言によって自分の死後に財産の全部または一部を大学などへ寄付する方法です。

現金や預貯金だけでなく、有価証券や不動産などを対象とすることも考えられます。

ただし、有価証券や不動産については大学がそのまま受け入れられない場合があるため、生前に確認しておくことが重要です。

また、一定の相続人には遺留分があるため、家族への配慮も必要になります。

遺贈寄付の大きな特徴は、生前の生活資金を確保しながら、最終的に残った財産を次の世代のために利用できることです。

大学基金へ組み入れれば、一度の寄付を長期間にわたって学生や研究者の支援に利用することもできます。

大学への寄付は、生きている間だけの社会貢献ではありません。

自分が築いた財産をどこへ残し、どのような未来に役立ててもらうのかという人生最後の資産配分でもあります。

遺贈寄付は、自分の財産を次の世代の教育や研究へつなぐ一つの選択肢です。

参考

日本経済新聞 2026年8月18日 朝刊 大学、個人寄付呼び込む ふるさと納税活用し文化醸成

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