日本経済を支えているのは、自動車や機械などの輸出だと思っている人は少なくありません。
もちろん輸出は今でも重要ですが、現在の日本は、輸出以上に海外投資によって利益を得る国へと変化しています。
そのことを最もよく表しているのが「第一次所得収支」です。
経済ニュースでは「第一次所得収支が過去最高」「経常収支黒字を支えた」などと報じられますが、その意味はあまり知られていません。
今回は、第一次所得収支とは何か、なぜ日本最大の稼ぎ頭になったのかを分かりやすく解説します。
海外で得た利益を表す統計
第一次所得収支とは、日本企業や投資家が海外で保有する資産から得た所得と、海外の投資家が日本で得た所得との差額を示す統計です。
具体的には、
・海外子会社から受け取る配当金
・外国債券などから受け取る利息
・海外企業への出資による利益
・海外で働く人の給与など
が含まれます。
簡単に言えば、「海外で働いてくれる資産が生み出した利益」を表す数字です。
輸出中心の国から投資大国へ
高度経済成長期の日本は、輸出によって外貨を稼ぐ国でした。
しかし、その後、日本企業は世界各国へ工場を建設し、現地法人を設立し、多くの海外企業へ投資を行ってきました。
現在では、自動車メーカーや商社、金融機関、製薬会社など、多くの企業が海外で大きな利益を生み出しています。
つまり、日本はモノを輸出するだけではなく、海外で事業を行い、その利益を受け取る国へ変わってきたのです。
海外資産が利益を生み続ける
第一次所得収支が拡大している背景には、日本企業が長年積み上げてきた海外資産があります。
海外企業を買収したり、現地法人へ投資したりした資金は、その後も利益を生み続けます。
企業が毎年利益を上げれば、その一部は配当として日本へ戻ります。
海外で保有する債券からは利息が支払われます。
このように、一度投資した資産が継続的に収益を生み出すことが、第一次所得収支の特徴です。
そのため、景気が多少変動しても比較的安定した収入になりやすいと考えられています。
すべてが日本へ戻るわけではない
ただし、海外で得た利益がすべて日本国内へ送金されるわけではありません。
海外子会社が利益を新しい設備投資や事業拡大に充てる場合もあります。
現地で利益を再投資すれば、日本へ送金される金額は少なくなります。
また、送金しても円へ交換せず、ドルなどの外貨で保有する企業もあります。
このため、第一次所得収支が大きく黒字でも、それが直ちに円高につながるとは限りません。
経常収支を支える柱になった
現在の日本では、貿易収支が赤字になる年も珍しくありません。
資源価格の上昇やエネルギー輸入の増加によって、輸入額が輸出額を上回ることがあるためです。
それでも経常収支が黒字を維持できるのは、第一次所得収支の黒字が非常に大きいためです。
言い換えれば、日本は輸出だけで稼ぐ国ではなく、海外投資の利益によって経済を支える国へと変化したのです。
海外投資の成果は長い時間をかけて生まれる
第一次所得収支は、一年や二年で急に増えるものではありません。
海外工場の建設や企業買収など、何十年にもわたる投資の積み重ねが現在の利益につながっています。
過去の経営者が将来を見据えて行った投資が、現在の日本経済を支えているともいえます。
このことは、企業経営において長期的な視点がいかに重要かを示しています。
今後の課題もある
第一次所得収支は今後も重要な収入源になると考えられますが、課題もあります。
海外景気が悪化すれば、子会社の利益が減少し、配当も減る可能性があります。
政治情勢の変化や為替変動によって、海外資産の価値が変わることもあります。
また、海外企業との競争が激しくなれば、これまでのような高い利益を維持できるとは限りません。
海外資産から利益を得続けるためには、継続的な投資と競争力の維持が欠かせません。
結論
第一次所得収支とは、日本企業や投資家が海外で保有する資産から得る配当や利息などの所得を示す統計です。
現在では、日本の経常収支黒字を支える最大の柱となっており、日本経済にとって欠かせない存在になっています。
一方で、その利益がどこで使われるのか、円へ交換されるのか、海外で再投資されるのかによって、為替相場への影響は変わります。
「日本は輸出大国」というイメージだけでは、現在の経済を十分に理解することはできません。
海外で積み上げてきた資産が利益を生み続ける「投資大国」としての日本という視点を持つことが、これからの経済ニュースを読み解くうえで重要になるでしょう。
参考
日本経済新聞 2026年7月24日 朝刊
ポジション〉外資の日本企業買収、むしろ円安要因? 通説「対内投資増え円高」→先安観、利益はドルへ