地方税収が伸びる中で、必ず議論になるのが「税収の偏在」です。
とりわけ問題の中心にあるのが、法人住民税・法人事業税といういわゆる法人二税です。
企業の本社や大規模拠点が集中する地域に税収が集まりやすい構造は、地方間の財政格差を拡大させる要因となってきました。本稿では、法人二税の再配分の現状と限界、そして今後の制度の行方を整理します。
法人二税の本質:なぜ偏在が起きるのか
法人二税は、企業の利益や事業活動に対して課税される地方税です。
問題となるのは、課税の基準が「企業の所在地」に強く依存している点です。特に本社機能が集中する大都市では、実際の生産活動が地方にあっても、利益が本社に帰属し、税収も大都市に集中する傾向があります。
この構造により、
・東京など大都市で税収が膨らむ
・地方は企業活動があっても税収が伸びにくい
という格差が生まれます。
つまり偏在の原因は、単なる経済力の差ではなく、税制の設計そのものにあります。
これまでの対応:部分的な再配分の仕組み
これまで政府は、法人二税の偏在を是正するためにいくつかの制度を導入してきました。
代表的なのが、地方法人税です。
法人税の一部を国税として徴収し、それを地方交付税として再配分する仕組みで、直接的に地方間の格差を調整する役割を担っています。
また、法人事業税についても、外形標準課税などを通じて、利益だけでなく付加価値や資本規模に応じた課税へとシフトが進められてきました。
さらに、地方交付税制度そのものも、税収格差を埋めるための重要な再配分手段として機能しています。
ただし、これらはあくまで「部分的な調整」にとどまっています。
再配分が進まない理由
法人二税の再配分は長年議論されてきましたが、大きく進んでいないのには理由があります。
第一に、大都市側の反発です。
税収が多い自治体にとって、再配分は自らの財源を削ることを意味します。特に東京都のように、都市インフラや防災、交通、社会保障など多くの支出を抱える自治体は、「税収に見合った負担をしている」と主張します。
第二に、インセンティブの問題です。
再配分が強まりすぎると、自治体が企業誘致や産業振興に取り組む動機が弱まる可能性があります。努力して税収を増やしても他地域に配分されるのであれば、成長戦略の意味が薄れるという考え方です。
第三に、技術的な難しさです。
企業活動は複雑で、本社、工場、研究開発、販売拠点が全国に分散しています。どの地域にどれだけ税収を配分するのが公平なのかを定量的に判断するのは容易ではありません。
この三つの要因が、制度改革のスピードを遅らせています。
今後の議論の焦点
2026年度の税制改正大綱では、法人事業税の再配分について、翌年度以降に結論を得る方針が示されています。
今後の議論の焦点は、大きく三つに整理できます。
一つ目は、再配分の強化です。
地方法人税や交付税の配分割合を拡大し、地方への再配分を強める案です。格差是正の効果は大きいものの、大都市の財源縮小という課題を伴います。
二つ目は、課税基準の見直しです。
本社所在地だけでなく、従業員数、設備投資額、売上発生地などを基準に、税収を分散させる仕組みが検討されています。より実態に近い課税が可能になる一方、制度の複雑化が避けられません。
三つ目は、地方交付税の再設計です。
税収そのものを動かすのではなく、交付税を通じて再配分する方法です。ただし、この場合は「稼ぐ自治体」と「配分される自治体」の構図が固定化されやすく、根本的な解決にはなりにくい側面があります。
税制改革の限界:再配分だけでは解決しない
重要なのは、法人二税の偏在問題は、税制だけで完全に解決できるものではないという点です。
そもそも企業や人材が都市に集中している以上、税収も集中します。税制で無理に再配分を行っても、経済の実態と乖離すれば、制度は長続きしません。
また、再配分が進みすぎれば、
・大都市の投資余力の低下
・地方の自立インセンティブの低下
といった副作用も生じます。
つまり、税制による調整には必ずトレードオフがあります。
自治体が取るべき現実的な戦略
このような状況の中で、自治体が取るべき戦略は明確です。
第一に、再配分に依存しすぎないことです。
交付税や再配分は重要ですが、それに依存すると政策の自由度が下がります。自ら税源を生み出す力を持つことが不可欠です。
第二に、税源の多様化です。
法人二税だけに依存するのではなく、個人住民税や消費税など、複数の税源をバランスよく持つことが重要です。
第三に、地域内経済の強化です。
外から企業を誘致するだけでなく、地元企業の生産性向上や付加価値創出を支援することで、持続的な税収基盤を築く必要があります。
結論
法人二税の再配分は、今後も一定程度は進むと考えられます。
しかし、その進展は限定的であり、偏在問題を完全に解決することは難しいでしょう。
税制による再配分は、あくまで補完的な手段にすぎません。根本的な解決は、地域ごとの経済構造の強化に委ねられています。
地方財政の安定は、「どれだけ分けてもらえるか」ではなく、「どれだけ自ら稼げるか」によって決まります。
税制改革の議論は続きますが、自治体にとって本質的な課題は変わりません。持続可能な税収構造をどう設計するか、その視点こそがこれからの地方経営に求められています。
参考
日本経済新聞 2026年4月25日 朝刊「関東・山梨 都、地方税収上昇けん引」