確定給付企業年金と確定拠出年金は何が違うのか 運用が失敗したとき誰がリスクを負うかが違う理由編

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企業が従業員の老後を支える年金制度には、代表的なものとして確定給付企業年金と確定拠出年金があります。

名前が似ているため分かりにくいのですが、両者には大きな違いがあります。

何が確定しているのかです。

確定給付企業年金では、一定のルールに基づく将来の給付があらかじめ定められています。

一方、確定拠出年金では、企業などが拠出する掛金が定められ、その資金を加入者自身が運用します。

この違いによって、運用がうまくいかなかったときに誰がリスクを負うのかが大きく変わります。

企業年金が国内債券へ回帰しているという今回の動きを理解するためにも、まず確定給付と確定拠出の違いを押さえておくことが重要です。

確定給付企業年金とは何か

確定給付企業年金はDBとも呼ばれます。

DBはDefined Benefitの略です。

Benefitは給付を意味します。

つまり給付を一定のルールで定める年金制度です。

例えば勤続年数や給与などに応じて、退職後に受け取る年金額が計算されます。

従業員から見ると、

どれだけ掛金が積み立てられたのか

運用で何%増えたのか

だけで年金額が直接決まるわけではありません。

制度で定められた給付算定ルールによって受取額が決まります。

DBでは企業側が運用する

確定給付企業年金では、企業などが掛金を拠出し、制度として年金資産を運用します。

運用対象には、

国内債券

国内株式

外国債券

外国株式

オルタナティブ資産

などがあります。

どの資産をどの程度保有するのかという政策アセットミックスも、企業年金側で決めます。

従業員一人ひとりが、

自分は国内株式を30%にする

外国株式を50%にする

と決める仕組みではありません。

企業年金全体として資産を運用します。

DBで運用が失敗するとどうなるのか

例えば企業年金が将来100億円の給付に備える必要があるとします。

ところが株価下落などによって年金資産が大きく減少し、必要な積立水準を満たせなくなったとします。

確定給付企業年金では、運用成績が悪かったという理由だけで、従業員一人ひとりの給付をその損失分だけ自動的に減らす仕組みではありません。

必要な財政状態を維持するため、掛金の見直しなどが必要になる場合があります。

つまりDBでは、運用リスクの多くを制度を運営する企業側が負います。

これが前回説明した積立不足が企業にとって重要な問題になる理由です。

確定拠出年金とは何か

一方、確定拠出年金はDCと呼ばれます。

DCはDefined Contributionの略です。

Contributionは拠出を意味します。

つまり拠出する掛金が定められている制度です。

企業型確定拠出年金では、企業が一定の掛金を加入者ごとの口座へ拠出します。

その資金をどの商品で運用するのかは、原則として加入者本人が選択します。

例えば、

定期預金

保険商品

国内債券型投資信託

国内株式型投資信託

外国株式型投資信託

バランス型投資信託

など、制度で用意された運用商品の中から選びます。

DCでは将来の受取額が決まっていない

確定拠出年金では、企業が拠出する掛金は決まっています。

しかし将来受け取る金額は、運用結果によって変わります。

例えば毎月一定額を長期間積み立てたとしても、

高い運用収益を得られた人

ほとんど増えなかった人

運用損失が発生した人

では、老後に受け取れる資産額が違います。

つまりDCでは、

拠出額は決まっている

将来の受取額は運用次第

という仕組みになっています。

DCでは加入者が運用リスクを負う

DBとDCの最大の違いはここです。

確定拠出年金で株式型投資信託を選び、その価格が大幅に下落したとします。

原則として、その運用損失を企業が補填してくれるわけではありません。

反対に運用が成功して資産が大きく増えれば、その成果は加入者自身の老後資産になります。

つまり、

DBでは企業側が主として運用リスクを負う

DCでは加入者側が運用結果を負う

という違いがあります。

100万円を例に考える

単純な例で比較してみます。

DBで制度上、将来100万円を受け取ることになっているとします。

年金資産の運用が好調でも、原則としてそれだけを理由に給付が120万円になるわけではありません。

反対に運用が悪かったからといって、その損失がそのまま反映されて80万円になる仕組みでもありません。

制度上の給付ルールが基本になります。

一方、DCで100万円の掛金元本を積み立てたとします。

運用によって120万円になれば、120万円相当の資産があります。

80万円まで減少すれば、80万円相当になります。

この違いを理解すると、確定給付と確定拠出という名称の意味が分かります。

DBでは予定利率が重要になる

確定給付企業年金では、将来の給付に必要な資金を企業などが準備する必要があります。

その財政計算で重要になる前提の一つが予定利率です。

将来どの程度の運用収益を見込むのかによって、現在必要となる掛金にも影響します。

実際の運用が想定を長期間下回れば、積立不足が発生する可能性があります。

その場合、企業の掛金負担が増えることがあります。

だからこそDBでは、

必要な運用水準を確保できるか

どの程度のリスクを取るのか

という運用管理が非常に重要になります。

DCには企業の積立不足問題が起きにくい

確定拠出年金では、企業が制度に基づく掛金を拠出すれば、その後の運用結果は原則として加入者の資産に反映されます。

そのためDBのように、

運用が想定を下回った

年金資産が不足した

企業が追加的な掛金負担を迫られた

という構造にはなりにくくなります。

企業から見ると、将来の年金給付額に関する財務リスクを抑えやすい仕組みです。

企業がDCを導入する理由の一つには、このような負担の予測可能性があります。

DCでは加入者に投資判断が必要になる

一方、DCには加入者側の難しさがあります。

自分で運用商品を選ばなければならないからです。

例えば30歳の加入者が老後まで30年以上運用できる場合と、60歳近い加入者が数年後に資金を受け取る場合では、適切な資産配分が同じとは限りません。

株式をどの程度持つのか。

国内資産と外国資産をどう組み合わせるのか。

年齢が上がったらリスクを減らすのか。

こうした判断が加入者側に求められます。

企業側の運用リスクが小さくなる代わりに、加入者側が自分の老後資産の運用について考える必要があるのです。

DBでは専門家がまとめて運用する

確定給付企業年金では、年金資産を大きな資金としてまとめて運用できます。

運用機関などの専門家を利用し、

政策アセットミックス

ALM

デュレーション管理

LDI

などを組み合わせながら長期的な運用を行います。

将来の年金給付額や支払時期を予測し、それに合わせて債券などを保有することもできます。

個人が自分の老後資産だけを運用するDCとは、運用の考え方そのものがかなり違います。

国内債券回帰は主にDBの問題として考える

今回の参考記事では、確定給付企業年金を対象とした調査で国内債券への投資を増やす意向が強まっていることが示されています。

DBでは企業側が運用リスクを負うため、安全性の高い国内債券から必要な利回りを確保できることには大きな意味があります。

超低金利時代には、国内債券だけでは予定利率などを意識した必要な運用水準を確保することが難しく、株式や外国資産、オルタナティブ資産へ投資を広げる必要がありました。

その結果、価格変動や為替などのリスクも抱えることになります。

国内債券の利回りが上昇すれば、その状況が変わります。

DBではリスクを取らないことにも価値がある

例えば必要な運用水準が2%台なのに、安全性の高い国内債券から3%程度の利回りを期待できるとします。

それなら高い収益を狙って株式を大量に保有する必要性は小さくなります。

DBでは株価が大幅に下落して積立不足が発生すれば、最終的に企業側の負担増につながる可能性があります。

必要な収益を確保できるのであれば、

高い利益を狙う

よりも、

大きな損失を避ける

ことの価値が高まります。

金利上昇による国内債券回帰は、DBを運営する企業にとって運用リスクを減らせる可能性を意味しているのです。

どちらが優れた制度というわけではない

DBとDCを比較すると、どちらが優れているのかという疑問が出てきます。

しかし両者にはそれぞれ特徴があります。

DBでは将来の給付を一定のルールで見通しやすい一方、企業側が運用や積立不足のリスクを負います。

DCでは企業側の負担を予測しやすい一方、加入者が運用リスクを負い、老後の受取額も運用結果によって変化します。

企業によってはDBとDCを組み合わせることもあります。

重要なのは、誰がどのリスクを負っているのかを理解することです。

結論

確定給付企業年金と確定拠出年金の最大の違いは、何が確定しているのか、そして運用リスクを誰が負うのかという点です。

確定給付企業年金では、一定のルールに基づく将来の給付が定められています。

企業年金側が資産を運用し、運用が想定を下回って積立不足が生じれば、企業側の掛金負担が増える可能性があります。

一方、確定拠出年金では企業などが拠出する掛金が定められています。

加入者本人が運用し、その成果によって将来受け取れる金額が変わります。

つまりDBでは企業側が主として運用リスクを負い、DCでは加入者側が運用結果を負うという違いがあります。

この違いを理解すると、今回の企業年金による国内債券回帰の意味も分かります。

DBでは必要な利回りを安全性の高い国内債券から確保できるようになれば、株式や外国資産などへ大きなリスクを取る必要性を減らすことができます。

運用リスクを負う企業にとって、これは非常に大きな変化です。

金利のある世界への移行は、単に国債の魅力を高めているだけではありません。

確定給付企業年金を支える企業が、将来の給付をより安定して準備できる環境を取り戻しつつあるということなのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月2日朝刊 企業年金、国内債に回帰 配分増加意向、過去最大 利回り回復で投資妙味

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