会社を解散した後、多くの経営者は「これで決算も終わりだ」と考えがちです。
しかし、実際にはそうではありません。
会社は解散しただけでは消滅せず、その後も清算という重要な手続が続きます。
そして、その期間にも法人税申告が必要になります。
この期間の決算を行うために設けられているのが「清算事業年度」です。
会社をたたむ手続を正しく進めるためには、解散事業年度だけでなく、清算事業年度の理解も欠かせません。
今回は、解散後に始まる清算事業年度について解説します。
解散後も会社は存在している
会社が解散すると、通常の営業活動は終了します。
しかし、法人そのものはまだ存在しています。
なぜなら、会社にはまだ処理しなければならない仕事が残っているからです。
例えば、
・売掛金の回収
・不動産の売却
・在庫の処分
・借入金の返済
・未払金の精算
・株主への財産分配
などです。
これらの整理が終わるまでは、会社は清算法人として存続します。
つまり、解散は会社の終わりではなく、後片付けの始まりなのです。
清算事業年度とは何か
解散後の会社は、解散日の翌日から清算期間に入ります。
法人税法では、この期間も事業年度として扱われます。
解散日の翌日から残余財産が確定する日までの間は、一年ごとに区切られて事業年度が設定されます。
これが清算事業年度です。
例えば三月決算会社が十二月三十一日に解散した場合、
翌年一月一日から始まる清算期間が新たな事業年度になります。
通常の営業会社とは異なりますが、税務上は決算と申告が必要になります。
清算事業年度は何回も発生することがある
会社の清算はすぐに終わるとは限りません。
資産売却や債務整理に時間がかかる場合があります。
不動産の売却が進まないこともあります。
取引先との精算が長引くこともあります。
そのため、清算事業年度は一回だけとは限りません。
解散から残余財産確定まで数年かかれば、その期間中は毎年申告が必要になります。
経営者としては「会社をやめたつもり」でも、税務上はまだ会社が続いている状態なのです。
清算中でも利益が発生する
営業活動をしていないのだから利益は出ないと思われるかもしれません。
しかし、清算中にも利益や損失は発生します。
例えば、
・不動産売却益
・事業譲渡益
・有価証券売却益
・債務免除益
などです。
実際に講義資料でも、食品卸売事業を譲渡した結果として事業譲渡益が発生する事例が紹介されています。
反対に、
・固定資産売却損
・解体費用
・清算関連費用
などによる損失も発生します。
つまり、清算中も税務上の損益計算は続くのです。
清算中は使えなくなる税制が増える
清算事業年度では、通常の会社で利用できる税制優遇の多くが使えなくなります。
その理由は簡単です。
税制優遇の多くは、将来も事業を継続する会社を支援するための制度だからです。
清算中の会社は事業継続が目的ではありません。
財産整理が目的です。
そのため、
・特別償却
・税額控除
・各種準備金
などは原則として適用できません。
さらに、
・圧縮記帳
・収用換地等の所得の特別控除
・留保金課税の仕組み
なども通常とは異なる扱いになります。
経営者が過去の決算と同じ感覚で処理すると誤りやすい部分です。
残余財産確定が大きな区切りになる
清算事業年度には最終的なゴールがあります。
それが残余財産の確定です。
残余財産とは、すべての債務を返済した後に残る財産をいいます。
現金が残る場合もあります。
逆に債務超過で何も残らない場合もあります。
この残余財産が確定すると、清算手続は最終段階に入ります。
そして株主への分配や最終申告へと進んでいきます。
清算事業年度は、この残余財産確定まで続く重要な期間なのです。
経営者が注意すべきポイント
清算中の経営者が最も注意すべきことは、「会社はまだ終わっていない」という認識です。
営業は終わっていても、
・申告義務
・帳簿管理
・資産管理
・債権債務管理
は続いています。
また、金融機関や税務署との対応も必要になります。
解散したから安心ではなく、清算が終わるまでが経営者の責任です。
特に中小企業では、社長自身が清算人を務めることが多いため、税務上のスケジュール管理が重要になります。
税理士に求められる支援
清算事業年度では、通常の決算とは異なる専門知識が必要になります。
解散、事業譲渡、不動産売却、欠損金、残余財産など、多くの論点が同時に発生します。
税理士は単なる申告書作成者ではありません。
清算全体の工程管理者として、
・申告期限管理
・税負担予測
・資産処分計画
・株主対応
を支援する役割が求められます。
会社の最後を円満に終わらせるためには、税理士の関与が不可欠なのです。
結論
清算事業年度とは、解散後に会社が清算手続を進める期間の事業年度です。
営業活動は終了していますが、資産売却や債務返済などによって損益は発生し続けます。
そのため、法人税申告も継続して必要になります。
また、通常の会社で利用できる税制優遇の多くが使えなくなるため、注意が必要です。
会社は解散した瞬間に終わるわけではありません。
残余財産が確定し、清算結了するまでが会社の最後の仕事です。
経営者も税理士も、その最後の仕事を丁寧に完了させることが求められているのです。
参考
近畿税理士会 税法実務講座 法人税
税理士として知っておきたいM&Aの基礎知識⑥ 清算、M&Aをさらに活用するために