構想区域とは何か 病院再編を都道府県全体ではなく地域単位で考える理由編

人生100年時代
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地域医療構想では、都道府県全体を一つの地域として病床の将来像を考えるわけではありません。

同じ都道府県でも、都市部と山間部では人口も高齢化率も大きく異なります。

病院の数や患者の移動範囲も違います。

県全体では病床が十分にあったとしても、ある地域では病床が不足し、別の地域では余っているということもあります。

そこで地域医療構想では、住民が実際に医療を受ける一定の地域ごとに将来の医療需要や必要病床数を考えます。

その単位となるのが構想区域です。

2040年に向けて人口減少が進むなか、この構想区域そのものをどのように設定するのかが大きな課題になっています。

構想区域とは何か

構想区域とは、地域医療構想を考える基本的な地域単位です。

地域医療構想では、将来の人口や医療需要をもとに、地域でどのような医療機能が必要になるのかを考えます。

しかし都道府県全体を一つにまとめて計算すると、地域ごとの違いが見えにくくなります。

たとえば同じ県の中に人口100万人規模の都市と、人口数万人の山間地域があったとします。

両者では必要となる病院の数も、患者が病院まで移動できる距離も違います。

そこで実際の医療提供体制を考えやすい範囲に地域を分けます。

この地域的なまとまりが構想区域です。

なぜ都道府県単位では大きすぎるのか

都道府県は医療行政の重要な主体です。

医療計画を作成し、地域医療構想を進める役割も担っています。

しかし、患者が日常的に医療を利用する範囲と都道府県の範囲は必ずしも一致しません。

たとえば県の東部に住んでいる人が、通常の入院のたびに県西部の病院まで行くとは限りません。

多くの場合、一定の生活圏の中で病院を利用します。

救急医療でも、搬送時間を考えれば地域的なまとまりが重要になります。

そのため病床の需要と供給を考えるときには、都道府県全体よりも小さな単位で考える必要があります。

構想区域は、地域住民の医療利用の実態に近い範囲で病床再編を考えるための仕組みなのです。

二次医療圏とは何か

構想区域を理解するときに重要になるのが二次医療圏です。

二次医療圏とは、一般的な入院医療を地域として確保するために設定される区域です。

医療にはさまざまな段階があります。

日常的な外来診療であれば、自宅の近くの診療所などを利用します。

一方、入院や手術が必要になれば、一定規模の病院を利用することになります。

さらに非常に高度で専門的な医療については、都道府県を越えて大規模な医療機関を利用することもあります。

二次医療圏は、このうち一般的な入院医療を地域で完結させることを念頭に置いた区域です。

構想区域と二次医療圏の関係

構想区域は、基本的に二次医療圏を念頭に設定されてきました。

これは合理的な考え方です。

地域医療構想が主として入院医療の病床機能を扱ってきたため、一般的な入院医療の単位である二次医療圏との相性がよいからです。

たとえば急性期病床が何床必要なのか。

回復期や慢性期の病床が何床必要なのか。

こうした問題を考えるのであれば、患者が通常入院する地域を一つの単位として考えることに意味があります。

ただし、構想区域と二次医療圏が必ず機械的に同じでなければならないということではありません。

患者の受療動向など、地域の実情を踏まえて考える必要があります。

人口20万人という考え方

医療圏を考えるうえでは、一定の人口規模があるかどうかも重要になります。

人口があまりに少ない地域では、一つの区域の中ですべての入院医療機能を維持することが難しくなるからです。

元の記事では、人口20万人以下の小さな構想区域が半数近く存在することが指摘されています。

人口20万人という数字そのものを、すべての構想区域に適用される絶対的な最低基準と考えるのは適切ではありません。

しかし人口規模が小さくなれば、医療圏としてさまざまな医療機能を維持することが難しくなるという問題を考える目安にはなります。

患者数が少なくなれば、病院経営だけでなく医療人材の確保にも影響するからです。

なぜ人口が少ないと病院を維持しにくいのか

病院は、建物とベッドだけで成り立っているわけではありません。

医師が必要です。

看護師も必要です。

検査技師や薬剤師など、さまざまな専門職も必要になります。

さらに手術室や画像診断装置などの設備も必要です。

ところが地域人口が減少すると、患者数も減っていきます。

患者が少ないにもかかわらず複数の病院が同じような急性期機能を維持すれば、それぞれの病院に医療従事者や設備を配置しなければなりません。

限られた医療資源が分散してしまいます。

特に高度急性期や急性期医療では、この問題が大きくなります。

人口減少で構想区域そのものが小さくなる

構想区域を設定した時点では一定の人口があったとしても、2040年まで同じ人口が維持されるとは限りません。

特に地方では人口減少が続きます。

たとえば現在20万人程度の人口がいる区域でも、将来15万人、10万人へ減少する可能性があります。

すると、現在の区域の中だけで急性期医療などを完結させることが難しくなるかもしれません。

人口減少社会では、病床数だけを見直すのではなく、病床再編を考える地域の範囲そのものを見直す必要が出てくるのです。

構想区域を広げると何が変わるのか

複数の小さな構想区域を一つにまとめれば、より広い地域の中で医療資源を配置できるようになります。

たとえば隣接する2つの地域に、それぞれ小規模な急性期病院があるとします。

人口が減少して両方の病院を同じ規模で維持することが難しくなれば、一方に急性期機能を集約するという選択肢が考えられます。

もう一方の病院は包括期や慢性期など別の役割を担うこともできます。

区域を広くすることで、限られた医療資源をより大きな範囲で再配置できるようになるわけです。

区域を広げればすべて解決するわけではない

ただし、構想区域を大きくすれば問題が解決するわけではありません。

最大の問題は患者のアクセスです。

病院を集約すると、患者が病院まで移動する距離が長くなる可能性があります。

特に救急医療では搬送時間が重要です。

都市部であれば数キロ離れた病院への集約でも大きな問題にならない場合があります。

しかし山間部や離島などでは、病院までの移動時間が大幅に長くなる可能性があります。

医療資源を集約する効率性と、住民が医療へアクセスできる利便性をどう両立させるのかが重要になります。

外来や在宅医療では区域の大きさが合わないこともある

2040年に向けた新しい地域医療構想では、さらに難しい問題があります。

従来の地域医療構想は主として入院医療を対象としていました。

そのため二次医療圏を基本とする構想区域には一定の合理性がありました。

しかし新しい構想では、外来医療や在宅医療、介護との連携まで対象が広がります。

在宅医療や介護は、入院医療よりも狭い生活圏で提供されることが多いサービスです。

訪問診療では、医師が患者の自宅まで移動します。

訪問看護や介護サービスも同じです。

そのため入院医療に適した区域と、在宅医療や介護に適した区域が一致するとは限りません。

構想区域の再編が難しい理由

構想区域を変更することは、地図上の境界線を書き換えるだけではありません。

区域が変われば、地域医療構想について話し合う関係者も変わります。

これまで別々の地域で協議してきた病院が、同じ区域の中で役割分担を話し合うことになるかもしれません。

どの病院に急性期機能を集めるのか。

どの病院が包括期を担うのか。

救急患者をどこへ搬送するのか。

こうした問題には、それぞれの病院や自治体の利害が関係します。

区域を広げるほど関係者が増え、合意形成が難しくなる可能性もあります。

2040年まで同じ区域でよいのか

2040年までには人口構造が大きく変わります。

そのため現在の構想区域を一度再編して終わりという考え方にも注意が必要です。

人口減少の速度は地域によって異なります。

病院の統合や閉院が起きる可能性もあります。

道路網や交通手段が変化することもあります。

医療技術が進歩し、オンライン診療や在宅医療の役割が大きくなる可能性もあります。

つまり、地域医療を考える適切な区域そのものが時間とともに変化する可能性があります。

2040年という長期の計画では、途中で区域設定を検証する仕組みも重要になります。

結論

構想区域とは、地域医療構想を進める際に、将来の医療需要や必要病床数、病院の役割分担などを考える基本的な地域単位です。

都道府県全体では地域ごとの人口構造や患者の移動が見えにくいため、一般的な入院医療の単位である二次医療圏などを基本として設定されてきました。

しかし人口減少によって、現在の区域の中だけでは必要な医療機能を維持できない地域が増える可能性があります。

そのため2040年に向けて、構想区域そのものの再編が重要な課題になります。

区域を広げれば医師や看護師、高度な医療設備などを集約しやすくなる一方、患者の移動距離が長くなるという問題もあります。

さらに外来医療や在宅医療、介護まで地域医療構想の対象が広がれば、一つの区域だけですべてを考えることも難しくなります。

人口減少時代の地域医療では、病院を何床残すかだけではなく、どの範囲を一つの医療圏として考えるのかという地域の境界線そのものを見直す必要があります。

構想区域の再編とは、単なる行政区域の変更ではなく、限られた医療資源をどの範囲の住民で共有するのかを決める問題なのです。

参考

日本経済新聞 2026年8月27日朝刊 2040年の地域医療構想上 病床の取引市場制度 創設を

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