時短勤務はなぜ女性だけの制度にしてはいけないのか 育児支援から全社員の働き方改革へ広げる理由編

人生100年時代
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時短勤務という言葉を聞くと、

小さな子どもを育てている女性社員

をイメージする人は少なくありません。

実際、育児と仕事を両立するために時短勤務を利用する人は多くいます。

しかし、時短勤務を事実上「育児中の女性が利用する制度」にしてしまうと、いくつかの問題が生まれます。

女性だけが早く帰る職場になれば、重要な仕事や昇進の機会から女性が外される原因になる可能性があります。

男性が育児に参加しにくい状況も残ります。

さらに、介護や学び直しなど、育児以外の理由で柔軟な働き方を必要とする社員も制度を利用しにくくなります。

時短勤務を一部の女性のための制度として考えるのではなく、さまざまな社員が必要に応じて働く時間を変えられる仕組みとして考えることが重要です。

なぜ時短勤務は女性に偏りやすいのか

育児中の家庭では、

保育園への送り迎え

子どもの食事

入浴

通院

学校や保育園への対応

など、さまざまな時間が必要になります。

夫婦のどちらかが勤務時間を短くしなければ家庭が回らない場合があります。

そのとき、女性側が時短勤務を選ぶ家庭が多ければ、職場でも、

時短勤務者イコール女性

という状態になりやすくなります。

制度そのものは性別を問わなくても、実際の利用者が女性に偏れば、職場の認識も女性向け制度になっていきます。

女性だけが早く帰る職場で何が起きるのか

例えば午後5時以降に、

重要な会議

顧客との商談

上司との打ち合わせ

社内の情報交換

が行われる会社があったとします。

女性の時短勤務者だけが午後4時に帰れば、こうした場へ参加できません。

すると、

重要な案件を経験できない

経営情報に触れる機会が減る

上司との接点が少なくなる

管理職候補になりにくくなる

といったことが起こる可能性があります。

本人の能力とは関係なく、働ける時間帯の違いがキャリアの違いにつながってしまいます。

マミートラックにつながる可能性がある

育児中の女性を、

大変そうだから

という理由で重要な仕事から外すことがあります。

会社側は配慮しているつもりかもしれません。

しかし、

責任のある仕事を任せない

出張をさせない

重要なプロジェクトから外す

管理職候補から外す

という状態が続けば、本人の経験が蓄積されません。

その結果、育児が一段落してフルタイム勤務へ戻っても、

管理職に必要な経験が不足している

と判断される可能性があります。

時短勤務を女性だけが利用する制度にすると、こうしたマミートラックを固定化する原因にもなり得ます。

男性が時短勤務を利用する意味

男性も育児のために働き方を変えられれば、家庭内の育児負担を分担しやすくなります。

例えば夫婦ともに働いている家庭で、

母親だけが午後4時退社

という形ではなく、

月曜日と水曜日は父親が早く帰る

火曜日と木曜日は母親が早く帰る

といった分担も考えられます。

あるいは夫婦のうち男性側が一定期間、時短勤務を選ぶこともできます。

男性が育児のために勤務時間を変えることが普通になれば、

子どもがいる女性は早く帰る

という固定的な考え方も弱くなります。

男性が利用しにくい職場では女性にも影響する

制度上は男性も時短勤務を利用できても、

男性が時短なんて珍しい

管理職を目指すならフルタイムで働くべきだ

周囲へ迷惑がかかる

という雰囲気があれば利用しにくくなります。

すると家庭では、

夫は制度を使えないから妻が使う

という選択になりがちです。

職場で男性が柔軟な働き方を選べるかどうかは、女性の働き方にも影響します。

男性の働き方を変えずに、女性だけに仕事と育児の両立を求めても限界があります。

介護でも時短勤務が必要になる

働く時間を短くしたい理由は育児だけではありません。

年齢を重ねると、親の介護という問題が出てきます。

例えば、

親の食事を準備する

病院へ付き添う

介護サービスの担当者と話す

施設への入所手続きをする

といった対応が必要になることがあります。

介護は男性にも女性にも起こります。

管理職やベテラン社員が突然、介護のため長時間働けなくなることもあります。

時短勤務を育児中の女性向け制度としてしか運用していなければ、こうした社員が働き続けにくくなります。

学び直しにも利用できる

長く働く時代には、仕事を続けながら新しい知識を学ぶ必要性も高まります。

例えば、

大学院へ通う

資格を取得する

デジタル技術を学ぶ

語学を学ぶ

といった学び直しです。

勤務時間を柔軟にできれば、仕事を辞めずに学ぶことができます。

学び直した社員が新しい知識を会社へ持ち帰れば、企業側にもメリットがあります。

働く時間を柔軟にすることは、生活支援だけではなく人材育成にも利用できます。

理由を問わず選べる制度にする意味

柔軟な働き方を広げる方法の一つが、

なぜ短く働きたいのか

を必要以上に限定しないことです。

例えば、

育児中だから利用できる

という制度だけでは、育児をしていない社員は利用できません。

一方、

一定の条件の下で社員が勤務時間を選択できる

という制度なら、さまざまな人が利用できます。

参考記事では、育児などの理由を問わず、1日の労働時間を6時間から10時間の間で選択できる企業の事例も紹介されています。

制度を特定の属性の人だけのものにしない考え方です。

利用者が増えると特別扱いではなくなる

時短勤務者が部署に一人しかいなければ、

あの人だけ午後4時に帰る

という状態になります。

しかし、

午後4時に帰る人

午後5時に帰る人

午前8時から働く人

週4日働く人

などが普通に存在する職場になれば、一つの働き方だけが特別ではなくなります。

管理職も、

全員が同じ時間に働く

ことを前提に仕事を組むことができなくなります。

その結果、

会議時間を見直す

情報を共有する

仕事を属人化させない

成果で評価する

といった仕組みが必要になります。

フルタイム社員にもメリットがある

時短勤務を全社員の働き方改革として考えると、現在制度を利用していない社員にもメリットがあります。

例えば、

夕方に通院したい

資格試験の勉強をしたい

家族との時間を増やしたい

一定期間だけ働く時間を減らしたい

という事情が将来生じるかもしれません。

今はフルタイムで働けていても、10年後も同じとは限りません。

誰でも必要になったときに働き方を変えられる制度なら、長く働き続けやすくなります。

管理職自身も利用できる仕組みが重要になる

柔軟な働き方を一般化するには、

一般社員は利用できるが管理職は利用できない

という状態も見直す必要があります。

管理職になった瞬間に、

長時間勤務が必須

となれば、時短勤務者は管理職を目指しにくくなります。

管理職でも、

権限を委譲する

チームで情報を共有する

代理対応のルールを作る

などによって柔軟な働き方ができる職場を作ることが重要です。

そうすれば、

昇進するなら長時間働かなければならない

という前提も変えられます。

人手不足への対応にもなる

企業が採用条件として、

毎日8時間働ける人

だけを求めれば、採用できる人は限られます。

しかし、

6時間勤務

週4日勤務

早朝勤務

遅い時間からの勤務

など複数の働き方を用意すれば、働ける人の範囲が広がります。

育児中の女性だけを支援する制度から、すべての社員が働き方を選べる制度へ変えることは、人材確保の面でも意味があります。

働く時間と評価を分ける

柔軟な働き方を広げるうえで重要なのが、

長く会社にいる人ほど評価される

という考え方を見直すことです。

6時間勤務の人と8時間勤務の人では、働ける時間が違います。

だからといって、

6時間勤務だから能力が低い

とはいえません。

限られた時間の中で、

どのような成果を出したのか

どのように顧客へ貢献したのか

どのようにチームへ貢献したのか

を見る必要があります。

働く時間を多様化するなら、評価の仕組みもそれに合わせて変える必要があります。

結論

時短勤務を育児中の女性だけの制度にしてしまうと、女性だけが早く帰る職場になり、重要な仕事や昇進機会から外される原因になる可能性があります。

また、男性が働き方を変えなければ、家庭の育児負担が女性側へ集中しやすくなります。

しかし、働く時間を変える必要があるのは育児中の女性だけではありません。

男性の育児。

親の介護。

学び直し。

さまざまな生活上の事情があります。

現在はフルタイムで働けている人でも、将来同じ働き方を続けられるとは限りません。

そのため企業には、

育児中の女性だけが利用する特別な制度

から、

必要に応じて誰でも働く時間を選べる制度

へ広げていく考え方が求められます。

利用者が増えれば、時短勤務者だけを特別扱いする必要もなくなります。

会社側も、全員が同じ時間に働くことを前提にせず、仕事の共有、業務の標準化、会議時間の見直し、成果による評価を進める必要があります。

時短勤務を女性だけの問題として考えないことは、女性を支援するだけではありません。

男性も含めたすべての社員が、人生の状況に合わせて働き続けられる会社を作ることにつながるのです。

参考

日本経済新聞 2026年8月31日朝刊 「時短」勤務者は重要な戦力 人員確保に効果 管理職の意識変わる

日本経済新聞 2026年8月31日朝刊 シフトを選べる企業も

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