相続では、法定相続分という公平な基準が定められています。
しかし、家族の中には長年親の介護を続けた人や、家業を支え続けた人がいることもあります。
そのような人が、何も貢献していない相続人と同じ割合で相続することが、本当に公平といえるのでしょうか。
こうした不公平を調整するために設けられているのが「寄与分」という制度です。
今回は、相続における寄与分の考え方と、実際に認められるケースについて解説します。
寄与分とは特別な貢献を相続に反映する制度
寄与分とは、相続人の中に被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした人がいる場合、その貢献を相続分に反映させる制度です。
例えば、
- 長年、無償で家業を手伝ってきた
- 被相続人を献身的に介護し、多額の介護費用を節約した
- 農業や事業の発展に大きく貢献した
このような場合には、通常の法定相続分に加えて寄与分が認められる可能性があります。
寄与分は、「頑張った人が報われる仕組み」と考えると分かりやすいでしょう。
寄与分が認められるためには条件がある
ただし、寄与分は誰でも認められるわけではありません。
法律が求めているのは「特別の寄与」です。
例えば、親子であれば、お互いに助け合うことは当然期待されています。
そのため、
- 時々病院へ付き添った
- 買い物を手伝った
- 一緒に暮らして面倒を見た
という程度では、通常は寄与分として認められません。
相続制度は、家族として通常期待される行為と、それを超える特別な貢献とを区別して考えています。
介護をしただけでは認められないこともある
寄与分で最も誤解されやすいのが介護です。
「私は十年間介護したのだから多く相続できる」と考える人は少なくありません。
しかし、法律上は介護をしたという事実だけで寄与分が認められるわけではありません。
例えば、
専門職に依頼すれば高額な費用がかかるような介護を、長期間にわたり無償で行っていた。
その結果、被相続人の財産の減少を防いだ。
このような事情があって初めて、寄与分が認められる可能性があります。
一方で、家族として通常行われる介護は、扶養義務の範囲内と判断されることも少なくありません。
そのため、寄与分が認められるケースは、一般に考えられているほど多くはないのです。
家業への貢献も寄与分の対象になる
寄与分は介護だけではありません。
家業への貢献も代表的な例です。
例えば、
家族経営の会社で長年ほとんど給与を受け取らず働いていた。
農業や商店を支え、事業の発展に大きく貢献した。
その結果、被相続人の財産が維持・増加した。
このような場合には、寄与分が認められる可能性があります。
ただし、適正な給与を受け取っていた場合には、その貢献は給与によって評価されていると考えられるため、寄与分は認められにくくなります。
寄与分は相続争いの原因にもなる
寄与分は公平な制度ですが、実際には相続人同士の争いになりやすい制度でもあります。
「兄だけが介護をしたと言っている。」
「妹は家業を手伝ったが十分な給料をもらっていた。」
「本当に財産が増えたといえるのか。」
このように、貢献の程度を客観的に評価することは簡単ではありません。
そのため、寄与分が問題となる相続では、介護記録や勤務状況、財産の変化など、さまざまな資料が重要になります。
相続人全員が納得できる形で話し合いを進めることが、円満な相続への近道といえるでしょう。
結論
寄与分とは、相続人の中で被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした人の努力を、相続分に反映するための制度です。
しかし、家族として通常期待される介護や援助だけでは認められず、「特別な貢献」があったことが必要になります。
公平な相続を実現するための制度である一方、その判断は容易ではなく、相続争いの原因になることも少なくありません。
寄与分の仕組みを理解することは、相続を公平に考えるうえで欠かせない知識といえるでしょう。
参考
日本税理士会連合会 令和7年度全国統一研修会「相続法概説」(早川眞一郎)