多様な正社員とは何か 正社員でも勤務地や職務や労働時間を限定できる仕組み編

人生100年時代
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正社員というと、

1日8時間働く

会社の命令があれば転勤する

さまざまな仕事を担当する

という働き方をイメージする人が多いかもしれません。

しかし、正社員だからといって、すべての人が同じ条件で働かなければならないわけではありません。

例えば、

働く時間を短くする

勤務地を一定の地域に限定する

担当する仕事を限定する

という正社員の働き方があります。

厚生労働省では、職務内容、勤務地、労働時間などを限定して選択できる正社員を「多様な正社員」として整理しています。

正社員か非正規社員かという二つの選択肢だけではなく、正社員の中にも複数の働き方を作る考え方です。

多様な正社員とは何か

多様な正社員とは、一般的な正社員と比べて、

職務

勤務地

労働時間

などのいずれかを限定した正社員です。

例えば、

転勤のない正社員

特定の専門業務だけを担当する正社員

1日6時間で働く正社員

などが考えられます。

重要なのは、働き方に一定の限定があっても、

正社員として働く

という点です。

従来は、

会社の求める働き方に全面的に対応できる人が正社員

それが難しい人はパートなどの非正規雇用

という構造になりがちでした。

多様な正社員は、その間に新しい選択肢を作る考え方です。

なぜ多様な正社員が必要なのか

社員の生活事情は一人ひとり違います。

例えば、

子育て中なので長時間勤務が難しい

親の介護があるので転勤できない

専門性を生かした仕事だけを続けたい

といった人がいます。

従来型の正社員制度しかなければ、

会社の条件に合わせる

正社員を辞める

という選択になりかねません。

しかし、労働時間や勤務地などを限定した正社員制度があれば、

正社員として働き続けながら生活事情にも対応する

という選択ができます。

短時間正社員とは何か

多様な正社員の一つが短時間正社員です。

例えば一般的な正社員が、

1日8時間

週5日

働く会社で、

1日6時間

週5日

働く正社員を設ける方法があります。

働く時間は短くても、正社員として雇用されます。

育児や介護などのために一時的に勤務時間を短くするだけではなく、短い労働時間そのものを一つの正社員の働き方として設定することもできます。

これによって、

フルタイムでは働けないが正社員として働きたい

という人を採用しやすくなります。

短時間正社員とパートの違い

例えば1日6時間働いている人が2人いたとします。

Aさんは短時間正社員。

Bさんはパートです。

勤務時間だけを見れば同じです。

しかし、会社の人事制度上の位置付けまで同じとは限りません。

短時間正社員は、正社員として人事制度の中に位置付けられます。

そのため、

人事評価

昇給

賞与

教育

キャリア形成

などについて、正社員として制度設計されることが考えられます。

つまり、

短く働いているから非正規社員

とは限りません。

勤務地限定正社員とは何か

多様な正社員のもう一つの形が、勤務地限定正社員です。

例えば全国に支店を持つ会社で、通常の正社員には全国転勤の可能性があるとします。

しかし、

東京地区だけ

関西地区だけ

自宅から通勤可能な範囲だけ

というように勤務地を限定する正社員制度を設けることができます。

これが勤務地限定正社員です。

なぜ勤務地を限定するのか

全国転勤が難しい理由はさまざまです。

例えば、

子どもの学校

配偶者の仕事

親の介護

住宅購入

地域との関係

などがあります。

仕事そのものは続けたいのに、

転勤できないなら正社員を辞めるしかない

という状態では、企業も経験のある社員を失います。

勤務地限定正社員という選択肢があれば、転勤できない社員でも正社員として働き続けやすくなります。

企業にとっても人材流出を防ぐ効果が期待できます。

職務限定正社員とは何か

職務限定正社員は、担当する仕事の範囲を限定した正社員です。

例えば、

経理

システム開発

法務

研究開発

営業

など、特定の職務を中心に働きます。

従来型の日本企業では、正社員を採用した後、

営業から人事

人事から経理

経理から子会社

というように、さまざまな仕事を経験させることがあります。

一方、職務限定正社員では、担当する職務をある程度明確にします。

専門人材との相性がよい

職務限定正社員は、専門性を高めたい人とも相性があります。

例えば高度なIT技術を持つ人が、

将来は営業や管理部門へ異動する可能性があります

と言われれば、入社をためらうことがあります。

本人はIT分野で専門性を高めたいからです。

そこで、

ITエンジニアとして働く

という職務を明確にすれば、専門人材を採用しやすくなる可能性があります。

会社側も、

何の仕事をする人なのか

を明確にして採用できます。

限定がある代わりに待遇が違う場合もある

多様な正社員について注意したいのは、

限定正社員なら通常の正社員と必ず同じ待遇になる

という意味ではないことです。

会社によっては、

全国転勤できる正社員

勤務地限定正社員

で賃金制度や手当などを分ける場合があります。

例えば全国転勤を前提とする社員には転勤可能性を考慮した処遇を設け、勤務地限定社員には別の賃金体系を設定することも考えられます。

短時間正社員なら、労働時間に応じて賃金総額が少なくなる場合があります。

重要なのは、

何が限定されるのか

それによって待遇がどう変わるのか

を明確にすることです。

正社員と非正規社員の二択ではなくなる

多様な正社員の大きな意味は、

フルタイム正社員

または

非正規社員

という二択を減らすことです。

例えば育児中の人が1日8時間働けないとします。

従来なら、

正社員を辞めてパートになる

という選択をすることがありました。

しかし短時間正社員制度があれば、

正社員のまま1日6時間働く

ことができます。

親の介護で転勤できない人も、

退職する

のではなく、

勤務地限定正社員へ変更する

という選択ができます。

働き方の選択肢を増やすことで、雇用を継続しやすくなります。

人手不足の企業にもメリットがある

企業側から見ると、多様な正社員は人材確保の手段にもなります。

例えば求人条件が、

全国転勤可能

1日8時間勤務

職種変更あり

だったとします。

この条件では応募できない人がいます。

しかし、

勤務地限定可

短時間勤務可

職務限定可

という選択肢を用意すれば、応募できる人の範囲が広がります。

人手不足が進むほど、

会社の働き方に合わせられる人だけを採用する

という方法では人材を確保しにくくなります。

会社側が働き方を柔軟にすることが採用力につながります。

制度を作るだけでは十分ではない

多様な正社員制度を導入しても、

限定社員は重要な仕事を任せない

限定社員は昇進できない

短時間正社員は補助業務だけ

という運用になれば、制度の魅力は小さくなります。

例えば短時間正社員でも、能力があれば重要な仕事を担当できます。

勤務地限定正社員でも、地域拠点の管理職になることは考えられます。

職務限定正社員なら、その分野の専門家として高度なキャリアを築くことができます。

働き方の限定とキャリアの限定を必ずしも同じにする必要はありません。

会社側も仕事の仕組みを変える必要がある

多様な正社員が増えると、

午後4時までの人

全国転勤できない人

特定職務だけを担当する人

など、異なる条件で働く社員が同じ組織にいることになります。

そのため管理職には、

誰が何を担当するのか

どの時間帯に会議をするのか

誰にどの権限を与えるのか

仕事をどのように共有するのか

を考えることが求められます。

全員が同じ条件で働くことを前提にした管理から、多様な働き方を組み合わせる管理へ変わる必要があります。

正社員の意味そのものが変わる

従来の正社員は、

長時間働ける

転勤できる

さまざまな仕事を担当できる

という働き方と結び付いてきました。

しかし、多様な正社員が広がれば、

正社員であること

と、

無限定に会社の要求へ対応すること

を分けて考えられるようになります。

正社員でありながら、

働く時間

働く場所

担当する仕事

について一定の範囲を決めることができます。

これは正社員という働き方そのものを多様化する考え方です。

結論

多様な正社員とは、職務、勤務地、労働時間などを限定して働く正社員です。

代表的なものとして、

短時間正社員

勤務地限定正社員

職務限定正社員

があります。

重要なのは、働き方に制約があるからといって、必ず非正規社員になるわけではないことです。

育児で長時間働けない。

介護のため転勤できない。

専門分野の仕事を続けたい。

こうした事情があっても、正社員として働き続ける選択肢を作ることができます。

企業にとっても、多様な正社員は人材確保につながります。

フルタイム勤務、全国転勤、職種変更に対応できる人だけを採用対象にすれば、人材の選択肢は狭くなります。

一方、働き方に複数の選択肢を用意すれば、それまで応募できなかった人も働けるようになります。

人手不足が進む日本では、

社員が会社の働き方に合わせる

だけではなく、

会社も社員が働ける条件に合わせて仕事を設計する

という考え方が重要になります。

多様な正社員は、正社員か非正規社員かという二択を超えて、一人ひとりの事情に合わせながら長く働ける雇用の仕組みといえるでしょう。

参考

日本経済新聞 2026年8月31日朝刊 「時短」勤務者は重要な戦力 人員確保に効果 管理職の意識変わる

厚生労働省 多様な正社員

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